インフィニティ・ガントレット あらすじ

インフィニティ・ガントレット

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/08/13 18:37 UTC 版)

あらすじ

前日譚

全宇宙に存在する生命体の数が急速に伸長し、これまでに死んだ死者の数を越えた。ミストレス・デスはサノスに対し、宇宙の生命の半分を殺して均衡を回復するように命じる。サノスの目的を知ったシルバーサーファーは阻止しようとするが、サノスは干渉を逃れるため自らの死を偽装する[39]。デスの次元に移ったサノスは、任務を達成する最善の方法を模索するうちに6個一組のインフィニティ・ジェムに目をつける。かつて自身が武器として使っていた強力な物体だが、想定を超える強大なパワーを所有者に与えることが判明したのだった。それぞれのジェム(スペース、タイム、リアリティ、マインド、ソウル、パワー)は宇宙の六つの相の一つを支配していた。サノスは宇宙を股にかけてジェムを集め、自身の左のガントレットに埋め込んでいく。すべてが集まったとき、サノスはデスに謁見し、今こそ対等の存在として言葉を交わしてくれることを期待する。しかし、デスはそれまでと同じく取次を介して言葉を伝えた。それはサノスが彼女よりも上位の存在となったためだった[40]

シルバーサーファーはサノスが生きていたことを知って戦いを挑む。新たに手に入れた力を誇示すべく、サノスはシルバーサーファーの魂をソウル・ジェムの中(ソウルワールド)に放逐する[41]。そこでシルバーサーファーはアダム・ウォーロックと出会い、サノスの行状を伝える。ウォーロックはシルバーサーファーを現実世界に帰し、サノス打倒に協力することを約束する[42]。シルバーサーファーはアベンジャーズや他のヒーローにサノスに備えるよう警告するため地球に向かう[43]。その一方で、インフィニティ・ガントレットのパワーを感知したメフィストがサノスの下に現れ、パワーの使い道を助言しようと申し出る。その裏でメフィストはガントレットをわがものとする機会を待っていた[44]

本編

第一話(1991年7月)

ドクター・ストレンジが自分の館でくつろいでいるところに突然大音響が轟く。屋根裏部屋に飛び込んだストレンジは、天井を突き破って落下してきたシルバーサーファーを発見する。意識朦朧のサーファーは「想像を絶する恐ろしい破滅が…止めなければ…サノスが復活した」と告げた。

その頃、無限の力を以ってしても愛するデスに振りむいてもらえないサノスは、虚空にデスを称える巨大神殿を出現させる。また、己の非情さをアピールするため、自分の孫娘ネビュラを腐敗した動死体に変えて見せびらかす。だがそれでもデスの歓心を得られなかったサノスは、メフィストの進言によりついに計画を実行することにした。

インフィニティ・ガントレットを嵌めた腕を掲げ、指をパチンと一つ鳴らす。たったそれだけで全宇宙の生命の半分が消去された。スパイダーマンの恋人のMJが、アベンジャーズのメンバーが、ニック・フューリーが、ドクター・ストレンジの執事が、そしてスクラル帝国でも、衛星タイタンのエターナルズのコロニーでも。運良く生き残った者は、それぞれの大切な人々の消失を知り、驚愕と絶望に捕らわれた。

第二話(1991年8月)

大消失に見舞われた地球では、火災や飛行機事故などが頻発しており、生き残ったヒーローたちが人々の救出に死力を尽くしていた。またクリー帝国では、この大消失は宿敵スクラル帝国の陰謀であるとし、報復艦隊が発進していた。半数の神々が消去されたアスガードには、ギリシャやケルトを始めとする神々が集合し、善後策を検討していた。

その時、ドクター・ストレンジの精神に何者かが接触し、サノスと戦う軍団を集めることを提案する。

エターナルズのエロスは、衛星タイタンのコロニーからテレポートされ、サノスの捕虜になる。サノスの精神操作を試みるエロスだったが、ガントレットの力で能力を封じられてしまう。

