サンタ・クルス島 (ガラパゴス)
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植物
サンタ・クルス島のような大きな島では、一般的に高地の湿潤地帯と低地の乾燥地帯に見られるような影響を植物相に与える。高地の植物は、所々熱帯の疎林を示すような緑豊かな傾向がある。低地帯では、多くは棘のある低木やサボテンのような乾燥または半乾燥地の植物であり、ほかはほとんどが露出した火山岩となる。
- 沿岸帯
- 沿岸地帯にはマングローブ林が見られ[33]、岩石海岸にはアメリカヒルギ(別名レッドマングローブ)(ヤエヤマヒルギ属〈Rhizophora〉 R. mangle)、また、砂泥質海岸にはホワイトマングローブ(ヒルギモドキ属〈Laguncularia〉 L. racemosa)やブラックマングローブ(ヒルギダマシ属〈Avicennia〉 A. germinans)が分布する[34]。
- 乾燥地帯
- 乾燥低地帯にはサボテン林としてハシラサボテン(ヤスミノケレウス属〈Jasminocereus〉 J. howellii〈または J. thouarsii の亜種〉)とウチワサボテン(オプンティア属〈Opuntia〉 O. echios)の2種が分布する[35]。また、パロサント(ブルセラ属〈Bursera〉 B. graveolens)[36]、およびクロトン(ハズ属〈Croton〉 C. scouleri)の林などがある[37]。
- 移行帯
- 移行帯ではピソニア(ピソニア属〈Pisonia〉 P. floribunda)のほか、プシジウム(バンジロウ属〈Psidium〉 P. galapageium)林も見られるようになる[38]。
- 湿潤地帯
- 湿潤山地帯にはスカレシア林が見られる。スカレシア林はキク科のスカレシア属 (Scalesia) のうち樹高約12mの高木となる S. pedunculata[39]の常緑樹林である[40]。スカレシア属は15種が認められるガラパゴスの群島で進化した固有属であり[41]、サンタ・クルス島の低地の乾燥地帯には、スカレシア属のうち樹高2mまでの低木5種が分布する[42]。スカレシア林はサンタ・クルス島の南側では標高180-280mに、北側では標高560-670mに分布する[43]。ただし、サンタ・クルス島南側のスカレシア林は農地開拓により消滅した[44]。そのため2005年ごろより入植地における植生の復元が開始された[45]。
- 島の南側においては、標高280mより再びプシジウム林があり、標高420mからはミコニア(オオバノボタン属〈Miconia〉 M. robinsoniana)の低木林が見られる[46]。
帰化植物
かつては食用、観賞用または有用材として植物の持ち込みが自由になされ、それら数多くの植物が帰化し野生化している。例えば、サンタ・クルス島の湿潤地帯の上部より高地では、栽培果樹の高木であるグアバ (Psidium guajava) の野生化が見られる。アカキナノキ (Cinchona pubescens) はマラリアの特効薬であるキニーネを生産する木として島内に移入され、ミコニア林から草原高地帯に野生化し、スカレシア林にも拡大している。低木ではキイチゴ類の Rubus niveus が1990年代初頭より認められている。また、クダモノトケイソウ (Passiflora edulis) の帰化が1975年に確認され、湿潤地帯に見られる[47]。
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