インフィニティ・ガントレット 評価

インフィニティ・ガントレット

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/08/13 18:37 UTC 版)

評価

刊行時

本作は刊行後すぐにヒットし、1990年代を通してもっとも影響力の大きいストーリーラインの一つとなった[12]。当時全米でコミックブックの取次を行っていた両社(ダイアモンド・ディストリビューション英語版キャピタル・シティ・ディストリビューション英語版)とも、本シリーズの全号が発売月にベストセラートップテン入りを果たした[47]。1991年9月、コミックブック・マーケットでの投機を扱う雑誌『ウィザード英語版』は[48]、本作第1号を「値上がり有望」リストの9位に、本作のプロローグが掲載された『シルバーサーファー』誌の2号をそれぞれ6位と10位に挙げた。本作第1号の価格はコレクター市場において定価2.5ドルから上昇していき、1992年末に9~10ドルで安定化した[49][† 11]

本作の派生シリーズ『ウォーロック・アンド・ザ・インフィニティ・ウォッチ (Warlock and the Infinity Watch)』の創刊号は『ウィザード』1991年12月号で推奨作品の筆頭に挙げられた[50]。『インフィニティ・ウォッチ』のストーリーは本作の正式な続編『インフィニティ・ウォー (The Infinity War)』(1992年6月~)に続き、次いで続編第2作『インフィニティ・クルセイド (The Infinity Crusade)』(1993年6月~)が刊行された。他誌で本作のタイインを行った号も売れ行きは好調だったため、本作にキャラクターを貸し出したがらなかった編集者も、続編ではタイインに参加することを希望した[12]

後年

1990年代の終わりが近づくにつれて、『インフィニティ・ガントレット』への関心は薄れ始めた2編の続編は好評を得られず、『インフィニティ・ウォッチ』は1995年に打ち切られた[51]。同年、マーベル社はインフィニティ・ジェムをメインの作中世界から取り除き、買収したマリブ・コミックス社から取得したウルトラバース世界に移した。その後、ウルトラバースを舞台とするコミックは1996年に廃刊となった[52]。『ウィザード』誌は1998年に本作を毎号のコミックブック価格リストから外した[53]。ペーパーバック単行本の第1版は1999年を最後に再版されなかった。

図象としてのインフィニティ・ガントレットは人気を保ち続けた。マーベル社は同じディズニー傘下のESPNと提携してNBAの2010-2011年シーズンにプロモーション画像を制作したが、ESPN: The Magazine 2010年10月22日号に掲載された広告では、インフィニティ・ガントレットをつけたコービー・ブライアントが描かれていた[54]。2011年にIGNが発表したコミックブック・イベントのオールタイムベストリストでは、本作が「その後に企画されたコズミック・テーマのイベントすべてのお手本」と紹介された[55]

2012年の映画『アベンジャーズ』にサノスがカメオ登場すると、ファンとメディアの間で本作への関心が再燃した。2014年10月にはアベンジャーズの映画第3作・第4作のタイトルが『インフィニティ・ウォー パート1』『同 パート2』であることが発表され、さらに関心が白熱した[56]。2018年に予定された第3作『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』(「パート1」は取り除かれた)の公開が近づくと、コミック関連のニュースサイトは本作の紹介や、どの要素が映画に取り入れられるかの予想を配信し始めた[57]。そこで本作のストーリーは「伝説的」[58]、「古典」[32]、「象徴的」[59]などと形容された。本作がその時点でも魅力を保っている理由として挙げられたのは、ペレスの作画や[17][37]、古典的なヒーローたちをかつてない視点で描いたスターリンの手際であった[60][61]

好意的な関心ばかりではなかった。ドリュー・ブラッドリーは2013年に『マルチバーシティ・コミックス』でマーベルのコズミックテーマの作品について一連の書評を書き、本作のストーリーは素晴らしいが全編を通して読んだ時に限ると述べた。ブラッドリーは『シルバーサーファー』誌に掲載された前日譚を読むよう勧めたが、その時点で単行本化されていたのは一部に過ぎなかった[62]。ポップカルチャーに関するウェブサイト『ホワット・カルチャー』において、マーク・ジノッキオは本作が過大評価されていると考える理由を列挙した。理由の一つは、ペレスからリムへの作画の交代が「違和感があって見過ごせない」ことであった[63]。また、スターリンが70年代に書いていたサノスのストーリーの方が優れているにもかかわらず、本作の陰に隠れてしまっているという意見も述べられた[64]

