獅子王 (刀) 作風

獅子王 (刀)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/09 14:48 UTC 版)

作風

刀身

刃長二尺五寸五分(約77.3センチメートル)反り9分(約2.7センチメートル)、鎬造の庵棟、鎬高く幅広く腰反り高い、カマス切先で地刃に平安期大和物の特色の強い、典型的太刀体配の太刀である。

重ね(刀身の厚み)が薄く身幅が低い(刀身の幅が狭い)、同時代のものと比べても全体的に小振りな太刀で、源頼政が拝領した際には三尺五分五寸(102.5センチ)の大太刀であったとする資料もあるため、現状の刀身は摺り上げが行われたうえ作刀時からは大幅に研ぎ減っている状態であるとの解釈もあった。しかし、生ぶ茎(うぶなかご)であり、摺り上げや研ぎ減りによる作刀後の体配(刀全体のシルエット)の変化が見受けられないこと、また後世に体配が変えられたとすると附随する拵えの製作年代との整合性が取れないことから、小太刀として作成されたものではないか、とも考えられている。

外装

獅子王の拵 柄

刀身と併せて外装として黒漆塗糸巻太刀様式の拵えが現存しており、通常見られる他の太刀拵と比べて足金物の一の足と二の足の間隔が非常に大きいのが特徴で、これは他にあまり例を見ない独特の様式である。鞘、柄、及び大切羽付の木瓜形練革鍔と山金製金具の全体に渡って黒漆を掛けた[注釈 2]上から鞘には黄地錦を巻いた上に紺色の糸で渡巻を施されている。柄は現状では剥出しにした鮫皮に黒漆を掛けている黒漆掛出鮫柄であるが、往時には柄には鞘と同色の下地錦と柄巻が施されていたものと考えられている。目貫には鍍金巴紋容彫りの製丸目貫を配しているが、これは後世の追補である。これら刀身、外装に加えて橙色錦包の太刀緒が附属する。

この「号 獅子王」の黒漆塗糸巻太刀の拵えは、平安期に作られたものとしてはほぼ製作当初のままの外装を残している貴重な刀剣の一つである、とされているが、鞘の渡巻と下地錦部分については、黒漆塗りの施された部分に比べてさほどの経年変化が見られないことや、不完全な状態ながら現代に伝わっている同時代の太刀拵と比較すると、実戦用の実用太刀であれば糸巻や下地錦を用いることの無い様式[注釈 3]であったと見るのが自然なため、目貫と共に渡巻及び下地錦は後世の追補であるとの考察[注釈 4]もある。


注釈

  1. ^ 官報告示における指定名称(原文は縦書き)は「⎧太刀無銘
    ⎩黒漆太刀拵
    」と表記されている。
  2. ^ 黒漆の経年の変化によるものか、現状では光線の加減によっては茶色潤みに似た色味となっている。
  3. ^ 鞘及び柄に組紐を巻く「糸巻太刀」の様式が一般化したのは鎌倉時代に入った後のことであり、更に巻下地に錦布が広く用いられるようになったのは室町時代以降のことである。
  4. ^ 数々の日本刀の拵えの復元を手掛けている、鞘師であり日本刀外装研究家の高山一之による。

出典







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