GLONASS 2014年4月に起きたシステムトラブル

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GLONASS

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/12/29 00:49 UTC 版)

2014年4月に起きたシステムトラブル

2014年4月1日から4月2日にかけて、GLONASSシステムは約11時間送信を中断した。このためこの間、世界中のGLONASS受信機が完全に使用不能になった。原因は軌道位置や速度などを示す天体暦の誤ったデータをアップロードしたためだった。モスクワ時間の01時にこの天体歴がアクティブとなるのと同時に障害が起き、北半球の地上局上空で各衛星が復旧用のデータと入れ替えるまで12時間近くかかってしまった。この間、世界中の受信者からGLONASSが使えないとの報告が舞い込んだ[30]。その後の報告によれば、約1.5分進んだ時刻の天体暦データが送られていた事が分かった[31]

4月14日にも8機のGLONASSが約30分間同時に異常な状態になった。GLONASS受信機はこの間、これらのデータを無視した。またGLONASS衛星のうち1機(No. 730)が使えなくなり、メインテナンス状態に入った[32]。こちらの原因は、新しいソフトウエアを開発したプログラマーがいくつかの数学的なミスを犯していたのが原因で、この誤りはすぐに修正された。残された問題も5月中旬までには解決される予定[33]

各国との連帯

インド政府との協力

2004年1月、ロシア連邦宇宙局はインドの宇宙機関、インド宇宙研究機関と共同事業を発表し、両政府が協力してシステムを修復し、2008年までにロシアとインドの領域を18機の衛星で測位可能にし、2010年までに24機の衛星で完全に利用可能にするとした[34]

2005年半ばに発表された詳細によれば、ロシアは衛星を製造し、2006年から2008年に掛けてインドのアーンドラ・プラデーシュ州にあるサティシュ・ダワン宇宙センターからインドのGSLVロケットで2機の衛星が打ち上げられることになっている[35]。2007年4月現在、インドはまたこのプロジェクトの一環としての衛星打ち上げを行っていない。

2005年12月のインドのマンモハン・シン首相とロシアのウラジーミル・プーチン大統領の首脳会談で、インドがGLONASS-Kシリーズの開発費用の一部を負担して、2機の新型衛星をインドから打ち上げる代わりに、高精度信号の利用権を得ることで合意した。

アメリカ政府との協議

2006年12月にモスクワで開かれたGPS-GLONASS相互運用性互換性ワーキンググループ(WG-1)の会合を受けて、米露両政府のウェブサイトで双方がGLONASSの信号パターンをGPSやガリレオのものと共通なものに変更することがユーザコミュニティにとって利益をもたらすという認識で、重要な前進があったと発表した[36]。GLONASSシステムを、現在の周波数分割多重からGPSやガリレオと同じ符号分割多重(CDMA)へと移行することで、双方の測位システムに両対応した受信機をより簡単に設計することができるようになる。

GPS World誌は、その会合以前にグループは2回会合を持ち、2007年4月に国際衛星フォーラム(International Satellite Forum)2007がモスクワで開かれた時に再度会合を開いて発表を行うと報じていた[37]

中国政府との協力

2015年ごろより、ロシアの民用版 GLONASS システムと中国の北斗航法衛星システムの統合の可能性について討論したとされており[38]、5月に中国とロシアはシステム互換性と相互運用性の協力合意に調印した[39]

2016年12月、ロスコスモスのイゴール・コマロフ氏は、ロシアと中国がGLONASSと北斗の航法システムの同期化が大きく進展したと発表した[39]

2017年8月1日、7月31日からロシアと中国は北斗とGLONASSシステムの共同作業の可能性を探求を目的とした2週間にわたる実験「シルクロード」を開始したと発表した[40]

受信機

セプテントリオ(Septentrio)、トプコン、JAVAD、マゼラン・ナビゲーション(Magellan Navigation)、トリンブル・ナビゲーション(Trimble Navigation)がGLONASS信号を受信できる衛星測位システム受信機を製造している。