時を同じくしてドクター・ドゥームも怪しい動きを始めていた。「やがて自分が支配すべき臣民たち」を消失させられたという怒りと、この混乱の原因からさらなる科学と権力を得ようとする欲望が彼を突き動かしていたのだ。ストレンジの屋敷に侵入し、この大消失の原因をむりやり聞きだそうとしたドクター・ドゥームは、シルバーサーファーと戦闘になる。そこに割って入ったのは、ソウルワールドから現実世界に復活したアダム・ウォーロックとピップ・ザ・トロルだった。

大消失を引き起こし、加えてネビュラとエロスを様々な方法で責め苛んでもデスに振り向いてもらえないサノスは、ついに怒りを爆発させる。ガントレットの引き起こした怒りの衝撃波は銀河系の四分の一を蹂躙し、ギャラクタスが喰らおうとしていた星も砕かれてしまう。宇宙的な飢えを満たす機会を奪われたギャラクタスは激しい怒りを押さえつけ、知略をめぐらせつつ時を待つ。

第三話(1991年9月)

アベンジャーズの基地へ転移したドクター・ストレンジ、アダム・ウォーロック、シルバーサーファー、ドクター・ドゥーム、ピップは、サノスに対抗する軍団の編成をキャプテン・アメリカに持ちかける。ストレンジのテレパシーによる呼びかけに応え、ポータル(空間転移門)から地球のヒーローの生き残りが続々と現れる。

地球ヒーロー軍団の編成をキャプテン・アメリカに任せたアダムとサーファーは、新たなポータルを通って銀河の果てへ向かう。そこには、エポックとクエーサー、エターニティ、時の巨神クロノス、ロード・カオスとマスター・オーダー、ラブ&ヘイト、ストレンジャー、ギャラクタス、2体のセレスシャルズといったコズミック・ビーイングたち、そしてウォッチャーのウァトゥとリビング・トリビューナルが参集していた。

全多元宇宙の全生命体の統合体であるエターニティは、審判者リビング・トリビューナルにサノスの暴虐への懲罰を求める。しかし多次元宇宙の調和を守るリビング・トリビューナルは、今回のサノスの行動はこの宇宙における至高の地位をめぐる自然淘汰のひとつに過ぎず、「弱肉強食」は宇宙の基本原則のひとつである、として本件への関与を却下した。またウォッチャーも、傍観者たる自らの立場を表明して去った。アダムは残った他のコズミック・ビーイングたちに攻撃計画への参加をもちかける。

一方、デスの態度に業を煮やしたサノスは、完全なる愛人テラクシアを創造する。しかしそれでもデスは一顧だにしなかった。神殿の上に出現したウォッチャーを見てヒーローたちの襲来を予測したサノスは、彼らを皆殺しにすることをデスに宣言する。

時は来た。ストレンジの魔具「アガモットの眼」が大きなポータルを開く。アダムとサーファーが先行し、サノスの神殿から一光年の位置についた。ピップのカウントダウンに合わせて戦士たちがポータルをくぐり、神殿に突入する。

しかしアダムが立案したのはあまりに非情な計画であった。地球を代表するスーパーヒーローである彼らですら、陽動であり、捨て石にすぎなかったのだ。

第四話(1991年10月)

ソー、ファイアロード、ネイモア、アイアンマンがサノスに突撃する。サノスは笑いながら指を鳴らした。その瞬間、全多元宇宙の時間が停止した。停止をまぬがれたのはサノスの周囲のわずかな範囲のみである。しかし、メフィストの「デスに対して貴方様の勇気を示すのです」というささやきに応じ、サノスはパワー・ジェム以外の5個のジェムの能力を遮断する。「こうすれば奴らにも0.05%程度は勝つ望みがあろう」とうそぶき、サノスが再び指を鳴らすと時が動き出した。

