磁気抵抗メモリ 構造・動作原理

磁気抵抗メモリ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/05/12 02:53 UTC 版)

構造・動作原理

MRAMはMTJ、セルを選択するためのビット線、ワード線、そしてMTJの抵抗変化を読み出すトランジスタからなる。ビット線、ワード線はMTJを挟んで直交に走っており、両者に同時に電流を流すことで合成磁場を誘起し、メモリセルを選択することができる。

磁界書き込み型MRAM

書き込み動作

データの書き込みはMTJの磁化反転により行われる。MTJは絶縁体層を上下の強磁性体層が挟み込む構造からなり、上下の磁化の向きが相対的に"平行"か"反平行"であるかによって抵抗の大きさが異なるトンネル磁気抵抗効果(Tunnel Magneto Resistance effect、TMR)を示す。

上下の強磁性体層の内の一方は保磁力が大きく磁化が一方向に固定されているピン層で、もう一方は保磁力の小さく容易に磁化が反転するフリー層である。

フリー層の磁化反転には、”古典的”には電流によって外部磁場を誘起する方法がある。ビット線とワード線の両方に電流を流すと、合成磁場が誘起されそれによりフリー層の磁化が反転する。

しかしながら微細化を進めて集積密度を高める上では、誘起された磁場が隣のセルに影響を及ぼしてしまうこと、磁化反転に必要な電流密度が増大してしまうことなどから困難が生じている。

そこで、近年ではスピン偏極した電流を注入することにより磁化反転を実現するスピン注入磁化反転方式が主流となっている。

読み出し動作

読み出し時には、上記のようにTMR効果によってMTJの抵抗の大きさが平行、反平行時()で変化するので、これらに対応する抵抗値をデータの0と1としている。

DRAMや他のメモリと異なりMTJを流れる電流の大小を電圧の大小として読み出す必要があるため、通常は参照セルと選択セルに同じ大きさの電流を流し、その電圧降下の差を差動増幅回路(センスアンプ)で増幅して電圧として読み出している。

参照セルの抵抗値はの間の値を取るように設計されている。の比()は磁気抵抗比(MR比、MagnetoResistance ratio)と呼ばれ、このMR比が大きいほど読み出しエラーが少なくなる。

この様に、MRAMは記憶に強磁性体中の電子スピンに由来する磁化状態を利用するため不揮発で、電源を遮断してもデータが保存される。しかし、外部からの磁場に弱い。これはMTJ素子が可動層の磁化そのものではなく、両層の磁化方向の違いによりデータを記録する為に固定層の磁化が狂ってしまうと正常に読み出しできずに回復不能(ハードエラー[2])になるからである。


  1. ^ TOGGLE MRAM: FIRST GENERATION MRAM”. エバースピン・テクノロジーズ. 2014年10月1日閲覧。
  2. ^ ハードエラーとは文字通り、破損や寿命などで素子が正常に動作できなくなることを意味する。対してソフトエラー英語版はその時点で記憶していた情報は失われるが、素子の電源を入れ直したり情報を書き込み直したりすれば元通り使用できるようになる
  3. ^ “Freescale、MRAMの製品化を実現”. ITmedia ニュース. (2006年7月11日). https://www.itmedia.co.jp/news/articles/0607/11/news011.html 
  4. ^ Press Release 1Gb CS Availability Final.pdf





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