Qualcommによる対応

2011年5月23日、Qualcomm は、スマートフォン向けのチップセットでGLONASSの対応を発表した[41]

以下のチップセットは、GPS 機能の一部として GLONASS を利用する[42]

Snapdragon S2
  • MSM8255, MSM8655, APQ8055
  • MSM7630, MSM7230
Snapdragon S3
  • MSM8660, MSM8260, APQ8060
Snapdragon S4 Pro
  • MSM8960T
  • APQ8064
Snapdragon S4 Plus
  • MSM8960, MSM8660A, MSM8260A, APQ8060A
  • MSM8930, MSM8630, MSM8230, APQ8030
  • MSM8627, MSM8227

注釈

  1. ^ GLONASSの搬送波には、当初は24チャンネル(k=1, 2, 3,…,24)を割り当てていたが、電波天文学用や衛星通信サービスの電波帯と干渉したため、2005年からは12チャンネル(k=-7, -6, …,+5 ,+6)を割り当てており、特に+5と+6は技術的な目的で使用されている。
  2. ^ 地球基準座標系である"PZ-90"(Parametry Zemli 1990, PE-90; Parameters of the Earth 1990) は、測地系の基準楕円体にSGS-90を用いたECEF座標系であり原点を地球の重心にとり、Z軸がIERSの国際基準座標系のX3軸を慣用極方向として、X軸はグリニッジ子午線赤道面との交点、Y軸はX-Y-Zの右手系が採られている。PE-90楕円体のパラメータは、a=6378136.0m f=1/298.257839303 we=7292115×10-11rads-1 μ=3986004.4×10m3s-2である。
  3. ^ UTCがうるう秒を持つのと同じく、GLONASS時系もうるう秒を持ち、TAIとはこの点で差異がある。
  4. ^ 第1世代となった「グロナス」衛星に関する別の情報では、仕様書では保障寿命3年、重量1415kg(航法機能部重量180kg)、電源1000W、航法機能部消費電力600W、時計の安定性5×10-13、姿勢制御精度0.5°、太陽光パネルの方向精度5°とされ、セシウム原子時計が搭載されたとされる。
  5. ^ 「グロナス-M」衛星に関する別の情報では、仕様書では保障寿命7年、重量1230kg(航法機能部重量250kg)、電源1415W、航法機能部消費電力580W、時計の安定性1×10-13、姿勢制御精度0.5°、太陽光パネルの方向精度2°とされ、より安定化したセシウム原子時計が搭載されたとされる。

