クー・フーリン クー・フーリンの概要

クー・フーリン

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/29 06:56 UTC 版)

クランの猛犬を倒す少年時代のクー・フーリン, Stephen Reid,1904

父は太陽神ルーもしくはスアルタム英語版[注釈 1][注釈 2]、母はコンホヴァル王の妹デヒティネDeichtine)。 幼名はセタンタ(Sétanta[注釈 3][注釈 4]

御者ロイグが駆る、愛馬マハの灰色(Liath macha)とサングレンの黒毛(Dub Sainglenn)の二頭立ての戦車に乗る[1]。髪は百本の宝石の糸で飾られ、胸には百個の金のブローチを付け、左右の目には7つの宝玉が輝く[2][3]美しい容貌だが、戦意が高まり興奮が頂点に達すると「ねじれの発作」を起こし、怪物のようになる。身体は皮膚の下で回転し、髪の毛は頭から逆立ち、1つの眼は頭にのめり込み、もう1つの眼は頬に突き出る。筋肉は巨大に膨れ上がり、英雄の光を頭から発する。ある時には大きな唸り声をあげ、土着の精霊のすべてが彼と一緒に怒号し、コナハトの戦士を恐怖に陥らせたという[4]。ケルトの英雄クー・フーリンにはペルシャの英雄ロスタム、ギリシャの英雄ヘーラクレース、ドイツの英雄ヒルデブラントと類似点があることから、インド・ヨーロッパ起源であることが示唆されている[注釈 5]


注釈

  1. ^ スアルタムもクー・フーリン同様にマハの呪いを受けていなかった(リース 2001, p. 640)
  2. ^ 父親はさまざまであり、デヒトラの兄のコンホヴァル(近親相姦による誕生はしばしば神性の印であった)が父親とする説もある(ミランダ, p. 99)。
  3. ^ 稿本によってはセタンタという名の名付け親はケト・マク・マーガハ英語版であるとされる(マイヤー 2001, p. 91)。
  4. ^ プトレマイオスの記述によれば、この名前は、今日のイングランドのランカシャーにあたる地域に住んでいた、ケルト系部族のシェダンティ族とおそらく関係がある(キアラン・カーソン, p. 330)。
  5. ^ M. Connell: The Medieval Hero: Christian and Muslim Traditions. Ed. Dr. Müller. 2008. p. 227
  6. ^ ケルトの戦士の名前に「犬」が使われるのは珍しいことではない。コノア王(コンホヴァル)も、後にクー・フーリンと戦うことになるクー・ロイもその名に犬が含まれている(マルカル 2001, p. 20)。また、ブルターニュではアイルランドの戦士は「犬戦士」と呼ばれていた(篠田 2008, p. 314)
  7. ^ クー・フーリンにはコンラの他に、Fínscothという娘もいた。この女性は物語「ロスナリーの戦い」に登場するが、人柄や母親は明かされない。タラの王Cairbre Nia Fer英語版とアルスターの間に起こった戦争の和平の印として、Cairbreの息子Erc mac Cairpri英語版の妻となる(Hogan, p. 55)。なお、夫のErcは父親の復讐のため、のちにクー・フーリンの殺害に加担し、コナル・ケルナッハに殺されることとなる(Stokes, p. 182)。夫が殺害された後、Fínscothがどう生きたのかはやはり明かされない。
  8. ^ 写本や伝承を編集し翻訳したグレゴリー夫人の『ムルテウネのクーフーリン』にはこの説話に相当する箇所がある。

出典

  1. ^ 木村 & 松村, p. 209.
  2. ^ The Wooing of Emer by Cú Chulainn, paragraph 15.
  3. ^ キアラン・カーソン, p. 153.
  4. ^ ミランダ, p. 100.
  5. ^ 木村 & 松村, p. 208.
  6. ^ キアラン・カーソン, p. 69.
  7. ^ キアラン・カーソン, p. 331.
  8. ^ キアラン・カーソン, p. 149.
  9. ^ 八住, p. 48.
  10. ^ 佐藤, p. 56.
  11. ^ 「Some Aspects of Irish Literature」Pádraic H. Pearse(原文)
  12. ^ 鈴木良平「パトリック・ピアス評伝 : 編集者教育者革命家」『法政大学教養部紀要. 社会科学編』第105巻、法政大学教養部、1998年2月、23-51頁、CRID 1390853649756740224doi:10.15002/00004626ISSN 0288-2388 
  13. ^ BBC - Northern Ireland Cu Chulainn - Homepage” (英語). www.bbc.co.uk. 2020年7月22日閲覧。


「クー・フーリン」の続きの解説一覧



英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「クー・フーリン」の関連用語

クー・フーリンのお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



クー・フーリンのページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアのクー・フーリン (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2024 GRAS Group, Inc.RSS