吹き矢 使用方法

吹き矢

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/05/20 09:35 UTC 版)

使用方法

一般には、息を吹き込んで使用するため、吹き矢を装填した吹き筒の本体の片方をに宛がって使用する。照準は筒の先端を口に宛がうことから、概ねその誤差を経験によって補正する必要はあるが、至近距離でも一定の命中精度ではない。

動物の捕獲

発射速度は肺活量と胸や腹の筋力に左右され、その多くは狩りでも小動物などが精々である。筒の長さを延長すると、それだけ初速を稼ぐことができるが筒容積も増して、より多くの肺活量を必要とする。

麻酔・毒の使用

より大型の動物を対象とした狩猟に用いる際には、針の先に毒を塗布して利用される。これにより獲物を確実にしとめることができる。なお毒の種類によっては外傷から注入されると麻痺ないし致死させるものであっても、人間が食肉として経口摂取しても問題ないものもあり、大型の動物を捕らえる狩猟道具として使われた地域では、そのような毒物利用の文化が発達している。経口摂取で問題を起こさない毒物が入手できなかった地域では、折角の獲物を毒物で汚染させてしまう狩猟用の吹き矢自体はそれほど発達しなかったが、食肉を得る訳ではない遠隔からの麻酔や暗殺などといった用途では利用された。また、こういった毒矢としての利用から、特定の動物種の名に吹き矢が冠されている例もあり、モウドクフキヤガエルのように毒をもつカエルのいくつかは、吹き矢や毒矢に利用されてきた。

使用される毒物に関しては、弓矢による使用(いわゆる毒矢)と合わせアメリカ先住民族(チェロキー族)の使用したクラーレd-ツボクラリン)が代表的だが、東インドの未開民族の間ではストリキニーネが、古代のガリア人が使用したヘリボー(ヴェラトリンを主成分とする有毒植物)などが知られている[4]。中でも、筋弛緩剤の一種であるクラーレは適切な量を用いれば打ち込まれた動物は四肢の力がなくなるが、対象を殺さずにすむ(ただし、もし倒れた場合、倒れ方によっては重要な臓器を圧迫して死亡するという事故は起こりえる)。また、クラーレは代謝されて無害化されるので獲物を食用にしても差し支えない。

現代では近距離からの動物の捕獲のため、麻酔薬の入った注射器を矢としたものが獣医師などに利用されている。

競技・玩具

スポーツ用品や玩具としての吹き矢もあり、スポーツ吹き矢では専用の器具を使用するが、これらスポーツ用品であり狩猟具ではないため、矢は軽く作られ針の部分が短く、的に刺さる画鋲程度のものでしかない。また玩具としては安全性の観点から針の代わりに吸盤がついている製品もある。このような安全性に配慮した吹き矢で、矢を吹いて、当たった位置により命中精度や得点を競う競技である。

国内の吹矢団体の多くは、安全性を十分に考慮し先端が尖っていない矢を使っているが外国の吹矢団体は全て尖っている矢を用いているが問題はない。ダーツの的についているワイヤリングと同じ形のリングを用いて競技をする場合フラットダーツでは出来ない。さらに安全面を考慮した特許商品である吸盤式の矢と的、ビンゴゲーム式の的がある。特に介護施設や障害者団体、老人会子供会、教育関係の団体を中心に全国に行われている。

近世の玩具として、「吹矢人形」が存在する。これは田中久重が発明したからくり人形の記録『久重の手記によるからくり図案』の中にも記述されているもので、人形が数本の矢を順次に筒中から吹き出し、的を倒していく装置である。人の息でなくとも、いわゆる蒸気の力を用いることでも、吹き矢を射出・作動させることは可能であり、溜めた空気圧を開放させるという点は気砲の原理とも似る(気砲の場合、手動であり、熱エネルギーを必要としない)。自動吹き矢はあくまで娯楽文化としての発明(そういう名目でないと、幕府に目をつけられる)であって、兵器としては利用されなかった(からくり#からくりの種類の「からくり的」も参照)。


  1. ^ クリストファー・ロイド 訳・野中香方子 『137億年の物語 宇宙が始まってから今日までの全歴史』 文芸春秋 第18刷2014年 p.261.
  2. ^ 日本放送協会. ““最初の日本人” その「親戚」がタイの密林にいた | NHK”. NHK NEWS WEB. 2023年12月7日閲覧。
  3. ^ 『角川古語辞典 改訂版』 改訂148版1971年(吹き矢の頁)
  4. ^ 澁澤龍彦『毒薬の手帖』河出書房新社河出文庫〉、1984年、246頁。ISBN 4-309-40063-9 


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