聖母教会 (ドレスデン)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/11/10 06:18 UTC 版)
再建
1993年1月、教会建築技術者エベルハルト・ビュルガー(de)の指揮の下、ゲオルク・ベーアが1720年代に用いた計画を使った再建がついに始まった。土台は1994年に築かれ、1996年に地下聖堂が、2000年にはクーポラ(fr)の内部が完成した。
ドームを除いて、教会は可能な限り現在の技術の助けを借りながらオリジナルに用いられた建材と設計に基づいて再建された。瓦礫の山は記録され、ひとつひとつ運び出された。それぞれの石が最初にあったおよその位置は、堆積物のどこにあったかで測定が可能だった。使用可能な破片は計測され目録に記録された。石を三次元的にモニター上でさまざまな配置で動かすことが出来るコンピューター画像化プログラムは、建築家がオリジナルの石がどこに置かれ、どのように組み合わせられていたかを見つけるのを支援するために使われた。
再建には何百万もの石が使われた。8,500を越えるオリジナルの石が教会から回収されたが、およそ3,800が再建時に利用された。火災によるダメージと風化のため、古い石はより暗い色の緑青に覆われており、再建の数年後には古い石と新しい石の違いがはっきりと現れてくることとなる。
オリジナルの祭壇の破片2,000個は、洗浄されて新しい祭壇の一部となった。
建築家たちは何千枚もの古い写真や、礼拝に参列していた人たちや教会当局の記憶、そしてぼろぼろの古い発注書を頼りにモルタルや塗装に用いられた顔料の品質を詳細に調べた。18世紀当時は屋内の彩色に大量の卵が用いられたが、主な目的は発光させるためであった。
入り口のオークのドアを複製するときには、建築家は扉の彫刻の細部について曖昧な記述しか得られていなかった。教会を訪れた人々、特に結婚式の参列者は教会のドアの外側でポーズを取ることがしばしばであったため、建築家たちは市民らに古い写真を提供するよう要請し、結婚式のアルバムなどが提供された。これにより当初のドアが再現された。
金めっきを施された新しいオーブと十字架は可能な限り18世紀の技術を用いてロンドンのグラント・マクドナルド(Grant Macdonald Silversmiths)で鍛造された。十字架はロンドン出身のイギリス人、金細工職人アラン・スミスによって制作されたが、彼の父フランクはドレスデン爆撃に参加した航空機搭乗員の一人であった[5] 。十字架はドレスデンへ旅立つ前にコヴェントリー大聖堂、リヴァプール大聖堂、エジンバラのセント・ジャイルズ大聖堂、ロンドンのセント・ポール大聖堂を含むイギリス中の教会で5年間展示された。2000年2月、十字架はケント公によって正式に贈与され[2] 、D-デイ記念60周年の数日後にあたる2004年6月22日にドームの上に取り付けられ[6]、聖母教会の外装が完成した。
戦後初めて完成したドームと金色の十字架は、数世紀前のように優雅にドレスデンの空に輪郭を描いた。かつてドームの上にあり、今は焦げて捻れてしまった十字架は、新しい祭壇の右側に立てられている。
新しい7つの鐘が教会の為に鋳造され、2003年の聖霊降臨祭で初めて鳴らされた。
ジルバーマンのオルガンのレプリカは制作しないことに決定した。これは「ドレスデンオルガン論争("Dresdner Orgelstreit")」を引き起こす結果となったが、それは新しいオルガンがまったく「現代のもの」になるという誤解に基づいていた。パイプが4,873本あるオルガンがフランスのストラスブールでダニエル・ケルンによって制作され、2005年4月に完成した。ケルンのオルガンにはジルバーマンのオルガンの音栓一覧にあるストップ全てが装備され、それらを再現しようとしていた。またストップには追加されたもの含まれており、特に4番目のスウェル鍵盤は、バロック時代以後にオルガンのために書かれた19世紀の楽曲のスタイルに適したものであった。
爆撃を生き延びた、改革者で神学者のマルティン・ルターの銅像は修復され再び教会の正面に建てられたが、これは彫刻家アドルフ・フォン・ドンドルフ(en) 1885年の作品である。
世界的に有名な建築物を再建しようという努力の集約は2005年に完了したが、これは当初の計画より1年早く、また2006年のドレスデン市800周年に間に合うこととなった。聖母教会は宗教改革記念日の前日の祝祭と共に再び公開された。再建された聖母教会は人々にとって希望と和解の歴史を象徴する記念建造物である。
聖母教会では毎日の祈祷と日曜日に2回の礼拝が行われている。また、2005年10月から2010年までドレスデン市庁舎(de)内のドレスデン市立博物館(de)で聖母教会の歴史と再建について展示されている。
- ^ “デジタル大辞泉の解説”. コトバンク. 2018年5月20日閲覧。
- ^ a b BBC News | UK | Duke leads Dresden tribute
- ^ “完全崩壊からほぼ忠実に蘇ったドレスデンの教会”. ナショナル ジオグラフィック日本版. 2018年9月17日閲覧。
- ^ a b 訳は川口、p.243より
- ^ BBC News | UK | Dresden Cross presented at Windsor
- ^ BBC NEWS | World | Europe | Dresden ruins finally restored
- ^ http://www.deafvision.de/nachrichten/politik/7-mio-besucher-dresdner-frauenkirche
- ^ Mark Jarzombek "Disguised Visibilities: Dresden/"Dresden." Memory and Architecture, Ed. By Eleni Bastea, (University of New Mexico Press, 2004).
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