非対角長距離秩序 非対角長距離秩序の概要

非対角長距離秩序

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2014/02/05 03:33 UTC 版)

概要

場の生成消滅演算子に対し、

で定義される相関関数を1粒子密度行列という。ここで、期待値<…>は密度演算子による対角和で与えられるものである。1粒子密度行列の対角成分は、粒子数密度である。一方、非対角成分は、系が純粋状態の場合には、ある状態から位置にあった粒子を消し、位置に加えた状態への確率振幅に相当する。

ここで、非対角成分において、2点の距離が離れた極限で

を満たすとき、系は非対角長距離秩序ODLRO)を持つという。こうした性質は1粒子密度演算子の最大固有値が全粒子数のオーダー程度に大きいことを意味する。固体結晶の持つ対角的な長距離秩序とは本質的に異なり、ODLROは量子力学的なコヒーレンスで生じる長距離相関によってもたらされるものである。

1粒子密度行列の振る舞いを具体的に見るために、場の演算子を、

波数フーリエ展開すると、系が空間的に一様で並進対称性を持てば、1粒子密度行列は

と表すことができる[4]。但し、であり、第二式から第三式の移行では、波数の成分とそれ以外の成分の項を分けている。とする極限をとると第二項の指数は激しく振動し、打ち消しあいゼロとなるため、

が成り立つ。粒子数密度を一定に保ったまま、全粒子数と体積を無限大とする熱力学的極限で、が消えずに残り、ODLROが現れるには、が粒子数に比例して増えなくてはならない。フェルミ粒子系の場合、パウリの排他律により、であるから一粒子レベルではODLROを持たない。一方、ボース粒子系の場合、波数の状態にボース=アインシュタイン凝縮すると、全粒子数に比例してが増えるため、ODLROが生じることになる。

参考文献

論文
  • O. Penrose and L. Onsager, "Bose-Einstein Condensation and Liquid Helium", Phys. Rev. 104, 576 (1956) doi:10.1103/PhysRev.104.576
  • C. N. Yang,"Concept of Off-Diagonal Long-Range Order and the Quantum Phases of Liquid He and of Superconductors",Rev. Mod. Phys. 34,694 (1962) doi:10.1103/RevModPhys.34.694
書籍
  • 上田正仁 『現代量子物理学―基礎と応用』 培風館 (2004) ISBN 978-4563022655

関連項目


  1. ^ a b C. N. Yang, Rev. Mod. Phys. 34,694 (1962)
  2. ^ O. Penrose, Phil. Mag. 42, 1373 (1951)
  3. ^ O. Penrose and L. Onsager, Phys. Rev. 104, 576 (1956)
  4. ^ 上田(2004)、6章


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