ラブコメディ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/07/16 06:36 UTC 版)
概要
作品のジャンルの1つであり、恋愛を主題にしたコメディ(喜劇)要素を持つ明るい作風のストーリー作品の日本での総称。漫画、アニメ、小説、演劇、映画、ドラマなど多岐にわたる分野でラブコメディものがあり、ラブコメと略されて呼称されることが多い。日本のラブコメは若者のための若者が主人公の物語であり、例外はあるもののその傾向は否定できないものである[4]。
和製英語として人口に膾炙している「ラブコメ」という言葉は、ロマンティック・コメディに対応する日本語とされている[5][6][7]。世界的にロマンティック・コメディの歴史は長くシェークスピア(1564年 - 1616年)の時代から存在しており、現代でも様々な創作物で物語がさかんに作られている定番ジャンルであるが、瀬川裕司によればロマンティックコメディ映画が「ロマンス映画とコメディ映画の共通集合」あるいは「ロマンスが重要な意味を持つ喜劇映画」であるに対し、日本のラブコメは「若者向けの、若者が主人公の物語」であるとして、別物であるとする[8][7]。表智之によれば、ラブコメは「恋愛を主題としながらも、その語り口はコメディ混じりで軽いことを特徴」とし、「宙ぶらりんな状況が文字通り一種のサスペンス(=宙吊り)を生んで物語を盛り上げると同時に、いざ愛を告げて付き合い始めた後の諸々の困難を回避し続けることで、モラトリアムの甘い夢に読者をひたらせてくれる」ことに特徴があるとする[9][10]。関係性に決着がつかず宙ぶらりんの状況であり続けるという定義は概ね認知されているものであり、ロマンティック・コメディとラブコメはまったく違うものであると玉井建也は述べる[10]。
日本では主に漫画やアニメといった媒体で恋愛を主題にした作品が安定的に人気を得ており、1970年代から「ラブコメディ」「ラブコメ」という言葉が用いられるようになった。
日本でいうラブコメディはシチュエーション・コメディの要素を積極的に取り込み、現実にありそうな日常の設定の一部分を極端に逸脱した状況を仮想設定した上で、主人公と、恋仲になるヒロインとの恋愛関係に焦点をあて、毎回異なった状況下で周囲を巻き込んだ事件や混乱が繰り返されるドタバタ喜劇(スラップスティック・コメディ)的要素の強い作品が主流を占める。「コメディ」(喜劇)とあるように本来ラブコメディと称される作品はギャグ的要素の強いスラップスティックコメディやシチュエーションコメディをベースとする作品を指していたが、実際には様々な他のジャンルとかけ合わせられたり(#分類の曖昧性)、ギャグ・コメディ要素は薄くても明るくストーリー性ある青春活劇をベースとする作品まで、幅広く「ラブコメディ」と呼称される。
恋愛や明るさ・ハッピーエンドという要素を含んでいるという点では共通しており、少しでもこれらの要素が含まれていればラブコメディの範疇に含める場合もある。コメディ要素の強めなラブコメディには、パロディとの親和性も高いものもある。
- ^ 小学館デジタル大辞泉「ラブコメディ」
- ^ 精選版 日本国語大辞典「ラブコメディ」
- ^ 小学館デジタル大辞泉「ラブコメ」
- ^ 玉井建也 2022, p. 7.
- ^ 大月隆寛 2002, p. 168.
- ^ 日高利泰「ラブコメの条件-用語法と概念の成立に関わる歴史 的考察」(『マンガ研究』22号2016年)87
- ^ a b 玉井建也 2022, p. 1.
- ^ 瀬川裕司『映画講義ロマンティック・コメディ』平凡社新書、2020年、12
- ^ 乳房の文化論.
- ^ a b 玉井建也 2022, p. 1-2.
- ^ 「少年ビッグコミック」1980年11月14日号など複数号 小学館
- ^ 「まつもと泉は「ラブコメ漫画の開拓者」だったーー永遠の名作『きまぐれオレンジ☆ロード』の功績」Real Sound 2020年10月15日
- ^ a b 日下みどり 1998.
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