山崎蒸溜所
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製品
山崎の原酒はサントリー各種のブレンデッドウイスキーに使われるほか、シングルモルトウイスキーとしてもリリースされている[65]。
1984年に初のシングルモルトとして「ピュアモルト山崎」(のちの「山崎12年」)をリリースすると[2][66]、1992年に「山崎18年」を、1998年に「山崎25年」を[39]、2012年に「山崎」(ノンエイジ、熟成年数表記なし)を発売している[44]。
現行のラインナップ
山崎
2012年に5月29日に発売された製品で、熟成年数表記のないノンエイジ製品である[67]。ハイボールをきっかけにウイスキーを飲み始めた人にとって「飲みやすくて理屈抜きに美味しいもの」を作ろうというコンセプトのもとに開発されており、2012年当時のサントリーチーフブレンダーである福與伸二は、ワイン樽で後熟することによって出てくる甘みを活かしたブレンドになっていると述べている[67]。
評論家の土屋守は山崎ノンエイジを下記のようにテイスティングしている。
山崎12年
稼働から60周年となる1984年3月14日、「ピュアモルト山崎」として初めてリリースされた[2][41]。リリース当初は年数表記がなかったが、1986年以降は「12年」と記載されるようになる[40]。開発を担当したのは鳥井信治郎の次男・佐治敬三であり[2]、ラベルの「山崎」の文字は佐治敬三自らが揮毫したものである[70]。土屋守は「山崎らしい上品で華のある香りや、しっかりしたボディと熟成感」「多彩な原酒が調和する「バランス」を重視したブレンド」と評している[2]。バーテンダーの谷嶋元宏は「上品でバランスよく飲みやすい。心地よい香りを楽しめる。加水しても崩れないが、できればストレートで。」と評価している[71]。評論家のマイケル・ジャクソンは「軽くシロップのようで、はちみつのフレーバーがして、香水のようで、フィニッシュにクッキーのようなドライさをともなう」と評価している[72]。
山崎18年
1992年に発売[39]。18年以上熟成させたシェリー樽原酒を中心にブレンドされている[73]。評論家のデイヴ・ブルームは本品の風味を「コクがありまろやか」「森の中に深く分け入る旅」と評している[74]。評論家のチャールズ・マクリーンは「熟成を重ねるにつれ、樽材の影響がより強く出るため、若い「山崎」のエステリーな香りに代わって、レーズンやイチゴジャム、アンズや干し柿のような香りが顕著になる」と述べている[75]。
山崎25年
1998年に発売[39]。25年以上熟成させたミズナラ樽、スパニッシュオーク樽、アメリカンオーク樽原酒をブレンドしている[73]。年間数千本の限定商品である[73]。評論家のドミニク・ロスクロウは「しっかりと磨き込まれた埃っぽくて古いオフィスのようなウイスキー」「オークとスパイスのバランスが秀逸」と評している[76]。
主な限定品
山崎50年
2005年に初めて数量限定で発売され、その後も2007年、2011年に発売されている[77]。3回のリリースいずれも定価は100万円[77]。自家製麦した国産大麦を日本初のポットスチルで蒸留しミズナラ樽で熟成させた原酒を使用しており、栗林幸吉は「香木の伽羅香とビターチョコとウッディの深い余韻が楽しめる」と評している[78]。その希少性からオークション市場では高値がついており、2016年には850万円、2018年には香港で行われたサザビーズのオークションで29万8879ドル(当時のレートで約3,270万円)で落札されている[79][80]。これはジャパニーズ・ウイスキーの落札額としては当時の史上最高額であった[80]。
山崎55年
2020年に100本限定で発売[81]。全数が抽選販売で、定価は300万円[81]。1964年蒸留のホワイトオーク樽原酒や1960年蒸留のミズナラ樽原酒などで構成されている[81]。山崎50年と同様に希少性が高く、2020年に香港のオークションでおよそ8,500万円で落札されたほか、2022年にはニューヨークのオークションで60万ドル(当時のレートで約8,100万円)で落札されている[82]。
使用されているブレンデッドウイスキー
- 響[83]
- サントリー角瓶[84]
- 碧:日本の山崎、白州、スコットランドのアードモア、グレンギリー、アイルランドのクーリー、カナダのアルバータ、アメリカのジムビームをブレンドしている[85][86]。
注釈
- ^ 1923年は蒸留所の建設が始まった年であり、蒸留を開始したのは1924年である[3]。
- ^ ヘルメスウイスキーはラベルに「ヘルメス・オールド・スコッチ・ウイスキー」とあったが、実際にはウイスキーの定義に当てはまらない模造品であり、もちろん「オールド」でも「スコッチ」でもなかった[6]。
- ^ 山崎の気候は年月を経て変化しており、2018年時点では霧の立つ日は月平均1 – 2日ほどである[17]。
- ^ ロングモーンは竹鶴が1919年にウイスキーの製造実習を受けた蒸留所である[20]。
- ^ 輸入品スコッチウイスキーのジョニーウォーカー黒ラベルが5円であった[24]。
- ^ その後の竹鶴は北海道に渡り大日本果汁(のちのニッカウヰスキー)を創業し[28]、1936年に余市蒸溜所でのウイスキーづくりを開始した[29]。
- ^ 供給は1949年まで続いた[35]。
- ^ リリース当初は年数表記がなかったが、1986年からは12年と記載されるようになった[40]。
- ^ 創業初期の写真では木製のウォッシュバックのようなものが使われていたように見えるが、それを裏付ける記録はない[22]。
- ^ 採点は100点満点で、75点を平均点としている[68]。
出典
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