シャベル 軍隊でのシャベル

シャベル

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/12/16 03:22 UTC 版)

軍隊でのシャベル

現在の折畳式の柄手つきEntrenching tool

軍隊におけるシャベルは、1869年にデンマーク陸軍のヨハン・リンネマンde:Johan_Linnemannが発明し1870年にシャベル、のこぎり、ナイフ、フライパン、測定器の機能を併せ持つリンネマン式円匙の特許を取得したことに始まる。このシャベルの特徴は金輪で刃に付いている舌を締め付けることで柄と刃を固定しており自由に分割できることに特徴がある。万が一柄が破損、紛失しても現場の適当な木の枝や金属棒で代用できる。

リンネマン式円匙は初めデンマーク陸軍に柄の脱着機能だけを残して簡略化されたモデルが256本採用されるのみにとどまり全く採算が取れなかったために、成功を求めたリンネマンはウィーンにリンネマン式円匙の工場を設立。第一次大戦では塹壕戦が確立されたために今まで以上にシャベルの重要性が増しオーストリア、ドイツ、フランス、ルーマニア、ロシアがリンネマン式円匙を採用した。ただしロシア以外の国はパテント料を一切払わず違法コピー品を使用した。 ロシアでは今なおほとんど当時のままのリンネマン式円匙が使われ続けており[9]MPL-50といる名称がつけられている。

シャベルは戦場において、特に第一次世界大戦以降、塹壕や排泄用の穴を掘る道具として使用され(排泄物の臭気を巻き散らさない事は住環境を守るためだけでなく、敵側に察知されないためでもある)、このため歩兵などの兵科では兵士の個人携行物となっている。また、白兵戦の際の打突武器としても有用であり、第二次世界大戦の時ソビエト軍兵士と赤軍パルチザンはシャベルを白兵武器として使い、現代のロシア軍スペツナズもシャベルを使う戦闘技術を訓練している。

多くの軍用車両がシャベルを装備しており、これらは車内に納められるか車外にツルハシジャッキなどとセットでクランプ留めされ、車両がスタックした場合や陣地を構築する際に使用される。

日本陸軍ではシャベルを「円匙」と書き「えんぴ」と読んでいた。「円匙」の本来の読みは「えんし」であり、「えんぴ」は本来誤読である。日本陸軍では土木工事用の大きなシャベルを「大円匙(だいえんぴ)」、携行用を「小円匙(しょうえんぴ)」と呼び分けていた。大円匙は工兵が使用するものであり、工兵達は歩兵の携帯する小円匙を「耳かき」と俗称していた。兵士の個人携行物の一つである小円匙は、使用時に木製の柄を刃部へ差し込み、金属管の締め付けによる摩擦力で留める構造となっている。携行時は柄と刃に分離したうえで背嚢などに固定する。柄の中ほどと刃部の上側(柄の取りつけ部付近)に穴が設けられ、両者にロープが通してあった。このロープは刃と柄の紛失防止のほか、雨、泥での滑り止めとしても機能し、組み立てた小円匙を肩に負うためにも用いられた。柄頭部分の先端には柄手がなく、代わりに握り込めるよう丸く成形されている。なお1930年代後半に制式採用された「中円匙(ちゅうえんぴ)」九八式円匙の刃部は防弾鋼鈑で作られ、刃中央部に目の幅にごく小さな2つの穴を設け、それを覗き穴として、簡易な防盾)として使用できるようになっていた。

アメリカ陸軍は、第二次世界大戦中の1943年にM1943Entrenching tool(直訳すると「1943年型塹壕掘り工具」)を採用している。M1943はドイツ国防軍の1938年型シャベルを参考に設計され、柄と刃の取りつけ部分が回転して折りたたみができ、携行しやすく、刃を柄と90度の角度で固定させることができるので、(くわ)のように使うことができた。柄頭部分に取っ手はない。同様の構造のものが、現在でも各国で軍用あるいは民生用として製造されている。アメリカではM1943の後継品として、つるはしとして使うための起倒式突起が追加されたM1951も採用されている。

ソビエト連邦軍労農赤軍)は砲身部分を柄として、スペード形の底板を刃として組み替える、迫撃砲兼シャベルとなる特殊な兵器を装備していた(37mm軽迫撃砲)。後継兵器として、現代ロシア軍にもシャベルの柄の部分が単発式擲弾発射器となっている “ранатомёт-лопата Вариант” が存在する。




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