シェリー (ワイン)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/12 15:05 UTC 版)
文化
作品中の登場
そもそも上等なシェリーには二重の功徳がある。(中略)頭の働きを鋭敏かつ創造的にし、即座に生きのいい愉快なものの姿形を思い描かせてくれる。(中略)それまで冷たくよどんでいた血は、肝臓をなまっ白くさせ、つまり臆病腰抜けのしるしをつけさせてたわけだが、ひとたびシェリー酒のおかげでカッとほてると、たちまち五臓六腑から四股五体まで駆けめぐり、頭にパッと火をともす。勇気の根源はシェリー酒にありだ — ウィリアム・シェイクスピア『ヘンリー4世』[12]
ヘレス産ワイン/シェリーは多くの文学作品や映画に登場する。イングランド/イギリスの劇作家・小説家ではウィリアム・シェイクスピア、アレクサンダー・フレミング、エドガー・アラン・ポー(『アモンティリヤアドの酒樽』)、ウィリアム・サマセット・モーム(『アンダルシア』など)、チャールズ・ディケンズなどが、スペインの小説家ではベニート・ペレス・ガルドスなどがヘレス産ワイン/シェリーを作品に登場させている。
シェイクスピア作品にもっとも多く登場する酒はヘレス産ワインであり、全作品で44回言及される[12]。『ヘンリー4世』ではフォルスタッフが長々とヘレス産ワインを称賛しており、このセリフがイングランドでのヘレス産ワイン人気に火をつけたといわれている[18]。ワイン業者で美食家のアンドレ・シモンは1931年に『シェイクスピアのワイン』(邦訳:多田稔)を著して、シェイクスピア作品中に登場するヘレス産ワインやマデイラ・ワインなどを考察している。
サマセット・モームは『アンダルシア』第32章で「ヘレスの白は勿論シェリー酒のそれでもあり(中略)その空気はなんともぜいたくな香りがする(中略)ヘレスは酒飲みの楽園である」と書いている。サマセット・モームはスペインの歴史と飲酒文化について随筆『ドン・フェルナンドの酒場で』(邦訳:増田義郎)を書いている。ディケンズの『デイヴィッド・コッパーフィールド』ではサンドイッチとともにシェリーが飲まれ、『エドウィン・ドルードの謎』ではシタビラメのフライ、子牛のヒレカツとともにシェリーが飲まれている[37]。
ベネンシアドール
シェリーの熟成度合いをチェックするテイスターはベネンシアドールと呼ばれる。ワイナリーでの日常的な試飲や、輸出業者との契約時の試飲などの際がベネンシアドールの出番である。約1mの柄に50ml程度のカップが付いた、ベネンシアと呼ばれる柄杓状の道具を用い、フロールの膜をできるだけ壊さずに少量のシェリーを取りだす[38]。ベネンシアはスペイン語の「協定」(avenencia, アベネンシア)に由来する[39]。
かつてのように契約時に使用されることは少なくなったが、日常的な熟成状態の検査の際には現在でも欠かせない[39]。また、現代では祭礼やワインフェアなどで観客にシェリーを注ぐ際のパフォーマンスでもベネンシアドールが活躍している[38]。シェリー原産地呼称統制委員会は2002年からベネンシアドール認定試験を行っており、2014年までに138人が認定されている[40]。
シェリー樽の他の酒類への利用
シェリーを貯蔵していた樽は、空いた後に他の酒類(ウィスキーや、日本では焼酎も)を入れて熟成させ、甘く芳醇な香りや味をつけるために使われる[41]。
- ^ 落合直文著・芳賀矢一改修 「せりい」『言泉:日本大辞典』第三巻、大倉書店、1922年、2440頁。
- ^ 郁文舎編輯所編 「セリー」『新百科大辞典』 郁文舎、1925年、1246頁。
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- ^ シェリー資格称号認定試験制度原産地呼称シェリー、マンサニーリャ統制委員会/シェリー委員会
- ^ 一例として、「アサヒ、華やかな香りのウイスキー 父の日向け」『日本経済新聞』ニュースサイト(2018年4月24日)2018年5月10日閲覧。
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