日本拳法 特徴

日本拳法

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/23 06:40 UTC 版)

特徴

競技形式をいち早く確立した点や、防具を使用した直接打撃制である点に特徴がある。ただし、組手とは言わず防具練習(拳法会での呼称。協会、連盟では実乱撃と呼称。実撃を行う。)、空乱(空撃・寸止めで行う)、想乱(いわゆるシャドーボクシング)という言葉を用いている。試合ルールは、拳法会が剣道と同じく三本勝負、協会がポイント制を採用している。

拳法会は打撃抜きで即組み付き、崩し、押し倒す。テイクダウンを用いる戦法も認められており立試合業の面蹴りを実撃に、協会では打撃を重視して規格統一的な指導を行い靴着用で蹴りが多彩なものの面蹴りを仮当てとし、連盟では中間を採っている。

拳技

突技

突き(空手で言う直突き:下肢も含めた全身運動を拳に収束する)の威力は一部の他流派でも知られており、日本拳法を代表する技の一つと言われている。しかし、澤山の創案した突打蹴に波動の法則を適用して人体の柔体を利用し、打撃技に強い威力を与える本来の代表技である「波動拳」はあまり知られていない。具体的技術としては構えの手を開手として手首をできるだけ起こし、突きを出すに従って徐々に指先から丸めて拳を作り、目標に当たる瞬間に決めを作る。言い換えれば手首のスナップを最大限に生かした突きと言うべきものである。この動作により柔らかい構えから一気に強力な突きを繰り出す。これは拳技のみならず、蹴り技にも応用されている。澤山直伝の拳法は、この波動と円の動きが組み合わされた流れるような拳法であり、今日の打撃系格闘技に見られるボクシング的な動きとは一線を画すものであったと伝えられる。

打技

突技と打技の違いについて、宗家では「突と打の異なるところは、拳の撃線が、突きの直線性なのに対して打の方は円線または弧状を描くことである」と定義している。

拳の用法により、以下のように呼称されている。

横打
ボクシングのフックにあたる
外打
空手の裏拳打ちにあたる
斜打
野球のオーバースローに似た動きで相手の面を打つ
揚打
ボクシングのアッパーカットにあたる

それぞれ拳を固めてボクシングのように打つ方法もあるが、波動拳を利用して横打ならフックの軌道状で開手の手首を柔らかく返し、相手のこめかみに当たる寸前に拳を固めて打つという方法も有る。この場合、同じ人体の急所でもより頭部の急所を中国武術の「点穴」のように捉えて打つという感じとなる。

また、上記とは別に相手の突き手を潜り急接近して脇に構えたオープングローブ(掌拳、掌底)を用い、すれ違いざまに胴を打つ技が存在した。近藤寿一がこの使い手として有名な1人で、本人によれば現役選手時代は人から嘲られようが爪先立ちで日常を過ごし続け、常に下肢の鍛錬に努めていたという。

蹴り

突蹴り

槍をかい込んで突き徹すような突き蹴り、かがんだ相手の胴部を蹴り上げる揚げ蹴り等、拇指の下あたり(裏足)を当てる蹴りが多用される。胴への横蹴り(廻し蹴り)は少なく、使用しても面への横蹴りと後ろ廻し蹴り(拳法会では素足で鉄面を蹴ることになるため、打撲、骨折などの怪我のリスクが高い)以外では審判に採られ難かった。他流派の影響も受けたせいか、横蹴り(横突蹴り、足刀蹴り)も多々見られるようになっている。

膝蹴り

相手に組みついた際などに使う。膝頭による蹴打。

踏蹴り

倒れた相手などに用いる踏みの蹴り。

ローキック禁止

防具のない箇所への打撃は反則とされているので、ローキックは禁止だが足払いは有効である。

組み討ち

原則として投げ技のみで一本にはならない。倒れた相手に追撃を加えるか関節技をかけて、それらが成功して初めて一本が採られる。また、ムエタイの首相撲のような攻防からの膝蹴りも認められている。完全な膠着状態にならない限り攻防が止められることはなく、投げてからより幅広い攻防が繰り広げられることになる。

倒れた相手に

上記のとおり倒れた相手へ関節技以外の攻撃も認められている。突き・蹴り・踏み蹴り(頭部や胴、股を踏みおろす)・抑え込んでの頭部、胴部への膝蹴り・足を掴んでの股蹴り・いわゆる4点ポジションからの頭部への膝蹴りは全て有効である。ただし、踏み蹴りは危険防止のため空撃かライトコンタクトにより一本とされ、強打は危険行為として即反則負けになるケースもある。


  1. ^ 「実戦の“拳法”澤山宗海――日本拳法創始者――」、加来耕三『武闘伝』223頁参照。
  2. ^ 加来耕三『武闘伝』毎日新聞社、1996年、222頁参照。
  3. ^ 加来耕三『武闘伝』毎日新聞社、1996年、225頁参照。1929年(昭和4年)に設立したとする文献もある。森良之祐『絵説・日本拳法』東京書店、1998年、48頁参照。
  4. ^ 森良之祐『絵説・日本拳法』東京書店、1998年、48頁参照。
  5. ^ 高宮城繁・仲本政博・新里勝彦『沖縄空手古武道事典』柏書房、2008年、732頁参照。
  6. ^ 仲宗根源和編『空手研究』空手研究社、1934年、68頁参照。
  7. ^ 加来耕三『武闘伝』毎日新聞社、1996年、231頁参照。
  8. ^ 大阪毎日新聞昭和10年6月19日付記事、関西学院大学拳法部部史より
  9. ^ 森良之祐『絵説・日本拳法』東京書店、1998年、49頁参照。






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