ヒーローたちの攻撃がサノスに集中する。しかしそれを物ともせず、サノスの反撃が始まった。次々に殺されていくヒーローたち。最後に残ったキャプテン・アメリカは一騎討ちを挑む。サノスの拳が不壊のシールドを打ち砕き、キャップを殴り殺そうとした瞬間、ガントレット目掛けて一光年先からシルバーサーファーが超スピードで突っ込んだ。しかしわずかな差でガントレットを奪うことは出来ず、キャプテン・アメリカも死んだ。危うく敗北を免れたサノスは冷静さを取り戻し、ジェムの機能を復活させる。

アダム・ウォーロックの第一のプランは敗れた。そしてアダムはコズミック・ビーイング達を召喚する。

第五話(1991年11月)

コズミック・ビーイングたちは次元を歪めるほどの猛攻をサノスに加える。メフィストは叛意を露にし、ミストレス・デスも敵方に回った。しかしすべての攻撃は無駄だった。6つのジェムの力で全知全能を超えたサノスは彼ら全員を凍結封印し、自らを至高の神であると宣言した。

そしてついにエターニティが戦いを挑んだ。多元宇宙を吹き飛ばすほどの爆発が起こり、ついに決着がついた。サノスの精神はエターニティに取って代わり、この宇宙と同一化したのだ。その時、一瞬の隙を突いた動死体ネビュラが、無防備なサノスの肉体からガントレットをひったくった。

生気溢れる肉体を取り戻したネビュラが最初に行ったのはサノスへの復讐だった。一瞬にして無力となったサノスとテラクシアを宇宙空間に放り出したのだ。窒息したテラクシアは死に、サノスは死を覚悟した。しかしその瞬間、サノスはアダムが作ったポータルによって地球のアベンジャーズ基地に転送された。

アダムはサノスに内密の会話を求め、彼がガントレットを失うことを予期していたと告げる。サノスは自らが全能の力にふさわしくないと心の深奥で悟っており、無意識に敗北を求めたのだという。ソウル・ジェムに封じられていたウォーロックは、ジェムを持つ者の心を見通すことができたのだった。打ちのめされたサノスは説得を受け入れ、ネビュラ打倒に協力する。

形勢逆転に成功したネビュラだったが、ガントレットのもたらす超知覚と力を持て余した彼女の精神は崩壊しかけていた。

第六話(1991年12月)

アダム、サノス、シルバーサーファーらはポータルを使って神殿に転移する。死んだと思っていたサノスの挑発に乗ったネビュラは短慮な命令を下してしまう。「ガントレットを私の手に残したまま、それ以外の全てを24時間前の状態に戻す!」一瞬で世界は旧に復し、ネビュラは動死体に戻った。

自らの策が成功したことに満足し、悠々とガントレットを回収に向かうサノスだったが、次の瞬間にはネビュラが復活していた。ガントレットは着用者の思考だけで発動するのだ。

しかし間をおかず、復活したコズミック・ビーイングたちによる一斉攻撃がネビュラを襲う。ネビュラは必死の防戦を繰り広げるが、彼女にはサノスほどの精神力や経験が足りなかった。

大混乱のさなか、アダムとサーファーはソウル・ジェムの内部に転移していた。サーファーを現実世界との絆として残し、アダムは自分の存在を拡張していく。ソウル・ジェムと同化を果たしたアダムは他の5つのジェムに干渉してガントレットの調和を破る。その瞬間、エネルギーがオーバーフローしたガントレットをネビュラが取り落とす。サノスとヒーローたちは地に落ちたガントレットに殺到する。しかしガントレットを手にしたのは、実体化したアダム・ウォーロックだった。