コミック界への影響

本作が作品評価の面でも商業面でも成功を収めたことで、オンゴーイング・シリーズ『ウォーロック・アンド・インフィニティ・ウォッチ』と、続編となる2編のクロスオーバー作品『インフィニティ・ウォー』(1992年)、『インフィニティ・クルセイド』(1993年)が発刊された。本作の結末は後年のストーリーラインにつながっている。例としては『サノス』(2003年)[65]、『アベンジャーズ』第4シリーズ(2011年)[66]、『シークレット・ウォーズ』(2016年)[67]がある。これらのストーリーのいくつかではガントレットのパワーが弱体化されており、所有者が敵に圧倒されて敗北するシーンがたびたび描かれた[68]

『インフィニティ・ガントレット』の発売後数年にわたって、作中での出来事を別の観点から描くコミック作品が刊行された。マーベル・ユニバースにおける重要な事件が別の方向に進んだらどうなるかを扱うシリーズ『ホワット・イフ…?英語版』では、様々なキャラクターがガントレットを手に入れたらどうなるかを描く物語が何度も作られた[69][70][71][72]マーベル・アドベンチャーズ英語版インプリントでは、2010年8月から全4号のリミテッドシリーズとして若年層向けのリメイク『アベンジャーズ・アンド・ザ・インフィニティ・ガントレット』が刊行された。原作はブライアン・クレビンジャー、作画は Brian Churillathe であった。クレビンジャーはオリジナル版と勝負しても叶わないと考え、骨格だけを使って意図的に異なる方向性で書いた[73]。2015年のクロスオーバー『シークレット・ウォーズ』では、本作と同じタイトルを冠した全5号のリミテッドシリーズ(作者はゲリー・デュガンとダスティン・ウィーヴァー)において、本作の要素の一部を取り入れた物語が描かれた[74]


  1. ^ 定期的に刊行されるが、終了号があらかじめ決められているコミックブック・シリーズ。その中でも短いものはミニシリーズと呼ばれる。またこれに対し、号数を限定せず、廃刊されない限りいつまでも続くものはオンゴーイング・シリーズ英語版またはレギュラーシリーズと呼ばれる。
  2. ^ "tie-in issues"、クロスオーバー関連号。
  3. ^ 籠手、もしくは長手袋。
  4. ^ 制作者が著作権を保有する作品。アメリカのメインストリーム・コミック界では一般的ではないが、大手出版社がクリエーター・オウンド作品専門のインプリントを設立することもある[7]Dreadstar はマーベルのインプリントエピック・コミックス英語版から刊行された。
  5. ^ 月刊コミックブックの特別号で、年刊で発行されるもの。
  6. ^ マーベル社は1989年にロナルド・ペレルマンの会社マクアンドリューズ&フォーブスによって買収された[14]
  7. ^ それまでにもマーベル社のキャラクターは互いに関わり合いを持ってきたが、そのようなストーリーはいずれかのキャラクターの個人タイトルで完結するのが普通であり、他の月刊タイトルのスケジュールやプロットに直接影響を与えることはまれだった。1985年の『シークレット・ウォーズII』はマーベル社で初めて月刊タイトルとのクロスオーバーを行ったリミテッド・シリーズであった。それ以後、月刊タイトル間のクロスオーバーが行われる頻度は増えていったが、『シークレット・ウォーズII』の刊行形態が再び採用されたのは『インフィニティ・ガントレット』が初めてだった[13]
  8. ^ コミックブック制作では、原作者と作画家の間で密な共作が行われる場合もあれば、分業に近い場合もある。「マーベル・メソッド」と呼ばれる制作形態では、作画家にもある程度ストーリーの決定権や創意の余地が与えられる。完全なスクリプトを作製する方式では、作画家にとっての自由度が狭められる。
  9. ^ 当時コミック専門店の多くはバーコードリーダー英語版を導入していなかった。また出版社にとっては、このような相違点があると異なる版を見分けやすいのも利点だった。ニューススタンドは売れ残ったコミックブックを返品して払い戻しを受けることができたが、専門店にはそれが許されていなかった[24]
  10. ^ 本作と同年の1991年に刊行されたDC社の作品。
  11. ^ コミックのプライス・ガイドは複数の発行元から出されており、それらは必ずしも一致しないので、価格が落ち着いた時期やその値は正確に決められない。
  12. ^ このフィギュアセットのサノスは既存製品のリペイントである。先行版でもインフィニティ・ガントレットは付属していた。






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