出典

  1. ^ a b Kramer, 2007
  2. ^ a b "A Review of GLONASS" Miller, 2000
  3. ^ a b c d e f g h i j k l m GNSSのすべて 2010.
  4. ^ GLONASS #787, 68.7 operational months; as reported by RSA "GLONASS constellation status" on 6 April 2007
  5. ^ Спутникам ГЛОНАСС в 2018 году обновят "прошивку" для повышения качества навигации
  6. ^ a b New GLONASS satellites will be transmitting encoded signal
  7. ^ Non-political - Russia stops manufacturing of Glonass-M navigation satellites
  8. ^ GLONASS orbital grouping upgrade to start in 2018
  9. ^ a b Russia to launch new-generation navigation satellite next year
  10. ^ a b Точность ГЛОНАСС повысят в три раза | Статьи | Известия
  11. ^ НПК «СПП». НОВАЯ ИЗМЕРИТЕЛЬНАЯ СТАНЦИЯ В ЮАР
  12. ^ Russia to Construct Glonass Satellite Navigation Station in Nicaragua
  13. ^ Russian Government, 2001
  14. ^ Microcom Systems' Launch Schedule. 2007年9月1日アクセス
  15. ^ "Russian Launches..." Space.com / AP, 2007
  16. ^ 「ロシア版GPS」完成へ衛星20基に…米国独占に風穴 読売新聞 2008年12月26日
  17. ^ Glonass system to consist of 30 satellites. 2008年5月21日アクセス
  18. ^ "The services of system..." Ria Novosti, 2007
  19. ^ “ロシアの新型航法衛星「GLONASS-K」初号機、進宙” (日本語). スラッシュドット・ジャパン. (2011年2月27日). http://science.slashdot.jp/story/11/02/27/0841253/%E3%83%AD%E3%82%B7%E3%82%A2%E3%81%AE%E6%96%B0%E5%9E%8B%E8%88%AA%E6%B3%95%E8%A1%9B%E6%98%9F%E3%80%8CGLONASS-K%E3%80%8D%E5%88%9D%E5%8F%B7%E6%A9%9F%E3%80%81%E9%80%B2%E5%AE%99 
  20. ^ “トプコンはGLONASS衛星K1のL3信号受信に成功”. (2011年5月6日). http://www.topcon.co.jp/topics/20110506-7110.html 
  21. ^ "Integral accessibility..." RSA, 2007
  22. ^ ロシア、新安全規制で日本製「狙い撃ち」か 中古車輸入で混乱広がる”. SANKEI Biz (2017年8月22日). 2018年11月23日閲覧。
  23. ^ Группировка спутников ГЛОНАСС увеличится с 24 до 30 аппаратов — Rambler News Service
  24. ^ Спутник из состава группировки ГЛОНАСС выведен на техобслуживание — Rambler News Service
  25. ^ Роскосмос сообщил о планах заменить вышедший из строя спутник "Глонасс-М" летом
  26. ^ a b Спутник "Глонасс" вышел из строя, в некоторых точках возможны погрешности в работе системы - источник
  27. ^ Источники сообщили о выходе из строя второго за неделю спутника ГЛОНАСС
  28. ^ В «Роскосмосе» сообщили о работе системы ГЛОНАСС в штатном режиме — Rambler News Service
  29. ^ Еще один спутник системы ГЛОНАСС вывели из состава орбитальной группировки
  30. ^ “GLONASS Gone . . . Then Back”. GPS World. (2014年4月2日). http://gpsworld.com/glonass-gone-then-back/ 2014年4月30日閲覧。 
  31. ^ “Altus Positioning Systems Pinpoints Cause for GLONASS Default”. GPS World. (2014年4月4日). http://gpsworld.com/altus-positioning-systems-pinpoints-cause-for-glonass-default/ 2014年4月30日閲覧。 
  32. ^ “GLONASS Loses Control Again”. GPS World. (2014年4月16日). http://gpsworld.com/glonass-loses-control-again/ 2014年4月30日閲覧。 
  33. ^ “Glonass Failure Caused by Faulty Software – Roscosmos”. RIA Novosti. (2014年4月24日). https://sputniknews.com/russia/20140424189350346-Glonass-Failure-Caused-by-Faulty-Software--Roscosmos/ 2014年4月30日閲覧。 
  34. ^ "Russian space agency plans..." MosNews, 2004
  35. ^ "India to launch..." MosNews, 2005
  36. ^ "Joint announcement..." GPS/GLONASS, 2006
  37. ^ "Radical change..." GPS World, 2007
  38. ^ 中国 (北斗) とロシア (GLONASS) の衛星航法システムの統合
  39. ^ a b Russia, China Making Progress in Synchronization of GLONASS, BeiDou Systems
  40. ^ Россия и Китай проверят доступность сигналов ГЛОНАСС и Beidou на всем Шелковом пути — Rambler News Service
  41. ^ Qualcomm (2011年5月23日). “クアルコム、GPSとGLONASSの両衛星ネットワークの活用により、位置情報の精度を向上し、モバイル位置情報パフォーマンスを強化”. www.qualcomm.co.jp. 2013年6月24日閲覧。
  42. ^ napdragon_specs_9-12.pdf (Version 2.2 - modified 10/15/12)”. www.qualcomm.com (2012年10月15日). 2013年6月24日閲覧。


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