ライカ (犬)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/02/11 07:02 UTC 版)
名前の混乱
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ライカ
ライカには複数の意味がある。
- 西側でロシアン・ライカとして知られている犬種。
- ロシア語版のウィキペディアではЛайкаは曖昧さ回避となっており、ЛайкиはЛайкаの複数形である。これがロシア語の「ライカ犬」の事で、英語版記事の犬種のLaikaによれば、ロシア語ではライカとは1つの犬種ではなく、また英語でロシアン・ライカ(Russian Laika)として知られている数種にも限定されず、北部ロシアで飼われている猟犬のすべてを指す。広義ではツンドラ地帯で犬ぞりに用いられる犬も含む。例えばシベリアン・ハスキーはヤクート・ライカ(якутская лайка)、サモエドはサモエド・ライカとも呼ばれる。なおЛайкаにはセーム革という意味もあるが、ここでは関係ない。
- ソ連の宇宙犬で最初に軌道飛行をした犬(個体)の名前。
クドリャフカ
打ち上げ当初、この歴史的なイヌの名前に関する報道はかなり混乱していたが、打ち上げ直後の紙面では「クドリャフカ」という名のスピッツなどと伝えられている[2]。
「クドリャフカ」(Кудрявка, Kudryavka)の語意は「巻き毛ちゃん」(英訳で"Little Curly")であり、また、この報道においては「巻き尻尾のワンちゃん」という意味を含んでいる。
打ち上げ直後に世界の報道は錯綜し、世界各国で犬の性別すらわからない状態が続いた。当時アメリカ(ニューヨークタイムズ)で真っ先に「(犬種としての)ライカ犬(個体名称は不明)」と発表されたが、数日後にAP通信がソ連からの情報として「犬の本当の名前はライカである」と報じた。
1958年ソ連文化省編・朝日新聞社翻訳・発行の『スプートニク-ソ連の人工衛星のすべて』などではライカの名を使用している。
ソ連およびロシアにおける犬の呼び名
打ち上げ以降のソ連のニュース映像[3]に登場する新聞の見出しならびに1958年ソ連文化省編(朝日新聞社翻訳)の『スプートニク-ソ連の人工衛星のすべて』では最初に宇宙に旅立った犬の名前について、以下のように記している。
「 | 人工衛星には実験用動物(ライカと呼ばれる犬)をのせた[4]。
第二号衛星にのったライカは小型犬で目方は約5キログラムであった。ライカの系統は残念ながら明らかでない。ライカの性格は粘着質であった。飼育室の中にいても、同僚犬たちと争ったことがなかった[5]。 |
」 |
ソ連国内の当時の科学アカデミー会員などの打ち上げ関係者情報では犬を「クドリャフカ」としているが、打ち上げ直後の報道混乱期以降、報道の現場では世界的に「ライカ(ないしはライカ犬)」と呼称しており、以降ソ連国内関係機関を含めてライカという名前が使われるようになった。現在においてはロシア国内の記念碑にも「Лайка」と書かれている。
ムトニク
これは mutt(雑種犬)と Sputnik(スプートニク)による、当時のアメリカのマスコミによる独自の造語である。
ムトニクが最初の宇宙犬の名前であることの意義については、1957年12月6日に打ち上げ失敗したヴァンガードTV3に対する当時のマスコミの対応についての『レッドムーン・ショック』の記述を参照。
「 | 「おお、フロップニク(スプートニクのなりそこない)よ」とロンドンの『デイリー・ヘラルド』紙は嘲笑した。ドイツの新聞は、遅いスプートニクという意味の「シュペトニク」と名づけてからかった。……ほかにも、カプートニク、スプラットニク、ストールニク、スパッターニク、ダドニク、パフィニク、ウープスニク、グーフィーニク(ポンコツスプートニク、ぐしゃぐしゃスプートニク、エンスト、おんぼろ、大ぼら、まぬけ……)等々、好き放題の造語が国内外の見出しをでかでかと飾り[6] | 」 |
犬種に関する臆測
「ソ連は世界初の栄誉を「国産固有種の犬」で飾りたかったがために犬種偽装報道をしていた」とする説がある。ただしソ連文化省の解説を翻訳した文献によると、ソ連文化省は1958年の時点で「ライカの系統は残念ながら明らかでない」と述べている[5]。犬種偽装説は例えばジョアン・フォンクベルタ著の『スプートニク』でも見ることができる。なお、ジョアン・フォンクベルタ著の『スプートニク』はフィクション作品とされているが[7]、該当部分から引用する。
「 | 宇宙飛行ではいつものことだが、政治的=技術的な二重の要素が考慮された。(1) 全世界の、特に子供達を夢中にさせるような、かわいくて写真うつりのいい犬を選ぶこと。そしてそれはロシア原産種でなくてはならない[8]。 | 」 |
- ^ 「ライカ犬」搭乗の人工衛星「スプートニク2号」打ち上げから50年(2007年10月31日 AFP)
- ^ 『宇宙開発の50年』武部俊一著、朝日新聞社、2007年、p.8
- ^ Russian Sputnik 2 film(ロシア語) - YouTube
- ^ 『スプートニク』ソ連の人工衛星のすべて、ソ連文化省編、朝日新聞社訳、朝日新聞社、1958年、p.139
- ^ a b 『スプートニク』ソ連の人工衛星のすべて、ソ連文化省編、朝日新聞社訳、朝日新聞社、1958年、p.140
- ^ 『レッドムーン・ショック』マシュー・ブレジンスキー著、野中香方子訳、日本放送出版協会、2009年、p. 367
- ^ 『スプートニク』ジョアン・フォンクベルタ著、スプートニク協会著、管啓次郎訳、筑摩書房、1999年、p.204
「本書『スプートニク』は解説を除き、すべて作者ジョアン・フォンクベルタによるフィクション作品です」 - ^ 『スプートニク』ジョアン・フォンクベルタ著、スプートニク協会著、管啓次郎訳、筑摩書房 1999年、p148
- ^ Научное обоснование возможности космических полетов человека и их медико-биологическая подготовка(ロシア語)
- ^ 『スプートニク』ソ連の人工衛星のすべて、ソ連文化省編、朝日新聞社訳、朝日新聞社、1958年、p.141
ライカ (犬種)
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