カジュダン–ルスティック多項式 カジュダン・ルスティック予想

カジュダン–ルスティック多項式

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2017/11/21 03:00 UTC 版)

カジュダン・ルスティック予想

カジュダン・ルスティック多項式は、ヘッケ環の標準的な基底と自然な基底の間の変換係数として現れている。Inventiones英語版 誌の論文において、カジュダン・ルスティックはカジュダン・ルスティック予想として知られている2つの同値な予想を提出した。この予想は、複素半単純リー群およびリー環の表現論において長年の懸案であった問題と、カジュダン・ルスティック多項式の q = 1 での値とを結びつけるものであった。

W を有限ワイル群とし、ρ を対応するルート系の正ルートの総和の半分(ワイルベクトル)とおく。W の元 w に対し、Mw を最高ウェイト w(ρ) − ρ のヴァーマ加群とし、Lw をその既約商、すなわち最高ウェイト w(ρ) − ρ の既約加群とする。MwLw はともに、W に対応する複素半単純リー環 上の局所有限なウェイト加群であり、代数的指標が意味を持つ。一般に -加群 X の指標を ch(X) とかく。カジュダン・ルスティック予想とは次のようなものである:

ここで w0W の最長元である。

これらの予想は、Beilinson & Bernstein (1981)Brylinski & Kashiwara (1981) によって独立に証明された。一連の証明の中で導入された方法は、1980年代、1990年代を通じて、幾何学的表現論と呼ばれる手法の発展を導いた。

注意

  1. 2つの予想は同値であることが知られている。さらに、ボルホ・ヤンツェンの translation principle を用いれば、ρ を任意の支配的正則な整ウェイトに取り替えることができる。従って、カジュダン・ルスティック予想は、BGG圏英語版 の正則かつ整のブロックにおけるヴァーマ加群のジョルダン・ヘルダー重複度を記述していることになる。
  2. ヤンツェン予想からカジュダン・ルスティック多項式に対する類似の解釈を与えることができる。この予想は大雑把に述べると、Py, w(q) の個別の係数が、ヤンツェンフィルターと呼ばれるヴァーマ加群のフィルターの次数商に現れる Ly の重複度を記述しているというものである。正則かつ整の場合におけるヤンツェン予想は、ベイリンソン・ベルンシュタインの後の論文によって示された。
  3. デビッド・ヴォーガンはこの予想から

が導かれることを示し、さらに が奇数のときは消えていることを示した。従って、圏 における Ext群の次元はカジュダン・ルスティック多項式の係数で決定されることになる。このことは、有限ワイル群に対するカジュダン・ルスティック多項式の係数はすべて非負整数であることを示している。しかし、これらの係数の非負性は、交叉コホモロジー群の次元として解釈することにより、カジュダン・ルスティック予想とは関係なく示されている。逆に、カジュダン・ルスティック多項式とExt群との関係を予想の証明に用いようとすることは理論的には可能であるが、この方法で予想を証明することは実際には難しいということがわかっている。

  1. カジュダン・ルスティック予想の特別な場合は簡単に示すことが出来る。例えば、M1 は反支配的 (antidominant) なヴァーマ加群であるが、既約になることが知られている。すなわち、M1 = L1 である。これは第2の予想の w = 1 の場合にあたり、和は y = w = 1 の一項のみになっている。他方、第1の予想の w = w0 の場合は、ワイルの指標公式・ヴァーマ加群の指標公式と Py, w0 = 1 であることを用いて導かれる。
  2. Kashiwara (1990) は、一般の対称化可能なカッツ・ムーディ代数に対するカジュダン・ルスティック予想の一般化を証明した。






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