時間結晶
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/10/25 14:56 UTC 版)
熱力学
時間結晶は熱力学の法則には逆らわない。全体の系のエネルギーが保存されているのでそのような結晶は自発的に熱エネルギーを機械的な仕事に変換することはなく仕事の永久保存としては役に立たない。しかし、系が維持されている限り時間の固定されたパターンで永久に変化することがある。それらは「エネルギーなしの動き」を持っている[18](それらの見かけの動きは従来の運動エネルギーを表していない)[19]。
熱平衡において時間結晶は存在しないことが証明されている。近年、非平衡量子揺らぎの研究が増えている[20]。
実験
2016年10月、メリーランド大学のクリストファー・モンローは世界で始めて離散時間結晶を作成したと主張した。Yaoの提案から得たアイデアを使い、彼のチームはラジオ周波数電磁場により閉じ込められたパウル・トラップに171Yb+の鎖をトラップした。2つのスピン状態のうち1つは1対のレーザービームにより選択された。誤った光周波数での過剰なエネルギーを避けるためにテューキー窓を使い、音響光学変調器により制御される形状のパルスをレーザーに与えた。このセットアップにおける二つの超微細電子状態、2S1/2 |F=0, mF = 0⟩ と |F = 1, mF = 0⟩ は12.642831 GHz離れた非常に近いエネルギー順位を有する。10個のドップラー冷却されたイオンを0.025 mmの長さの線に配置し、互いに相互作用を持たせた。研究者らはドライブの分数調波振動を観測した。この実験は時間結晶は摂動されても振動周波数は変化しないままであるという時間結晶の「剛性」を示した。すなわちそれ自身の周波数を得てそれに応じて振動したということである。しかし振動の摂動もしくは周波数が強すぎると時間結晶は「融解」してそれ自身の振動を失い、誘導周波数で動いたのと同じ状態に戻る。[12]
同年、ハーバード大学のMikhail Lukinも駆動時間結晶の作成を報告した。彼のグループは、強い双極子-双極子カップリングと比較的長寿命のスピンコヒーレンスを有する、高濃度の窒素空孔中心がドープされたダイヤモンド結晶を用いた。この強く相互作用する双極子スピン系をマイクロ波場で駆動し、光学(レーザー)場でアンサンブルスピン状態を読み出すことにより、スピン偏極がマイクロ波駆動の半分の周波数で発展したことが観察された。発振は100サイクル以上持続した。この駆動周波数に対する分数調和応答は時間-結晶秩序のサインとみなされている。[11]
関係のある概念
"Choreographic crystal"(直訳で「舞踊結晶」)と呼ばれる似た考えが提案されている[21]。
- ^ a b See Watanabe & Oshikawa (2015)
- ^ a b See Sacha (2015)
- ^ See Wilczek (2012) and Shapere & Wilczek (2012)
- ^ See Li et al. (2012a, 2012b), Wolchover 2013
- ^ See Bruno (2013a) and Bruno (2013b)
- ^ Thomas (2013)
- ^ See Nozières (2013), Yao et al. (2017), p. 1 and Volovik (2013)
- ^ See Wilczek (2013b) and Yoshii et al. (2015)
- ^ See Khemani et al. (2016) and Else et al. (2016)
- ^ See Yao et al. (2017), Richerme (2017)
- ^ a b See Choi et al. (2017)
- ^ a b See Zhang et al. (2017)
- ^ Cao 2004, p. 151.
- ^ Wilczek 2015, chpt. 3.
- ^ Feng & Jin 2005, p. 18.
- ^ Sólyom 2007, p. 193.
- ^ Sólyom 2007, p. 191.
- ^ Crew, Bec. “Time Crystals Might Exist After All - And They Could Break Space-Time Symmetry” (英語). ScienceAlert 2017年9月21日閲覧。
- ^ “"Time Crystals" Could Be a Legitimate Form of Perpetual Motion - Scie…”. archive.is. (2017年2月2日) 2017年9月21日閲覧。
- ^ See Esposito et al. (2009) and Campisi et al. (2011) for academic review articles on non-equilibrium quantum fluctuations
- ^ See Boyle et al. (2016)
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