リー代数
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/11/29 09:37 UTC 版)
構造論と分類
リー代数は、ある程度、分類することが可能である。特に、このことはリー群の分類に応用される。
可換性、冪零性、可解性
導来部分群のことばで定義される、可換群、冪零群、可解群と同様に、可換、冪零、可解リー代数を定義することができる。
リー代数 が可換 (abelian) であるとは、リーブラケットが消えていること、すなわち、 の全ての元 x と y' に対して [x, y] = 0 となることをいう。可換リー代数は、ベクトル空間 やトーラス のような、可換連結リー群に対応していて、すべて の形である、つまり自明なリーブラケットをもつ n 次元ベクトル空間である。
リー代数のより一般的なクラスは、与えられた長さのすべての交換子が消えることによって定義される。リー代数 が、冪零 (nilpotent) とは、降中心列
が有限回でゼロに達することを言う。エンゲルの定理により、リー代数が冪零であることと、 の全ての元 u に対し、随伴自己準同型
が冪零であることは同値である。
さらにより一般的なものとして、リー代数 が可解 (solvable) であるとは、導来列
が有限回でゼロに達することを言う。
全ての有限次元リー代数は、根基 (radical) と呼ばれる一意的な極大可解イデアルを持つ。リー対応の下、連結なべき零リー群、連結な可解リー群はそれぞれ、べき零、可解リー代数に対応する。
単純性と半単純性
リー代数が単純 (simple) とは、非自明なイデアルを持たず、可換でないときを言う。リー代数 が半単純とは、根基がゼロであるときを言う。同じことであるが、 が半単純とは、ゼロでない可換イデアルを持たないときを言う。特に、単純リー代数は半単純である。逆に、任意の半単純リー代数は、その極小イデアルの直和であることが証明できる。この極小イデアルは、自然に決定される単純リー代数である。
リー代数の半単純性の概念は、リー代数の表現の完全可約性(半単純性)と密接に関連している。基礎体 F の標数が 0 のとき、半単純リー代数の任意の有限次元表現は半単純(つまり、既約表現の直和)である。一般に、リー代数が簡約(reductive)とは、随伴表現が半単純であるときを言う。したがって、半単純リー代数は簡約である。
カルタンの判定条件
カルタンの判定条件は、リー代数がべき零、可解、あるいは半単純であるための判定条件を与える。この判定条件は、キリング形式の考え方を基礎としている。キリング形式とは、
で定義された、 上の対称双線型形式である。ここで tr は線型写像のトレースを表す。リー代数 が半単純であることと、キリング形式が非退化であることは同値である[6]。リー代数 が可解であることと、 であることとは同値である。
分類
レヴィ分解は、任意のリー代数を、可解な根基と半単純リー代数の半直和として、ほぼ標準的に表す。さらに、代数的閉体上の半単純リー代数は、ルート系を通して完全に分類されている。しかし、可解リー代数の分類は「手に負えない」問題であり、一般には完成できない[要説明]。
注釈
出典
- ^ Humphreys 1972, p. 1.
- ^ Jacobson 1962, p. 28.
- ^ Jacobson 1962, p. 18.
- ^ Jacobson 1962, Ch. VI
- ^ Humphreys p. 2
- ^ Humphreys 1972, p. 22.
- ^ Beltita 2005, pg. 75
- ^ 随伴性は、Hofman & Morris (2007) (e.g., page 130) においてより一般的な文脈で議論されるが、例えば Bourbaki (1989) Theorem 1 of page 305 and Theorem 3 of page 310 からすぐ出る結果でもある。
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