穴熊囲い
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/02/01 15:10 UTC 版)
手順
冒頭で挙げた「穴熊の基本形」の図における手順を解説する。
初手から▲7六歩、▲6六歩、▲7八銀、▲6八飛、▲4八玉、▲3八玉、▲2八玉[1]。(※1)
▲1八香(香車を上げ、穴をつくる)、▲1九玉(熊が穴に入る)、▲2八銀(銀でフタをする)[1]。(※2)
- (※2)この時点ですでに一応「囲い」にはなっているので、場合によってはこの状態でとりあえず戦っても良い[1]。
▲3九金(一枚目の金をつける)、▲5八金、▲4八金寄、▲3八金寄(2枚めの金もつけた。以上で穴熊囲いの完成)[1]。
穴熊囲いの長所
まず、金銀が連結した形で密集していることが多く非常に堅い。特に横からの攻めには強いとされる。また、玉が隅にいて戦場から遠いことに加えそのままの形では王手が掛からない(絶対に詰まない、いわゆるゼット)。上部や端からの攻めには比較的弱いものの、それでも攻め手が駒を渡さずに攻略することは難しい。これらの特徴により穴熊囲いに囲った側は、大駒(飛車や角行)を捨てるなどの大胆な作戦を成立させやすい。「穴熊ならではの攻め」と称されることもあり、終盤での大きな利点となる。
穴熊囲いの短所
序盤では、囲いが完成するまでに手数がかかるためにそれ以前に攻撃を仕掛けられることが多い。また、囲いが完成した形では一ヶ所に駒が密集し偏っているために自陣に隙が多くなり、大駒の打ち込みなどが生じやすい。終盤でも、玉が隅にあり身動きが取れない上に持ち駒を打てる場所も限られており、受けがないことがある。自陣に隙が多いので相穴熊以外では入玉もされやすく、必然的に穴熊側の勝ち目がなくなる故に投了したという対局も多い。この時、囲いが全く崩れていない場合などに「(穴熊の)姿焼き」と表現することがある。
加えて居飛車穴熊の場合は、相手の角道が囲いに直射するという欠点もある。居飛車穴熊の攻略法には、この角道を利用したものが多い。
攻略法
穴熊囲いに対しては、桂馬や香車、歩兵を使った「小駒の攻め」が有効と言われる。相手に取られたときに守備に使われにくいからである。特に「と金」を使った横からの攻めは、遅くとも受けにくいために有力とされる。守りの金銀を相手にしない端攻めも有効であり、端に狙いをつけた一間飛車、地下鉄飛車といった戦法もある。
居飛車穴熊対策の戦法としては、四間飛車の「藤井システム」が有名である。自分の囲いに手数をかけず(ほとんど居玉のまま)角道と端攻めなどを併用し、居飛車穴熊が完成する前に攻略する。この他に三間飛車の中田功XPやトマホークなどの戦法がある。
なお、穴熊囲いで桂馬が跳ねた形を俗に「パンツを脱ぐ」と表現することがあり、桂が跳ねた後の穴熊囲いは著しく弱体化する[3]。相穴熊戦においては、金将が攻めにも守りにも働く重要な駒であり、角行より高い価値があることが多いとされる。「相穴熊では角より金」という格言もある。
注釈
- ^ 先手が振り飛車の場合は3九と4八に置いたり、3九と4九に置いたりすることがある。相振り飛車のときは3八と4八もあり得る。
- ^ 松尾本人は「松尾流穴熊」について「もともとあった形」と発言しており、松尾が多用して勝率を上げたことからこの呼称になったと思われる。
- ^ 「松尾流穴熊に組めたら勝率8割」と言われている。“渡辺明:四間飛車破り 居飛車穴熊編”. 棋書解説評価委員会. 2024年1月29日閲覧。
出典
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