ジョン・レイ (博物学者) ジョン・レイ (博物学者)の概要

ジョン・レイ (博物学者)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/07/10 21:09 UTC 版)

ジョン・レイ
John Ray
生誕 1627年11月29日
 イングランド王国エセックス州、ブラック・ノットリー
死没 1705年1月17日 (満77歳没)
 イングランド王国エセックス州、ブラック・ノットリー
国籍 イングランド
研究分野 博物学
プロジェクト:人物伝
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1670年までは姓を "Wray" と綴っていた。その後、自身の家系を調べてかつての本当の綴り方が "Ray" だったことを確かめた上で綴りを替えた[2]

前半生

エセックス州ブレントリー近郊のブラック・ノットリーに生まれる。父は鍛冶屋だったと言われている。16歳のときケンブリッジ大学に入学し、トリニティ・カレッジとセント・キャサリンズ・カレッジで学ぶ[3]。トリニティ・カレッジでの指導教授は James Duport で、同級生のアイザック・バローとは親友になった。1649年、フェローとなった。カレッジを渡り歩き、ギリシャ語講師 (1651)、数学講師 (1653)、古典文学講師 (1655) を務め、1657年には praelector と副学部長を務め、1659年と1660年には大学幹事を務めた。また、当時の大学の慣習として、1660年12月23日に上級聖職に就くずっと以前からカレッジ内の礼拝堂でよく説教をしていた。そういった説教は後に The wisdom of God manifested in the works of the creation[4]Deluge and Dissolution of the World にまとめられている。レイは講師としても優秀で、博物学を好む傾向を何人かの学生に受け継がせた。中でもフランシス・ウィラビーが博物学者として知られている。

経歴

1661年の統一令により、レイは1662年にフェローシップを放棄せざるを得なくなった。そのころ、アイザック・ニュートンがカレッジに入学している。それ以降レイは教え子のウィラビーに雇われる形になり、ウィラビーの死後はその2人の息子の教育責任者として年に6シリングを遺贈された。

1663年春、ウィラビーや他の2人の教え子と共にヨーロッパ旅行に出て、1666年3月に戻った。その後も旅行続けたウィラビーとはモンペリエで別れた。それ以前にも3回(1658年、1661年、1662年)にわたってグレートブリテン島の大部分を回ったことがあり、それらの旅の個人的記録を後にジョージ・ルイス・スコットが編集し Mr Ray's Itineraries と題して1760年に出版した。レイ自身は海外旅行の記録を Observations topographical, moral, and physiological, made on a Journey through part of the Low Countries, Germany, Italy, and France と題して1673年に出版。この旅行でレイとウィラビーは大量の動植物のコレクションを持ち帰っており、それらに基づいて動植物の完全な体系を構築することを構想していた。ウィラビーはそのうちの動物関係を引き受けたが、鳥類と魚類について何とかまとめただけで1672年に亡くなった。植物についてはレイがまず Methodus plantarum nova (1682) を著し、その後3巻の大作 Historia generalis plantarum (1686, 1688, 1704) をまとめた。ブリテン島を回った旅行で集めた植物についてはそれ以前に Catalogus plantarum Angliae (1670) にまとめており、その後のイギリスの植物相研究の基盤となっている。

1667年、王立協会フェローに選ばれ[5]、1669年にはウィラビーと共同で書いた Experiments concerning the Motion of Sap in Trees(木の中の樹液の動きに関する実験)という論文がフィロソフィカル・トランザクションズ誌に掲載された。彼らは樹液が吸い上げられて白いゼリー状の凝固物を形成し、それが樹皮と本体の間に層を作って木質に変化したり、葉や果実の元になっていると考えた。王立協会への入会後間もなく、主教で王立協会創設者の1人であるジョン・ウィルキンズは自著 Real Character のラテン語への翻訳をレイに依頼した。翻訳は完成したようだが、出版はされなかった。レイの Methodus plantarum nova は実のところウィルキンズの壮大な分類体系の一部として出版されたものである。

1673年、結婚。1676年、サットン・コールドフィールドに移り、1677年にはエセックスの Falborne Hall に移った。1679年、故郷のブラック・ノットリーに移り、死ぬまでそこで過ごした。病気がちではあったが、平穏無事に本を執筆し続けた。1844年、博物学の著作出版を目的としてジョン・レイの名を冠したレイ協会が創設された。

レイによる種の定義

レイは「とは何か」を生物学的に定義した最初の人物である。1686年の『植物誌』には次のように記されている。

…私にとって種を決定する確実な基準は、それら自身が種から成長して存続していくための際立った特徴以外になかった。従って、同じ植物の種から異なる特徴を有するものが成長したとしても、それは偶然の派生であり、種として区別するほどの意味はない… 同様に動物も個々の種は固有の特徴を恒久的に保持する。ある種が別の種から湧き出てくることはなく、逆も同様である。[6]

  1. ^ Historia plantarum generalis, in the volume published in 1686, Tome I, Libr. I, Chap. XX, page 40 (Quoted in Mayr, Ernst. 1982. The growth of biological thought: diversity, evolution, and inheritance. Cambridge, Mass.: Belknap Press: 256)
  2. ^ Gunther, Robert W.T. 1928. Further Correspondence of John Ray. Ray Society, London. p16
  3. ^ "Ray, John (RY644J)". A Cambridge Alumni Database (英語). University of Cambridge.
  4. ^ The wisdom of God manifested in the works of the Creation, Google Books
  5. ^ "Ray; John (1627 - 1705)". Record (英語). The Royal Society. 2012年5月21日閲覧
  6. ^ Mayr Growth of biological thought p256; original was Ray, History of Plants. 1686, trans E. Silk.
  7. ^ a b c d Keynes, Sir Geoffrey [1951] 1976. John Ray, 1627–1705: a bibliography 1660–1970. Van Heusden, Amsterdam.
  8. ^ a b c d Raven, Charles E. 1942. John Ray, naturalist: his life and works. Cambridge.
  9. ^ Newton, Alfred 1893. Dictionary of birds. Black, London
  10. ^ Bowler P.J. 2003. Evolution: the history of an idea. 3rd ed, California.
  11. ^ Hooke, Robert 1705. The posthumous works of Robert Hooke. London. repr. 1969 Johnson N.Y.


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