藤田スケール 改良藤田スケール

藤田スケール

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/18 09:34 UTC 版)

改良藤田スケール

1971年に導入され、数々のトルネードを分類してきた藤田スケールは経験的推測に頼る部分が大きかった。藤田とその研究仲間たちは、導入後すぐにその不備を認めて、徹底的な技術的分析に乗り出した。この研究によって、藤田スケールで定義された各階級の損害に相当する風速は、実際には藤田スケールで示したものより低いことが判明した。また、藤田スケールにおける、風速による竜巻の被害想定は一般的家屋を想定していたが、低い風速でも建築物に大きな損害を与えることが考えられ、建築物の強度などの要因に対する考察は不完全なままであった。この問題に対処するべく、藤田は1992年に修正藤田スケール(Modified Fujita Scale)を発表した。しかしながら、同年、藤田はシカゴ大学の教授職を退いており、また米国気象局(NWS)も藤田の修正したこの新しいスケールへの移行を引き受けるような立場にはなかったため、修正藤田スケールが世に広まることはついになかった。

アメリカ合衆国では、より正確な改良藤田スケール(EFスケール)を支持する意向を示す科学者が増えてきたこともあって、2007年2月1日にFスケールはその役目を終え、EFスケールに取って代わられた。カナダでは、同国の環境に合わせて修正を加えたカナダ版改良藤田スケールが導入され、2013年4月1日から運用を始めた[10]。EFスケールは多くの点でFスケールを改良したものだとされており、特に、建造物の種類によって異なる被害の程度などが、明確に示されるようになったことが改善点の一つに挙げられる。Fスケールでは多少曖昧だった損害の程度の規格化によって、かなり確実に竜巻の推定風速を求めることが可能になると期待されている。ちなみに、EFスケールの最高階級であるEF5では、風速の上限が設定されていない。

従来の藤田スケールは、TORROスケールが用いられている一部の地域を除いては、2008年現在も、竜巻の規模を示す指標として、国際的に広く用いられている。

日本では気象庁が2007年(平成19年)4月1日より「藤田スケール」を予報用語に追加した[11]。また、気象庁は米国のEFスケールを参考にしながら日本の環境に合わせて藤田スケールを改良し、より正確に竜巻など突風の風速を推定することができる日本版改良藤田スケール(JEFスケール)を2015年(平成27年)12月に策定して、2016年(平成28年)4月より運用を開始した[12]


  1. ^ 原著論文は藤田(1971年)を参照。
  2. ^ Grazulis, Thomas P (July 1993). Significant Tornadoes 1680–1991. St. Johnsbury, VT: The Tornado Project of Environmental Films. ISBN 1-879362-03-1 
  3. ^ a b Tornado FAQ(英語) Storm Prediction Center(英語)
  4. ^ Storm Prediction Center Enhanced Fujita Scale(EF Scale)(英語)
  5. ^ Fujita, T. Theodore (1974年). “Jumbo Tornado Outbreak of 3 April 1974”. 2021年9月18日閲覧。
  6. ^ Center Stage: Oklahoma City — Hope after the storm
  7. ^ Snyder, Jeffrey C.; Bluestein, Howard B. (21 April 2014). “Some Considerations for the Use of High-Resolution Mobile Radar Data in Tornado Intensity Determination”. Weather and Forecasting 29 (4): 799–827. Bibcode2014WtFor..29..799S. doi:10.1175/WAF-D-14-00026.1. https://zenodo.org/record/1234617. 
  8. ^ Wurman, Joshua; Kosiba, Karen; Robinson, Paul; Marshall, Tim (2014). “The Role of Multiple-Vortex Tornado Structure in Causing Storm Researcher Fatalities”. Bulletin of the American Meteorological Society 95 (1): 31–45. Bibcode2014BAMS...95...31W. doi:10.1175/BAMS-D-13-00221.1. 
  9. ^ “Obama offers solace in tornado-ravaged Oklahoma”. AFP. (2013年5月27日). https://web.archive.org/web/20130630003045/http://au.news.yahoo.com/thewest/a/-/world/17335797/obama-travels-to-tornado-ravaged-oklahoma/ 2021年9月18日閲覧。 
  10. ^ Sills et al. “IMPLEMENTATION AND APPLICATION OF THE EF-SCALE IN CANADA (PDF)”. 2016年8月24日閲覧。
  11. ^ 平成19年報道発表資料 予報用語の改正について”. 気象庁 (2007年3月29日). 2016年8月23日閲覧。
  12. ^ 日本版改良藤田(JEF)スケールとは”. 気象庁. 2016年8月23日閲覧。


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