気 概説

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/10/13 09:17 UTC 版)

概説

気は英語Aura(アウラ)ラテン語spiritus(スピリトゥス)ギリシア語Ψυχήpsycheプシュケー)、πνεῦμαpneumaプネウマ)、ヘブライ語ruahルーアハ)、あるいはサンスクリットpranaプラーナ)と同じく、生命力や聖なるものとして捉えられた気息、つまり息の概念がかかわっている。しかしそうした霊的・生命的気息の概念が、雲気・水蒸気と区別されずに捉えられた大気の概念とひとつのものであるとみなされることによってはじめて、思想上の概念としての「気」が成立する。

雲は大気の凝結として捉えられ、風は大気の流動であり、その同じ大気が呼吸されることで体内に充満し、循環して、身体を賦活する生命力として働く。つまり、ミクロコスモスである人間身体の呼吸とマクロコスモスである自然の気象との間に、大気を通じて、ダイナミックな流動性としての連続性と対応を見出し、そこに霊的で生命的な原理を見るというアイディアが、気という概念の原型なのである。

一方では人間は息をすることで生きているという素朴な経験事実から、人間を内側から満たし、それに生き物としての勢力や元気を与えている、あるいはそもそも活かしているものが気息であるという概念が生まれる。そしてまたそこには、精神性、霊的な次元も、生命的な次元と区別されずに含まれている。ただし、精神的な次元は、後代には理の概念によって総括され、生命的な力としてのニュアンスのほうが強まっていく。

他方では、息は大気と連続的なものであるから、気象、すなわち天気などの自然の流動とも関係付けられ、その原理であるとも考えられていく。自然のマクロな事象の動的原理としての大気という経験的事実から、大気にかかわる気象関連の現象だけでなく、あらゆる自然現象も、ひとつの気の流動・離合集散によって説明される。この次元では気はアルケーとしてのエーテルである。

この霊的な生命力として把握された気息であり、かつ万象の変化流動の原理でもあるという原点から、ついには、生命力を与えるエネルギー的なものであるのみならず、物の素材的な基礎、普遍的な媒質とまで宋学では考えられるようになった。

こうした由来ゆえに、気は、一方では霊的・生命的・動的な原理としての形而上的側面をもちながら、他方では、具体的で普遍的な素材(ヒュレー)的基体でありかつ普遍的なエーテル的媒質であるがゆえに、物質的な形而下的側面も持つという二重性を持つことになった。気は、物に宿り、それを動かすエネルギー的原理であると同時に、その物を構成し、素材となっている普遍的物質でもある。従って、たとえば気一元論は、かならずしも唯物論とはいえない[1][2][3][4][5][6][7]


  1. ^ DENG Yu, ZHU Shuanli, Deng Hai (2002). “Generalized Quanta Wave with Qi on Traditional Chinese Medecine”, Journal of Mathematical Medicine, 15(4), pp. 369-371.
  2. ^ DENG Yu, Zhu Shuanli, X. Peng, Deng Hai (2003). “Ration of Qi with Modern Essential on Traditional Chinese Medicine Qi: Qi Set, Qi Element”, Journal of Mathematical Medicine, 16(4).
  3. ^ 邓宇[Deng Yu]・朱栓立[Zhu Shuanli]・徐彭[Xu Peng]・邓海[Deng Hai](2000)〈五行阴阳的特征与新英译[New Translator with Characteristic of Wu xing Yin Yang]〉《中国中西医结合杂志[Chinese Journal of Integrative Medicine]》20(12):987。
  4. ^ 邓宇[Deng Yu]・朱栓立[Zhu Shuanli]・徐彭[Xu Peng]・邓海[Deng Hai](2000)〈五行阴阳的特征与新英译[Fresh Translator of Zang Xiang Fractal five System]〉《中国中西医结合杂志[Journal of Integrative Medicine]》(12):937。
  5. ^ 邓宇[Deng Yu]等(1998)〈阴阳的科学本质及数理化建构〉《中国中医基础医学杂志[Chinese Journal of basic medicine in traditional chinese medicine]》2:59-61。
  6. ^ 邓宇[Deng Yu]等(1999)〈中医分形集[TCM Fractal Sets]〉《数理医药学杂志[Journal of Mathematical Medicine]》12:(3):264-265。
  7. ^ 邓宇[Deng Yu]・朱栓立[Zhu Shuanli]・徐彭[Xu Peng]・邓海[Deng Hai](2000)〈经络英文新释译与实质[Essence and New Translator of Channels]〉《中国中西医结合杂志[Chinese Journal of Integrative Medicine]》20(8):615。
  8. ^ a b 上田信『風水という名の環境学: 気の流れる大地』、農山漁村文化協会〈図説・中国文化百華〉第15巻、2007年、182-195頁。ISBN 978-4-540-03097-0
  9. ^ 医学中央雑誌で検索しても2005年~2010年で該当する論文は1件のみである。
    • 定方美恵子、山田幸子「看護療法としての気功: その可能性を模索する」『日本看護技術学会誌』第7巻第1号、日本看護技術学会、2008年3月、34-36頁。NAID 40015971701






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