ハマダラカ 病気の媒介者としてのハマダラカ

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ハマダラカ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/09/03 08:33 UTC 版)

病気の媒介者としてのハマダラカ

ハマダラカの中には、病気の寄生をほとんど(或いは全く)媒介しないため、マラリアの感染源とならない種もある。研究の際には、マラリア原虫の寄生に抵抗性を持つガンビエハマダラカの変種を用いることがある。この変種には、ハマダラカの腹に侵入したマラリア原虫を排除する免疫反応があり[8]、研究者がその遺伝的メカニズムを研究している。将来的には、遺伝子を改変したマラリア原虫抵抗性のハマダラカが野生種と置き換わることによって、マラリアの媒介が制限されることが期待されている。

マラリアの伝染及び制御

ハマダラカの生態や行動が明らかになるにつれ、マラリアがどのように伝染されるのか、またその伝染はどのようにすれば制御できるかについての知見が深まっていった。ハマダラカがマラリアを媒介する要因としては、ハマダラカがマラリア原虫に感染しやすいということがある。

2007年12月21日、ベンガル湾に生息するナマコの1種であるグミから、溶血性のレクチンである CEL-III が発見され、その遺伝子を組み込んだステフェンスハマダラカは、マラリアの寄生に対し抵抗性を持つことが明らかとなった[9]。このことは、将来的に遺伝子を改変したハマダラカが野生種に置き換わることで、マラリアの蔓延を食い止められる可能性を暗に示している。しかし、遺伝子改変動物を自然界に放す科学的、倫理的な問題も多いため、それを実現することには困難が伴う。

寿命とマラリア原虫を保有する確率

ハマダラカの行動における重要な点として、ハマダラカはヒトやウシの血を好んで栄養源とすることが挙げられる。ヒト寄生性のハマダラカは、よりマラリアの媒介者となりやすい。ほとんどのハマダラカは、ヒトやウシのみに栄養源を頼っていない。しかし、アフリカでマラリアの媒介者となっているガンビエハマダラカや A. funestus はとりわけヒト寄生性が強いため、より効果的なマラリアの媒介者となっている。

マラリア原虫がハマダラカにとりこまれると、ヒトに感染する前にハマダラカ内で繁殖を進める必要がある。ハマダラカ内で繁殖するのにかかる期間(潜伏期間)はおよそ10–21日である(寄生した種や温度によって異なる)。もし寄主であるハマダラカの寿命が、潜伏期間より短ければ、ヒトやウシにマラリアを感染させることが出来ない。

野外でハマダラカの寿命を正確に測定することは困難であるが、一日の生存率(一日に観察された成虫の内、翌日まで生存した割合)を測定することによる間接的な生存期間の推定は、ハマダラカの何種類かで行われている。例えばタンザニアのガンビエハマダラカは、一日の生存率が77%から84%である[10]ハマダラカの成虫の生存率は一定であるため、この生存率から、10%以下のガンビエハマダラカのメスだけが、マラリア原虫の潜伏期間である2週間以上生存していることが推測される。もし一日の生存率が90%に上昇すれば、20%以上のハマダラカのメスが、マラリア原虫の潜伏期間である2週間以上生存していることになる。


  1. ^ ナチス、マラリア蚊の兵器使用を計画?ナショナルジオグラフィック公式サイト
  2. ^ Anopheles at dictionary.com.
  3. ^ a b Calvo E, Pham VM, Marinotti O, Andersen JF, Ribeiro JM. (2009) The salivary gland transcriptome of the neotropical malaria vector Anopheles darlingi reveals accelerated evolution of genes relevant to hematophagy. BMC Genomics. 10(1):57
  4. ^ デング熱媒介蚊 ヒトスジシマカ”. 厚生労働省. 2019年12月21日閲覧。
  5. ^ 花岡和則、「生物コーナー 蚊の脳(卵巣成熟)ホルモン」 化学と生物 1979年 17巻 9号 p.603-605, doi:10.1271/kagakutoseibutsu1962.17.603, NAID 40000426627
  6. ^ 佐々學、高橋弘、淺沼靖、北海道の蚊に關する1947年度の知見 日本細菌学雑誌 1948年 3巻 2号 p.53-54, doi:10.3412/jsb.3.53
  7. ^ CDC内のハマダラカのページ
  8. ^ 横山卓也、青沼宏佳、嘉糠洋陸、「病原体を運ぶ蚊の免疫システム」 化学と生物 2012年 50巻 3号 p.196-202, doi:10.1271/kagakutoseibutsu.50.196
  9. ^ Yoshida S, Shimada Y, Kondoh D, et al. (2007). “Hemolytic C-type lectin CEL-III from sea cucumber expressed in transgenic mosquitoes impairs malaria parasite development”. PLoS Pathog. 3 (12): e192. doi:10.1371/journal.ppat.0030192. PMID 18159942. http://www.plospathogens.org/article/info:doi/10.1371/journal.ppat.0030192. 
  10. ^ (Charlwood et al., 1997, Survival And Infection Probabilities of Anthropophagic Anophelines From An Area of High Prevalence of Plasmodium falciparum in Humans, Bulletin of Entomological Research, 87, 445-453)


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