椎間板ヘルニア 治療

椎間板ヘルニア

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/11/25 00:24 UTC 版)

治療

椎間板ヘルニアのMRI画像Ⅱ-①
赤丸内が「圧迫された神経根」及び「水分含有量が不足し炎症を起こして上方へ大きく突出した椎間板」
椎間板ヘルニアのMRI画像Ⅱ-②
上の画像の高濃度版

ほとんどの場合、脊椎椎間板ヘルニアは手術を必要としない。脊椎椎間板ヘルニアが原因と考えられる坐骨神経痛に関する研究では、「12週間後、73%の人々が手術なしで妥当で大幅な改善を示した」ことが分かっている[1] 。しかしながらこの研究では、坐骨神経痛の患者のうち、椎間板ヘルニアに起因する個人の数は特定されていない。

初期治療は通常、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)であるが、持続性の腰痛を持つ人々に対するNSAIDの長期使用は、心血管系および胃腸系に対しての有害性の可能性があるため難しい。

無症状の椎間板ヘルニアが知られているように、椎間板ヘルニアは、その症状によって治療法が決まるのであり、存在していることが治療の対象にはならない。椎間板ヘルニアの治療は、原則的には保存療法である。これには、鎮痛剤、運動療法や牽引、温熱療法などのリハビリテーションが含まれる。さらに、神経ブロック療法(神経根ブロック、硬膜外ブロック等)が適応となることがある。リハビリテーションで行う運動療法にはマッケンジー法と呼ばれる腰を反らす腰痛体操や股関節周りの筋肉(ハムストリングスや腸腰筋)のストレッチを行う。[2]

2014年1月30日、腰椎椎間板ヘルニア治療薬として初となる薬ヘルニコア(一般名:コンドリアーゼ)が厚生労働省に製造販売承認申請された。[3]この新薬は椎間板を分解する酵素を椎間板内に注射することで、突出した椎間板を分解、縮小させる効果がある為、今後の薬物による椎間板ヘルニア治療が期待される。また、この薬は国内初となる椎間板内に直接注射する治療剤であり、全身麻酔の必要もなく手術療法と比較して身体への負担が小さいという特徴がある。国内においては、2018年3月23日に製造販売承認を取得し、2018年8月1日に発売された。[4]

手術

保存療法で奏効しない場合、手術が考慮される。手術適応は、学会内においても確立されていないが、一般に、排尿障害が絶対手術適応とされている。さらに、筋力低下、激しい痛みを伴う場合などに手術が考慮される。また、強い症状がなくとも、3ヶ月以上症状が持続する場合は適応とされることが多い。手術法はいくつかあるが、古典的かつ現在も主流なのはLove法である。さらに内視鏡(内視鏡椎間板切除術(Micro Endoscopic Discectomy; MED)や顕微鏡(顕微鏡視下椎間板ヘルニア切除術、Micro Love法)もあるが、基本は椎間板ヘルニアを摘出する方法で、社会保険が適用される。

加えて、レーザー治療(Percutaneous Laser Disc Decompression; PLDD)や経皮的椎間板ヘルニア摘出法(Percutaneous Discectomy; PD)、経皮的内視鏡下椎間板ヘルニア摘出法(Percutaneous Endoscopic Lumbar Discectomy; PELD)、2003年に出沢明帝京大学教授)が日本に紹介した「経皮的内視鏡腰椎椎間板ヘルニア摘出術(Percutaneous Lumbar Discectomy; PED=ペッド」と呼ばれる手術法がある。PEDは、患部切開を最低限に抑えるとともに、短期間の休養(加療・静養)で社会復帰ができること、ヘルニアの再発防止にもつながるとして学術的にも注目を集めている[5]。侵襲性が低く日帰りから1泊入院で手術も可能であるが、有効率が低く適応が限られるばかりか、社会保険適用除外で高額な医療費を自己負担せざるを得ず、さらに手術の効能、また局所麻酔につき痛覚などの個人差も極めて大きく、手術中にほとんど痛みを感じない上で手術直後に症状が改善される患者もいれば、手術中に苦痛を覚えながらも術後半年以上経過してようやく症状が改善される患者もいる。

切開せず、内視鏡を使ってつまんで摘出する術方もある。この内視鏡手術では、特殊な鉗子と呼ばれる金具を使用してつまみ出し、患者にもよるが2-3時間程度で摘出し、縫合の際に市販の絆創膏を貼り付ける。その後、術後から3時間程度でリハビリを行い、杖を使うこともなく歩くことができるという[6]

手術例の5%から10%の割合で再発するとされている。再発例の改善率は、一般に初回例より劣る。治療は、日本では整形外科医を中心とした脊椎外科医によって行われているが、脳神経外科でも行っている施設もある。関連した学会で、脊椎脊髄学会があり、近年、脊椎外科指導医の認定を行っており、ウェブサイト上で公表されているが、自己申告による認定制度であるので、その辺りを加味しておく必要がある。

日本整形外科学会認定医は、専門医試験に合格して「整形外科専門医」の資格を取得した上で、さらに「日整会認定脊椎脊髄病医」としての資格を取得した後、実技試験を受けて「脊椎内視鏡下手術・技術認定医脊椎脊髄病医」の資格を取得する。学会で認定した「脊椎内視鏡下手術・技術認定医」の名簿を公表している[7]

民間療法

  • 鍼灸ではL4/L5間の治療には大腸兪穴(だいちょうゆけつ)、腰眼穴を用いて痛みの緩和をする。
  • カイロプラクティック療法は,症状を悪化させる恐れがあるため適当でない[8]







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