エッジシティ 問題点と解決の努力

エッジシティ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/21 14:56 UTC 版)

問題点と解決の努力

エッジシティは多数の問題を抱えている。快適な都市環境を維持するためには大量のエネルギーを必要とし[注 2]、エッジシティ間の交通渋滞の発生、スプロール化の進展により、どこまでも環境破壊が進む危険をはらんでいる[7]。そして、問題は精神面にも及び、NIMBY(ニンビー、Not in my backyardの略)と呼ばれる、自宅の裏庭でもなければ地域に関心を示さないような人が出現し[14]、住民は生活感のない街に「便利だが無味乾燥」という評価を付けている[12]。日本に比べれば高齢者の比率が低いアメリカではあるが、今後高齢化が進めば生活上の困難が生じることは想像に難くない、という指摘もある[15]

エッジシティに機能を奪われた都市の側では活気が失われ、中小都市は街自体の崩壊を、大都市はインナーシティ問題を引き起こした[15]。また、十分に整備された公共のインフラストラクチャーが活用されず、街の衰退により税収も減り、インフラ維持ができなくなり1980年代頃から破綻する自治体も出現した[16]。背景には地方分権の進んだアメリカで、自治体間の激しい競争があり、人や企業の誘致合戦が熾烈であることがある[16]

これに対してオレゴン州では、1973年にオレゴン州土地利用法を制定し、州が設定する目標にしたがって州内の地方公共団体は土地利用などの長期計画を策定するという仕組みを構築した[17]。計画には住民のニーズを反映させることで、都市と自然を楽しめる魅力的な地域を創造しながら都市の成長管理を実現している[18][注 3]


注釈

  1. ^ 各々の企業間には、多くの顧客を集めるため互いに隣接し合おうとする力(=求心力)と顧客の奪い合いを避けるため互いに離れようとする力(=遠心力)が働き、両者の力は等しい[4]。企業間の距離が狭いと求心力が、遠いと遠心力が強くなる[4]
  2. ^ エッジシティ内の環境維持のみならず、旧来の中心市街地に残ったオフィスに通勤するためにエッジシティの住民が利用する自動車のガソリンも大きなエネルギー問題の1つである[13]
  3. ^ 一方で、オレゴン州以外から人々が流入することで都市が成長しているという事情もあり、他州の衰退を招いている面もある。
  4. ^ 簡単にいえば、副都心(=エッジシティ)が誕生することで旧来の市街地に空白地(=未利用地)が生じるという理論である。
  5. ^ 土地を利用しようとする者が払ってもよいと考える地代のこと[22]
  6. ^ 財団法人広域関東圏産業活性化センターが言及している「エッジシティ」は都市の機能面・郊外という立地特性だけに着目しており、アメリカ式の自然形成型のエッジシティではなく、「施策展開」という語がある[23]ように行政等の計画的な開発を意識したものとなっている。

出典

  1. ^ a b 倉田直道"次世代のアメリカの都市づくり"(2011年8月19日閲覧。)
  2. ^ Garreau(1991)
  3. ^ a b c d 財団法人自然環境研究センター(2006):100ページ
  4. ^ a b c d e f 山本(2004):23ページ
  5. ^ 日本政策投資銀行米国駐在員事務所(1999):2ページ
  6. ^ a b c d e 兼子(2009):1ページ
  7. ^ a b c d 海老塚(1999)
  8. ^ a b c d e f 日本政策投資銀行米国駐在員事務所(1999):4ページ
  9. ^ a b 佐藤(2016),p.3
  10. ^ 佐藤(2016),p.4
  11. ^ 山本(2004):24ページ
  12. ^ a b c 日本政策投資銀行米国駐在員事務所(1999):6ページ
  13. ^ 日本政策投資銀行米国駐在員事務所(1999):8ページ
  14. ^ 川村(2001):33ページ
  15. ^ a b 日本政策投資銀行米国駐在員事務所(1999):9ページ
  16. ^ a b 日本政策投資銀行米国駐在員事務所(1999):7 - 8ページ
  17. ^ 山本壽夫(2004):24 - 25ページ
  18. ^ 山本(2004):25ページ
  19. ^ 佐藤(2016),p.4-5
  20. ^ 労働政策研究・研修機構(2006):146ページ
  21. ^ 労働政策研究・研修機構(2006):146 - 148ページ
  22. ^ a b c d e 小峰隆夫"小峰隆夫の地域から見る日本経済/中心市街地再生に医療機関の誘致を―地域から見た医療問題(その3)"2011年7月8日(2011年8月20日閲覧。)
  23. ^ a b 財団法人広域関東圏産業活性化センター(2008):56ページ
  24. ^ 兼子(2009):2ページ
  25. ^ 財団法人民間都市開発推進機構都市研究センター"中心市街地の役割 ―衰退の背景と役割の変化―"平成15年10月3日(2011年8月21日閲覧。)
  26. ^ 岡山NEXT研究会水質部会"岡山NEXT研究会:水質部会"(2011年8月21日閲覧。)


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