リュディア語 リュディア語の概要

リュディア語

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/06/18 04:01 UTC 版)

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リュディア語
話される国 リュディア
民族 リュディア人英語版
話者数
言語系統
表記体系 リュディア文字
言語コード
ISO 639-3 xld
Linguist List xld
Glottolog lydi1241  Lydian[1]
 
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アナトリア語派内部でリュディア語の占める位置は独特で、かつ問題がある。第1に、言語を理解するための物証がいまだに限定的であること、第2に、ほかのアナトリア諸語と異なる多くの特徴をこの言語が持っていることである[2]。これらの特徴が前リュディア語だけに起きた二次的な発達なのか、ほかのアナトリア語派の言語が失った特徴をリュディア語が維持しているのかは、今のところ不明である[3]。より充分な知識が得られないかぎり、アナトリア語派におけるリュディア語の位置づけは「特殊」とせざるを得ない。

リュディア語は、紀元前8世紀末から紀元前7世紀にかけての落書きや硬貨の刻文にはじまり、紀元前3世紀までの資料が残るが、よく保存された、ある程度長い碑文となると、紀元前5-4世紀のアケメネス朝ペルシア支配下のものに限られている。したがって、リュディア語の資料は実質的にリュキア語と同時代に属する。

現存するリュディア語の資料は100あまりがあり、いくつかを除いてリュディアの首都であるサルディスおよびその近郊で発見された。しかし、碑文のうち、数語を越える長さをもち、かつ比較的完全な形で残っているものは30未満に過ぎない。碑文の大半は石に刻まれており、内容的には墓碑であるが、いくつかは勅令であり、6つはおそらく韻文であって、強勢による韻律を持ち、詩行の末で母音韻を踏む。墓碑銘は典型的には eś wãnaś(この墓)という語ではじまる。ほかに短い落書きがある。

ストラボンによると、彼の時代(紀元前1世紀)にリュディア語はリュディア本土から失われていたが、アナトリア西南部のキビュラ(今のギョルヒサル)のリュディア植民地で、町を作った人々の末裔によってまだ話されていたという[4]

表記体系

リュディア語の文字は厳密なアルファベットであり、ギリシア語またはアナトリア西部の言語の文字に由来するか関連するが、正確な関連性は今もよくわかっていない。古い時代の文章は左横書きと右横書きの両方がある。新しいものは右横書きのみである。単語の区切りはあったりなかったりする。ギリシア文字と関係するアルファベットで書かれた100を越えるリュディア語のテクストは、主に古代の首都であるサルディスで発見された。その中には勅令や墓碑銘などを含み、韻文になっているものもある。大部分は紀元前5-4世紀にかけて書かれたものだが、いくつかは紀元前7世紀にさかのぼる[5]

音声

リュディア語には7つの母音がある。a, e, i, o, u の5母音と、鼻音の前に現れる鼻母音 ã, である。ãan と見なせる。ã の違いについては議論がある。 は [e] の鼻母音ではなかったらしい。e, o, ã, ẽ の4つは強勢のある音節においてのみ出現する。yi または e の、おそらく強勢がない場合の異音を表すために稀に用いられる。

子音のうちいくつかは音価がはっきりしない。破裂音では無声と有声を音韻的に区別しない。/p t k/ は、鼻音とおそらく /r/ の前で有声化した。

リュディア語は子音結合が多いという特徴をもつ。これは、語末の短母音が消失したことと、はげしく語中音消失が起きたことによる。このような子音連続において、書かれていないが実際には [ə] があったかもしれない。

唇音 歯音
歯茎音
後部歯茎音
硬口蓋音
軟口蓋音
唇音化軟口蓋音
破裂音 b [p] t k q [kʷ]
鼻音 m n ν [ɲ~ŋ?]
破擦音 τ [ts~tʃ?]
c [dz~dʒ?]
摩擦音 f ś [s] s [ʃ~ç?]
v d [z~ð?]
流音 l r λ [ʎ]

  1. ^ Hammarström, Harald; Forkel, Robert; Haspelmath, Martin et al., eds (2016). “Lydian”. Glottolog 2.7. Jena: Max Planck Institute for the Science of Human History. http://glottolog.org/resource/languoid/id/lydi1241 
  2. ^ Craig Melchert (2004), Cambridge Encyclopedia of the World's Ancient Languages: Lydian, Cambridge University Press, pp. 601-607, http://www.linguistics.ucla.edu/people/Melchert/webpage/lydian.pdf 
  3. ^ Ivo Hajnal (2001), Lydian: Late-Hittite or Neo-Luwian?, University of Innsbruck, オリジナルの2016年3月4日時点におけるアーカイブ。, https://web.archive.org/web/20160304100753/http://sprawi.uibk.ac.at/files/hajnal/vortrag_lydisch_engl.pdf 
  4. ^ N. P. Milner (1998). An Epigraphical Survey in the Kibyra-Olbasa Region conducted by A S Hall (Monograph). British Institute of Archaeology at Ankara 
  5. ^ Anatolian languages, Encyclopaedia Britannica, http://www.britannica.com/EBchecked/topic/22939/Anatolian-languages/74580/Lydian 
  6. ^ Plutarch - Frank Cole Babbitt (2005). Moralia. 4. Kessinger Publishing. p. 235. ISBN 978-1-4179-0500-3 
  7. ^ tyrant, Online Etymology Dictionary, http://www.etymonline.com/index.php?term=tyrant 
  8. ^ Will Durant; Ariel Durant (1997). The story of civilization. 2. Simon & Schuster. p. 122. ISBN 978-1-56731-013-9 
  9. ^ Melchert, Craig, Greek mólybdos as a Loanword from Lydian, Chapel Hill: University of North Carolina, http://www.linguistics.ucla.edu/people/Melchert/webpage/molybdos.pdf 2011年4月23日閲覧。 


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