衆議院の優越 みなし否決・自然成立の起算点

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衆議院の優越

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/09/10 09:51 UTC 版)

みなし否決・自然成立の起算点

衆議院におけるみなし否決の60日や自然成立の30日の起算点については、衆議院が議案等を可決した日にそれを送付し、参議院は即日議案等を受領する取扱いがなされるのが慣例であった。衆議院先例集ではみなし否決や自然成立の起算点について「送付の日から起算」と記している。

参議院事務局は慣例として、衆議院本会議で議案が可決されると直ちに衆議院の職員が「送付簿」を持って参議院の議案課に出向き、同課の職員が受領印を押した段階で「受け取った」事として扱われていた[1]。また、衆議院事務局は「憲法上、参議院が送付案を受理しないことは想定されていない」との見解を出している[2]

ところが2011年度予算に関し、衆議院が3月1日に予算案を可決し即日送付したが、野党である自由民主党などが予算案と共に歳入関連法案が参議院に送付されていないことを理由に、自然成立について定める憲法第60条2項が「参議院が、衆議院の可決した予算を受け取った後」と定めていることを根拠に、参議院側において主体的に予算の受領について判断できるなどと主張し、西岡武夫参議院議長も野党の意見に同調し、予算案の受け取りを留保する事態が発生。結局、西岡武夫参議院議長は衆議院が予算案を可決した3月1日と異なる3月2日付で予算案を受領する取扱いとする決定を発表した。

また、これは予算の自然成立だけでなく、法案のみなし否決についても憲法第59条で「参議院が、衆議院の可決した法律案を受け取った後」とある。条約の自然成立についても憲法第61条で「条約の締結に必要な国会の承認については、前条第二項(第60条2項)の規定を準用する」とあるため、法案や条約承認についても同様に「参議院が、衆議院の可決した議案を受け取った後」と解釈することが可能である。

参議院の意思でみなし否決や自然成立の日付が変わるのは、憲法の衆議院の優越規定を根幹から崩すとして反対意見も出ている。横路孝弘衆議院議長は2011年3月3日、予算案受領は機械的に行われるもので何らかの意思によって変動させることは法的安定性を害するとする、談話を発表した[3]。予算案の受領日をめぐり、衆参両院の議長で見解が分かれる異例の事態となっている[3]。もっとも、2011年度予算は3月29日に参議院本会議で否決され衆議院に返付されたため、衆議院の優越規定で衆議院の議決が国会議決となり、結果的として問題とならなかったが、今後の運用に波紋を残す結果となった。

なお、首班指名の自然成立を規定した憲法第67条では「衆議院が指名の議決をした後」と規定しており、参議院側が首班指名の自然成立の起算点について任意に判断できるような文言にはなっていない。また、国会法第86条により議院には内閣総理大臣の指名を議決した場合の他の議院への通知が義務付けられている。


注釈

  1. ^ この議決の時点では「今回は1回目の延長でいずれ2回目がある」と決まっていたわけではないため、厳密には「1回目の」という文字は不要のようにも思われるが、区別のためにあえて表記した。

出典

  1. ^ 予算案受理は2日=慣例無視、与党反発-参院議長時事通信 2011年3月2日
  2. ^ 予算案:参院は2日受理 西岡議長に与党反発 毎日新聞2011年3月2日
  3. ^ a b 2011年3月4日の朝日新聞朝刊4面


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