ティーガーII 概要

ティーガーII

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/06 16:57 UTC 版)

概要

設計概念はティーガーIを踏襲したが、車体には更なる重装甲、重武装が施され、パンターと同じように傾斜装甲が採用された。車体のデザインはティーガーIよりもむしろパンターの発展型といえるが、トランスミッションはティーガーIの流れを汲んだものである。

ティーガーIIの車台(シャーシ)は、ティーガーIIとほぼ併行して開発されていたヤークトティーガーにも、車台を延長して流用された。

装甲厚は、車体前面150 mm、車体側面80 mm、砲塔前面185 mm(ポルシェ)/180 mm(ヘンシェル)、砲塔側面80 mmであった。砲塔後部側面の装甲が貫徹され弾薬庫の弾薬が被弾誘爆する可能性を兵器局から指摘されたが、砲塔側面に予備履帯を装着することで問題を解決した。これらの重装甲により、ティーガーIIの重量は68.5トンから69.8トンにも及んだ。

主武装には、8.8 cm KwK 43/2 L/71戦車砲を装備した。この長砲身の主砲は、距離1,000 mで、PzGr. 39/43(APCBC-HE、被帽付徹甲榴弾)を使用した場合は165 mm厚、PzGr. 40/43(APCR、タングステン硬芯徹甲弾)では193 mm厚、の30度の傾斜鋼板を貫徹可能であった。(「PzGr.」とは、PanzerGranate(パンツァーグラナーテ)の略称で、「徹甲榴弾」を表す。)

ティーガーIIが戦線に投入された時点で、その重装甲および強力な主砲に対抗できる戦車は、事実上存在しなかった[1]。これは西部戦線で特に顕著で、イギリスアメリカ両軍は対抗しうる重戦車を保有していなかった。戦闘中にその前面装甲を貫通した事例の記録・証言が現在に至るまで発見されていない[2]ことが、本車の防御力の高さを証明している。防御陣地に配備されたティーガーIIはその重装甲の効果を遺憾なく発揮したが、機動性に乏しく攻勢時にはさほど威力を発揮できず、期待をかけていたヒトラーの失望を誘った。

ブダでの第503重戦車大隊のティーガー(1944年10月)

ティーガーIIの開発は大戦後半であり、試作車も含めて1943年9月から1945年3月の生産終了までに489両と比較的少数の生産に終わった。これは、生産工程が複雑であるのに加え、1944年9月から空爆により何度も工場が破壊され生産が中断したことが大きく、計画通りであれば更に650両をこえるティーガーIIが完成していたはずであったという。

他のドイツ戦車同様にティーガーIIはガソリンエンジンを装備したが、より軽いパンターやティーガーIに装備された物と同じであったため、慢性的に出力不足に悩まされた。本車は第二次世界大戦中に使用された他の重戦車同様、大量の燃料を消費した。これは補給が不足がちな大戦後半には運用上深刻な問題となった。戦闘で撃破されたティーガーIIよりも、燃料切れや故障で放棄された車両の方が多かったという[要出典]


注釈

  1. ^ 兵器試験第1課による試験結果報告によると、クロムウェル巡航戦車、チャーチル歩兵戦車、M4A2、M4A4、T-34-85の砲塔前面をいずれも距離3500m以上で、IS-2重戦車の砲塔前面を2300mで射貫可能であり、逆にそれらの砲では接射でもティーガーIIの砲塔・車体前面を抜けないと報告されている。
  2. ^ Google マップの日本語表記では“オグレンドゥフ”となっている[8]

出典

  1. ^ ドイツ軍・兵器試験第I課の1944年10月5日付け報告書における比較データより
  2. ^ トム・イェンツ/ヒラリー・ドイル「ケーニッヒスティーガー重戦車 1942-1945」(日本語版・2000年刊)[要ページ番号]
  3. ^ 『戦車メカニズム図鑑』上田信著、グランプリ出版、p55。
  4. ^ 『月刊PANZER』掲載のコラム記事より(スクラップしたページのため号数は不明)
  5. ^ Jentz and Doyle 1997, p.108.
  6. ^ Schneider 2005, p. 212.
  7. ^ Parada, George. “Tiger II Gallery 2”. Achtung Panzer!. 2009年10月20日閲覧。
  8. ^ Google マップ
  9. ^ Tiger II”. Schweizerisches Militärmuseum Full. 2009年10月20日閲覧。






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