基底 (位相空間論)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/12/06 08:38 UTC 版)
荷重と指標
(Engelking 1977, pp. 12, 127--128) で確立された概念について述べる。位相空間 X は固定して考える。X の荷重 (weight) w(X) を開基の最小濃度とし、ネットワーク荷重 (network weight) nw(X) をネットワークの最小濃度、X の点 x における点指標 (character of a point) χ(x, X) は x の近傍基の最小濃度、および X の指標 (character) χ(X) を sup{χ(x, X) : x ∈ X} で定める。
ここで、ネットワークとは、集合族 であって、各点 x と x の開近傍 U に対して適当な を選べば x ∈ B ⊆ U とすることができるものを言う。
指標や荷重を計算することが有用な点は、どのような種類の基や局所基が存在しうるかを知ることができるということである。以下のような事実が成り立つ:
- 明らかに nw(X) ≤ w(X) が成り立つ。
- X が離散的ならば w(X) = nw(X) = |X| が成り立つ。
- X がハウスドルフならば、nw(X) が有限となる必要十分条件は X が有限離散空間となることである。
- B が X の開基ならば、位数が |B′| = w(X) となるような開基 B′ ⊆ B が存在する。
- N が x ∈ X の近傍基ならば、位数が |N′| = χ(x, X) を満たす近傍基 N′ ⊆ N が存在する。
- f: X → Y を連続写像とすると、nw(Y) ≤ w(X) が成り立つ。これは単に、X の各開基 B に対して Y-ネットワーク f−1B := {f−1(U) : U ∈ B} を考えればよい。
- (X, τ) がハウスドルフならば、より弱いハウスドルフ位相 (X, τ′) で w(X, τ′) ≤ nw(X, τ) となるものが取れる。より強く、X がさらにコンパクトならば τ′ = τ と取れて、最初の事実と合わせて nw(X) = w(X) を得る。
- f: X → Y がコンパクト距離化可能空間からハウスドルフ空間への連続な全射ならば Y はコンパクト距離化可能である。
最後に挙げた事実は、像 f(X) はコンパクトハウスドルフ、従って nw(f(X) = w(f(X)) ≤ w(X) ≤ ℵ0 となること(コンパクト距離化可能空間は第二可算である必要がある)と、コンパクトハウスドルフ空間が距離化可能であるのはちょうどそれが第二可算であるときであるという事実とから従う。 (このことを応用して、例えば、ハウスドルフ空間における任意の道 (path) はコンパクト距離化可能であることなどがわかる)。
開集合の昇鎖
上記の概念を用いて、適当な超限基数 κ に対して w(X) ≤ κ であるものと仮定する。このとき、長さが κ+ 以上になる開集合の真の増加列は存在しない(同じことだが、閉集合の真の増加列も存在しない)。
これを(選択公理抜きに)確認するには、開基 (Uξ)ξ∈κ を固定して、結論に反して (per contra) (Vξ)ξ∈κ+ が開集合の真の増加列であるものと仮定する。これは 任意の α < κ+ に対して Vα ∖ ∪ξ<α Vξ が空でないという意味である。x ∈ Vα ∖ ∪ξ<α Vξ をとると、先ほど固定した基底を活用して適当な Uγ で x ∈ Uγ ⊆ Vα となるものを見つけることができる。この方法で写像 f: κ+ → κ を、各 α を Uγ ⊂ Vα かつ Uγ が Vα ∖ ∪ξ<α Vξ と交わりを持つような最小の γ へ写すものとして矛盾なく定義できる。この写像が単射であることが確かめられる(さもなくば、α < β で f(α) = f(β) = γ となるものが存在し、そこからさらに Uγ ⊆ Vα かつ Vβ ∖ ∪ξ<α ⊆ Vβ ∖ Vα と交わることが従うが、これは矛盾である)が、これは κ+ ≤ κ を示すこととなり矛盾である。
- 基底 (位相空間論)のページへのリンク