整理解雇 整理解雇の概要

整理解雇

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/11/22 17:27 UTC 版)

法律上の位置づけは国により異なる。イギリスにおいてはRedundancy(余剰解雇)と表現され、1996年雇用権利法英語版139条に基づく法的用語である。日本では、1.人員整理の必要性、2.解雇回避努力、3.被解雇者選定基準の合理性、4.労働者側に対する説明・協議の4つの要素を基準に判断される解雇で、普通解雇(労働者側に生じた事由による解雇)と区別される[1]。日本では「リストラ」と呼ばれたりもする。

オーストラリア

オーストラリアではRedundancyとは、とある労働者の仕事について誰も行う必要がなくなった状況を指す[2]。労使協定、公正労働委員会に登録された労働契約(registered agreement)の要件に従う限り、それは不当解雇とはみなされない[2]。対象が15人以上である場合は集団的解雇となり、定められたフォーマットで行政に通知する必要がある[2]

雇用の終了にあたっては、事前に書面にて退職日を通知する必要がある[3]。法定の最低予告期間は勤務年数によって1-4週間[3]。勤務年数が1年以上の場合にはRedundancy paymentsを受け取ることができ、勤続年数によって以下と定められている[3]

  • 1年以上2年未満 - 4週間の賃金
  • 2年以上3年未満 - 6週間の賃金
  • 3年以上4年未満 - 7週間の賃金
  • 4年以上5年未満 - 8週間の賃金
  • 5年以上6年未満 - 10週間の賃金
  • 6年以上7年未満 - 11週間の賃金
  • 7年以上8年未満 - 13週間の賃金
  • 8年以上9年未満 - 14週間の賃金
  • 9年以上10年未満 - 16週間の賃金
  • 10年以上 - 12週間の賃金(16週間から12週間に短縮されている[3]

イギリス

イギリスでは1996年雇用権利法において、 Redundancy が発生する状況を二つ挙げている。

(a) 雇用主が以下を停止、もしくは停止しようとしている

(i) 被雇用者が雇用されていた目的に基づいた事業遂行、または
(ii) 従業員が雇用されていた場所における事業遂行

(b) その事業の要件が以下であって、

(i) 従業員が特定の種類の仕事を遂行する
(ii)従業員が雇用主に雇用されていた場所において、特定の種類の仕事を行うための従業員への要求

これらを停止もしくは削減、または停止もしくは削減する見込みであること。

Employment Rights Act 1996

なお、この対象が20人を超える場合は集団的解雇に該当し、追加の手続きが必要となる。

Redundancyの回避

解雇を回避するために、以下などの試みが求められる[4]

  • 希望退職、早期退職を募集する
  • 他部門への配置転換の検討
  • 自営の請負業者、フリーランサーなどを解雇
  • カジュアルワーカーを使用しない
  • 求人採用の制限
  • 残業の削減・禁止
  • ビジネスの他の場所の空席を既存の従業員で埋める
  • 短時間労働への切り替え、無給休暇(レイオフ)実施

余剰解雇手当

Redundancy payments(余剰解雇手当)は、2年以上勤務する者を余剰理由にて解雇した場合、法的に支払う義務がある[5]。その従業員が勤続していた年齢によって、手当の金額が決まる。

  • 41歳以降の部分: 勤務1年間あたり1.5週間分の賃金
  • 22-41歳以降の部分: 勤務1年間あたり1週間分の賃金
  • 22歳未満の部分: 勤務1年間あたり0.5週間分の賃金

計算の上限は20年である。週給の上限は544ポンドである。手当の最大額は16,320ポンドである。

ニュージーランド

ニュージーランドではRedundancyと呼ばれ、これは職場におけるポジションが不要になったために、雇用主が労働力を削減することである[6]。Redundancyは最後の選択肢であり、雇用主はまず配置転換(異動)オプションの手続きを試みる必要がある[6]

Redundancy payments(余剰解雇手当)は、雇用契約書においてその支払いが明記されている場合に、支払いが必要である[6]。雇用契約に条項が無い場合には、支払う必要はない[6]


注釈

  1. ^ あさひ保育園事件(判昭和58年10月27日)では、希望退職の募集をしなかったことを理由の一つとして解雇を無効とした。
  2. ^ ホクエツ福井事件(名古屋高金沢支判平成18年5月31日)では、8~10名の希望退職者を募った結果6名の希望退職者及び解雇者をもって同時期の指名解雇を終了させた事案について、この希望退職者募集は「解雇を回避するために十分に有効なものであったとはいい難い」として、「整理解雇手続が相当なものであったとは認められない」とした。
  3. ^ シンガポール・デペロップメント銀行事件(大阪地判平成12年6月23日)では、支店独自に採用された労働者が、当該支店の閉鎖により整理解雇された事案について、別支店への転勤が不可能として解雇を有効とした。
  4. ^ みくに工業事件(長野地諏訪支判平成23年9月29日)では、「準社員」を「会社との結び付きの面でも、正規社員と全く同一ではないもののこれに準じた密接な関係にあるものと解され、解雇の相当性判断に際しては、正規社員と同様に判断するのが相当である」として「準社員であったことを解雇の対象者として選定した事情として合理的なものと認めることはできない。」として解雇を無効とした。

出典

  1. ^ a b c d e f g 島田陽一. “企業内の雇用ミスマッチと解雇権濫用法理”. 日本労働研究雑誌No. 626. 2022年4月24日閲覧。
  2. ^ a b c Redundancy”. 豪州公正労働オンブズマン. 2021年11月10日閲覧。
  3. ^ a b c d Notice of termination & redundancy pay”. 豪州公正労働オンブズマン. 2021年11月10日閲覧。
  4. ^ GOV.UK. “Aviding Redundancy”. 英国政府. 2021年10月閲覧。
  5. ^ GOV.UK. “Redundancy payments”. 英国政府. 2021年10月閲覧。
  6. ^ a b c d redundancy”. ニュージーランド雇用庁. 2021年11月閲覧。
  7. ^ 労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律第27条
  8. ^ 「正社員をなくしましょう」竹中氏が発言 暴論なのか、正論なのか、波紋広げる”. J-CAST ニュース (2015年1月5日). 2023年9月27日閲覧。
  9. ^ 「正社員をなくしましょう」竹中氏が発言 暴論なのか、正論なのか、波紋広げる”. J-CAST ニュース (2015年1月5日). 2023年9月27日閲覧。


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