投獄されるよりも死を選んだサノスは、ベルトに仕込んでいた核兵器を起動させ、虚空で自爆する。ネビュラはエロスによって拘引されていった。ヒーローたちはガントレットの所有権に異議を唱えるが、ウォーロックは有無を言わさず彼らを地球に送り返す。その後、ウォーロックは60日後の未来に移動し、名前のない惑星を訪問する。そこには、実は生存していたサノスが一介の農夫として暮らしていた。サノスはウォーロックに対し、力の追求を放棄して静かに内省的な生活を送るつもりだと告げる。

エピローグ

ストレンジはウォーロックを訪問し、新たなパワーに適応できたか確かめようとする。ウォーロックは宇宙から利己的な欲望と競争心を消し去るつもりだと明かす。ウォーロックはそれが戦争や不和をなくすことになると信じていたが、ストレンジの価値観はそれを許さなかった。ストレンジの魔法により、ソウル・ストーンはウォーロックに、欲望と競争心を失った生き物は単なる動物であることを見せる。ウォーロックは考えを変え、自らの行動をより慎重に選ぶことを約束する[45]

エターニティはリビング・トリビューナルを招喚し、ウォーロックがインフィニティ・ガントレットを持つにふさわしいか審判を乞う。宇宙を支配する力を持つには精神的に不適格だと断じられたウォーロックは、ジェムのうち5個を自身が選んだ守護者たちに託すことを受け入れる[46]


  1. ^ 定期的に刊行されるが、終了号があらかじめ決められているコミックブック・シリーズ。その中でも短いものはミニシリーズと呼ばれる。またこれに対し、号数を限定せず、廃刊されない限りいつまでも続くものはオンゴーイング・シリーズ英語版またはレギュラーシリーズと呼ばれる。
  2. ^ "tie-in issues"、クロスオーバー関連号。
  3. ^ 籠手、もしくは長手袋。
  4. ^ 制作者が著作権を保有する作品。アメリカのメインストリーム・コミック界では一般的ではないが、大手出版社がクリエーター・オウンド作品専門のインプリントを設立することもある[7]Dreadstar はマーベルのインプリントエピック・コミックス英語版から刊行された。
  5. ^ 月刊コミックブックの特別号で、年刊で発行されるもの。
  6. ^ マーベル社は1989年にロナルド・ペレルマンの会社マクアンドリューズ&フォーブスによって買収された[14]
  7. ^ それまでにもマーベル社のキャラクターは互いに関わり合いを持ってきたが、そのようなストーリーはいずれかのキャラクターの個人タイトルで完結するのが普通であり、他の月刊タイトルのスケジュールやプロットに直接影響を与えることはまれだった。1985年の『シークレット・ウォーズII』はマーベル社で初めて月刊タイトルとのクロスオーバーを行ったリミテッド・シリーズであった。それ以後、月刊タイトル間のクロスオーバーが行われる頻度は増えていったが、『シークレット・ウォーズII』の刊行形態が再び採用されたのは『インフィニティ・ガントレット』が初めてだった[13]
  8. ^ コミックブック制作では、原作者と作画家の間で密な共作が行われる場合もあれば、分業に近い場合もある。「マーベル・メソッド」と呼ばれる制作形態では、作画家にもある程度ストーリーの決定権や創意の余地が与えられる。完全なスクリプトを作製する方式では、作画家にとっての自由度が狭められる。
  9. ^ 当時コミック専門店の多くはバーコードリーダー英語版を導入していなかった。また出版社にとっては、このような相違点があると異なる版を見分けやすいのも利点だった。ニューススタンドは売れ残ったコミックブックを返品して払い戻しを受けることができたが、専門店にはそれが許されていなかった[24]
  10. ^ 本作と同年の1991年に刊行されたDC社の作品。
  11. ^ コミックのプライス・ガイドは複数の発行元から出されており、それらは必ずしも一致しないので、価格が落ち着いた時期やその値は正確に決められない。
  12. ^ このフィギュアセットのサノスは既存製品のリペイントである。先行版でもインフィニティ・ガントレットは付属していた。






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