チェーンソー メンテナンス

チェーンソー

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/24 04:50 UTC 版)

メンテナンス

販売店や修理店に依頼すれば、必要なメンテナンスを受けられる。簡単な点検、整備、部品交換などは使用者自身が行うこともできる。

  • 清掃:木を切ったときに発生するおがくずや、飛び散ったオイル、泥などの汚れを清掃する。
  • カッターの研ぎ(目立て):丸やすりでカッターを研ぐ。定期的な目立ては必須の作業であり、林業などでは休憩を兼ねて行うほど頻繁に行う。不適切に研がれたカッターは切れにくいばかりでなく、キックバックの危険性、燃料消費や振動を大きくするが、いくつものカッターをすべて適切に研ぐのは練習を積まなければ困難で、メーカーは補助工具を販売している。
  • 点検:破損や部品の脱落が発生していないか、摩耗したり劣化したりして交換を必要とする部品がないか点検する。
  • 調整:アイドリング回転数やチェーンオイル吐出量が最適になるよう調節する。
  • 修理:破損、摩耗、劣化した部品を交換する。
  • 給油:燃料やチェーンオイルを給油する。

安全対策

保護具を着用したチェンソー使用者。

チェンソーはそれ自体が高速で駆動する刃物であり、さらに騒音、振動、木くずを発生させる。また、チェンソーを使って木を切るときは、切った木によって使用者が傷つけられる可能性もある。これらの複合的な危険性から使用者を守るため、メーカーによって以下のような安全対策が提供されている。

個人用保護具

  • ヘルメット:枝等の飛来落下、転落、墜落から頭を保護するために着用する。また、森林内だけではなく転倒時に頭を守るためにも作業時は必ず着用する。
  • 顔面保護具:飛散するおがくずから顔を保護する。顔を覆うメッシュ製等のスクリーン。
  • 保護めがね:スクリーンを通り抜ける細かい塵から目を保護する。また、太陽光の眩しさ軽減のためUVカットが入ってるものを選ぶと良い。
  • イヤーマフ:エンジンの騒音によって難聴になるのを防ぐ。しかし、同僚等の緊急合図が聞こえづらくなるので合図の仕方に工夫すること。
  • 安全防護ズボン:ソーチェーンが当たった時に、ズボン内の特殊繊維がスプロケットに絡まりソーチェーンが止まる仕組みである。チャップスと言われる前掛け型もある。2019年8月1日以降、労働作業時は義務化され罰則の対象になっている。
  • チェンソーブーツ:足を保護する材質が入っている。

機械自体の対策

  • エンジンを止めるほどではないが、短時間チェンソーを使わないときにチェーンの回転を止める「チェーンブレーキ」を備えている。
  • チェンソーを使わないときにすぐにエンジンを止められるよう、スイッチを操作しやすい位置にレイアウトしている。
  • 白蝋病の原因となる振動を減らすため、エンジンとハンドルの間に振動を減衰するスプリングやゴムブッシュを備えている。日本の労働安全衛生法では、ハンドルにおける振動加速度を29.4m/s2(3G)以下とするよう定められている。
  • 各国の排気ガス規制に適合するようエンジンを改良している。
  • 騒音を少なくするマフラーを備えている。
  • キックバック[2]が発生しにくいような形状のソーチェーンを開発している。例えば、ブレード先端を細くして同時に掛かるコマ数を少なくすることや、カバーを装着して先端のコマが対象物に当たらないようにしている。
  • キックバックが発生した時に、前ハンドルを握っている手が自然にチェーンブレーキを作動させられるように、ブレーキレバーの形状を工夫している。
  • 上記の振動、騒音、排気ガスの内燃機関に起因する問題の対策として、電気式チェーンソーがある。
  • 電動式の場合は不用意に起動しないように、トリガーとともに複数のボタンを同時に操作する安全装置がついている場合がある。

法令・規制

  • 日本の労働安全衛生法では、「業務としてチェンソーを使う人は、特別教育修了済みでなければならない」としている。エンジンの大きさに関係なく、電気チェンソーも含まれる。
  • 使用者が白蝋病(振動障害)にかかることを防ぐため、労働省(現在の厚生労働省)通達によって、1日当たり使用者が受ける振動量の総量が規制されている[3]。それによると、振動が激しいチェンソーでは使用時間が短く、振動が少ないものでは使用時間が長くなるが、その通達では目安として「一律に1日あたり2時間以内」「一連続作業時間10分以下」とも記述されている[4]
  • 林業・木材製造業労働災害防止協会の会員向け規程では、法的な拘束力こそないものの、事業者(雇用者)や作業者(従業員)が行うべき種々の安全対策を定めている。

林業・製材以外での使用

チェンソーアート

チェンソーアートによるだるまちゃん木像。かこさとし ふるさと絵本館「砳」に展示。

木をチェンソーで切ったり削ったりしてつくる彫刻、あるいはその制作過程を観客に見せるパフォーマンス。チェンソーカービング(彫刻)とも言う。チェーンソーアート用のガイドバーは先端が細い『カービングバー』が装着されており、突くような操作をしてもキックバックが発生しにくい設計になっている。その結果、細かい造形が出来る。 通常のチェーンソーでもチェーンソーアートは可能であるが、上記の通りキックバックによる怪我のリスクは非常に高い。チェーンソーアートの団体によっては通常のチェーンソーのみを使った『クラシックス』という種目があるが、危険なため参加資格を厳格にしている。

チェーンソーアートでのチェーンソーの操作は一般的な林業の作業では禁止されていること(先端で突いたり、上側のブレードを使って仕上げるなど)が含まれる。また、前述のとおり一般林業で使う機材とは異なる。このため、習得するためには専門の知識と訓練が必要である。

城所ケイジがチェーンソーアーティストとして世界的に有名である。[5]

コンクリートソー

工事や災害救助のため、鋼材、コンクリートアスファルト、石材などを切断できるチェンソーもある[6]

ジャグリング

ジャグリングで稼働中のチェーンソーを使うことがある。火のついた松明や刃物など一般的に危険な物の一つとしてチェーンソーが選ばれる。


  1. ^ チェンソーの構造はどうなってる? 刃や各部の名前について解説(2022年 7月 22日閲覧)
  2. ^ 何らかの理由でカッターが木を切れなくなったとき、行き場を失った駆動力がチェンソーを使用者の顔に向かって跳ね飛ばす現象である。特にガイドバー先端の上側が物体に接触した時に発生しやすい。
  3. ^ 『チエンソー取扱い業務に係る健康管理の推進について』の別添2で規定されている。(昭和50年10月20日基発第610号)
  4. ^ 安全衛生情報センター・チェーンソー取扱い作業指針について・および別紙
  5. ^ “長良川上るサツキマス表現”. (2020年7月22日) 
  6. ^ カットオフソー(STIHL製品カタログ)2018年2月7日閲覧
  7. ^ History of Festool
  8. ^ GREG OLIVER. “Cpl. Kirchner speaks: "I'm not dead!"”. SLAM! Sports. 2012年7月20日時点のオリジナルよりアーカイブ。2008年8月26日閲覧。
  9. ^ チェーンソーにV8エンジンを積んでみたhttps://www.nicovideo.jp/watch/sm11409932021年7月25日閲覧 





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