カエルアンコウ科 生態

カエルアンコウ科

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/11/23 14:06 UTC 版)

生態

普通海底であまり動かずに生活し、獲物が近づいてくるのを待つ。獲物を見つけると、胸鰭と腹鰭を使って海底を歩き、ゆっくりと近づく[8][9]。移動方法は二種類あり、一つは胸鰭を交互に動かす二足歩行生物のような移動方法であり、もう一つは胸鰭を前進させながら体重を腹鰭に移動させ、胸鰭を同時に前後に動かす襲歩のような移動方法である。どちらの移動方法も長くは行わない。

外洋では尾鰭を動かして泳ぐ。また、若い個体はよく水を吸い込んで胸鰭後方の鰓穴から勢いよく噴出させ、推進力を得る[9]。ハナオコゼは、鰭を使い海藻を掴むことができる[1]

捕食

甲殻類や他の魚類を捕食し、共食いも行う。最初に獲物を見つけるとそれを目で追い、体長の七倍程の位置に近づくと、擬餌状体が模倣している生物の動きを真似るように誘引突起を動かし始める。獲物が近づくと、捕食の準備のためにゆっくりと動く。獲物に近づいたり追いかけたりすることもあれば、口の角度を調整することもある。顎を突然開くことで捕食が行われ、口腔の容積を最大12倍に拡大し、獲物を水とともに口の中に引き込む[8]。スローモーション撮影で分かったことだが、捕食は0.006秒という他の生物には見えない速さで行われ、これは真骨類最速である[6][8]。獲物を飲み込み、食道を筋肉で閉じて逃げないようにしながら、水は鰓穴を通して流す。口を広げるだけでなく、胃も広げることで自身の2倍の大きさの獲物でも捕食する[8]

繁殖

単独行動のため、繁殖行動はまだ十分に研究されていない。水槽内での観察例は珍しく、野生での観察例はさらに少ない。多くの種は雌が水中で卵を産み、雄が後ろから放精する。産卵の8時間前から数日前にかけて、卵が水を吸収するため、雌の腹部は膨らむ[7]。産卵が月の満ち欠けなどの外的要因によって引き起こされるのか、あるいは雄が雌の放つ臭いや信号などに引き寄せられるのかは不明である。これまでの観察から、つがいの片方はもう片方より明らかに大きく、最大でその差は10倍であった。性別が確認できる場合、大きい方は常に雌であった。繁殖の前に雄は雌の横や後ろを泳ぎ、口で雌を突いた後、総排出腔の近くにとどまる。産卵の直前、雌は海底から海面に向かって泳ぎ始め、水面付近で卵と精子を放出し、海底に戻る。雄が雌から卵を口で引き出すこともある。交尾が終わると、つがいはすぐに立ち去るが、雌が雄を捕食することもある[10]

カエルアンコウ亜科は海中に卵塊を放出し、Histiophryninae亜科は卵を保護する[6]

Lophiocharon 属、Phyllophryne 属、Rhycherus 属は、海藻や岩などの表面に卵を産む。一部の種は卵を守り、普通は雄の役割である[7]。抱卵を行う種もおり、Lophiocharon trisignatus は雄の体に卵が付着しており、Histiophryne 属は胸鰭に産卵する。

卵の直径は0.5-1mmで、ゼラチン状の塊や長いリボン状になっている。これらの卵塊には最大で180,000個の卵が含まれ、表層を漂う[7]。2-5日後に孵化し、孵化したばかりの幼魚の体長は0.8-1.6mmである。最初の数日間は、消化器官が発達する間、卵黄嚢の栄養を使い生活する。稚魚は長いヒレを持ち、触手のある小さなクラゲに似ていることもある。生後1-2ヶ月は海中を漂っており、体長15-28mmになると成魚と同じ形になり、海底で生活を始める。幼魚はしばしば毒を持つウミウシヒラムシに擬態する。

化石

化石はほとんど見つかっていないが、始新世中期(4,500万年前)のテチス海の堆積によって形成された北イタリアの地層から発見された3cmの化石は Histionotophorus bassani と命名され、当初カエルアンコウ類として記載されたが、後に Brachionichthys 属の近縁種とされた。2005年、アルジェリアの中新世(300万~2,300万年前)の地層から発見された化石が Antennarius monodi と名付けられた。現存する Fowlerichthys senegalensis に最も近縁であると考えられている[11]。2009年、イタリアで発見された始新世前期のヤプレシアン期の化石が新種 Eophryne barbuttii として記載された。この種は知られている限り本科の最古の種である[12]


  1. ^ a b c d e f g h Antennariidae”. Tree of Life Web Project. 2023年11月9日閲覧。
  2. ^ a b Antennariidae”. Fishbase. 2023年11月9日閲覧。
  3. ^ a b Family ANTENNARIIDAE”. Fishes of Australia. 2023年11月9日閲覧。
  4. ^ Antennarius biocellatus”. Fishbase. 2023年11月9日閲覧。
  5. ^ a b Histrio histrio”. Fishbase. 2023年11月9日閲覧。
  6. ^ a b c d e 『小学館の図鑑Z 日本魚類館』p.168-169
  7. ^ a b c d Diving with Frogfish”. Dive the World. 2023年11月10日閲覧。
  8. ^ a b c d e f Frogfish Factsheet (Archived)”. Shedd Aquarium. 2023年11月10日閲覧。
  9. ^ a b Bertelsen, E.; Pietsch, T.W. (1998). Paxton, J.R.; Eschmeyer, W.N. (eds.). Encyclopedia of Fishes. San Diego: Academic Press. pp. 138–139. ISBN 0-12-547665-5.
  10. ^ Pietsch TW and Grobecker DT (1987) Frogfishes of the world Stanford University Press, ISBN 9780804712637.
  11. ^ G. Carnevale1 & T.W. Pietsch: Filling the gap: a fossil frogfish, genus Antennarius (Teleostei, Lophiiformes, Antennariidae), from the Miocene of Algeria
  12. ^ G. Carnevalel & T.W. Pietsch. 2009. An Eocene frogfish from Monte Bolca, Italy: The earliest known skeletal record for the family
  13. ^ Arnold, Rachel J.; Pietsch, Theodore W. (2012-01). “Evolutionary history of frogfishes (Teleostei: Lophiiformes: Antennariidae): A molecular approach” (英語). Molecular Phylogenetics and Evolution 62 (1): 117–129. doi:10.1016/j.ympev.2011.09.012. https://linkinghub.elsevier.com/retrieve/pii/S1055790311004027. 
  14. ^ a b Hart, Pamela B.; Arnold, Rachel J.; Alda, Fernando; Kenaley, Christopher P.; Pietsch, Theodore W.; Hutchinson, Destinee; Chakrabarty, Prosanta (2022-06). “Evolutionary relationships of anglerfishes (Lophiiformes) reconstructed using ultraconserved elements” (英語). Molecular Phylogenetics and Evolution 171: 107459. doi:10.1016/j.ympev.2022.107459. https://linkinghub.elsevier.com/retrieve/pii/S1055790322000720. 





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