ギミック (プロレス)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/02/29 06:37 UTC 版)
概要
アングルを展開する上で、またヒールやベビーフェイスを演じる上でのバックグラウンドとして、選手本来のキャラクターとは別にシナリオに適したキャラクターが作り出される。古くは貴族のような出で立ちと振る舞いのゴージャス・ジョージ、第二次世界大戦時の日本の軍人をイメージしたグレート東郷など、プロレス創生期からギミックは存在する。
ギミックはレスラーのキャラクターを立たせることで、観客の感情移入を容易にし、試合に熱中させやすくするという利点がある。フレッド・ブラッシーに代表される噛み付きやレフェリーにわからないように繰り出す反則行為など、ヒールの憎々しいレスリング術とパフォーマンスはその最たるもので、前述のグレート東郷は卑劣な反則技を繰り返し、反日感情の渦巻くアメリカで憎悪を一身に集めた。また日本では、初めて来日する外国人レスラーはギミックのみが来日前に喧伝されることが多く、ファンの想像をかき立てさせている。
ギミックは、エンターテインメント性が高く、かつリングネームで出場する人物が多いアメリカ合衆国のWWEにて多用されている。特にWWEの場合では、一部選手に24時間ギミックで過ごすことを契約に盛り込む場合もある。プロレスファンに選手を覚えてもらうために、わざとインパクトのあるキャラクター設定を行う場合も多い。たとえばロード・ウォリアーズの「デビュー前はスラム街でネズミを食べていた」など。特に日本ではかつて梶原一騎の一連のコミックスで実際のエピソードをもとにフィクションを織り交ぜていたため、レスラーに対してギミックと実際が混在していた。
プロレス界では「xx兄弟」、「xx一家」と称している場合でも、血縁関係が無いことがある。これはビジネス・ブラザーズなどと呼称され、これもギミックの一種といえるが、実はいとこ同士だったり、一部の兄弟は本当の兄弟であることもある。たとえばザ・ファンクスの場合、ドリーとテリーは本当の兄弟だが、1986年頃のWWFでドリーの子分としてファンクスに入っていたジミー・ジャック・ファンクは他人である。
血縁関係ありの例はメキシコ・ルチャリブレ界には非常に多く、実際に実子が「イホ・デル」や「ジュニア」と名乗って活動する場合も比較的多い。アメリカなどでもシャープ兄弟、バション兄弟(マッドドッグ・バション&ブッチャー・バション)、ファンク兄弟、ブリスコ兄弟(ジャック・ブリスコ&ジェリー・ブリスコ)、フォン・エリック一家、ハート一家、アノアイ・ファミリー、ハーディー兄弟、ハース兄弟、ハーレム・ヒート、ロス・ゲレロズ(エディ・ゲレロ&チャボ・ゲレロ)、コロンズ(カリート&プリモ)、ウーソズなどがいる。プロレス界でもプロモーターだけでなくレスラーも『ファイティング・ファミリー』のモデルとなったナイト・ファミリーのように、一家でファミリービジネスで取り組むケースも多くみられる。
血縁関係なしでの例では東郷ブラザーズ、アンダーソン兄弟、バリアント兄弟、バス兄弟、グラハム一家、バシャム兄弟、ダッドリー兄弟、破壊兄弟、エッジ&クリスチャン、ホーリーズ(ハードコア・ホーリー&クラッシュ・ホーリー&モーリー・ホーリー)、佐山聡&前田日明(イギリスでのサミー・リー&クイックキック・リー)などがある。
フリッツ・フォン・エリックとワルドー・フォン・エリックのように、同じナチス・ギミックでビジネス・ブラザーズでもあるという例もある。なお、ワルドーはカナダ出身、フリッツに至ってはユダヤ人だったが、このようにギミック上の出身地・経歴が実際とかけ離れているというのもプロレス界では決して珍しくはなく、東京出身のマサ斉藤もアメリカで活動していた時期に、Tokyoはアメリカでもなじみがあるとして、出身地をOsakaとしていた時期がある。
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