アスキーネット
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/02/09 14:09 UTC 版)
歴史
実験開始〜ID4ケタ時代
利用者IDの頭3文字がascで発行された。asc0000〜asc0099までは社内用として発行され、応募した一般ユーザーにはasc0100〜が割り当てられた。書籍折込の応募用紙を使い発行された発足当初〜約一年後までにasc約7000まで発行された。アドレスを正しく書けばJUNETのユーザーにメールを送ることも出来、実際に試すものが出て問題になった。junk.test、現役女子大生(後にアスキー社員)をsigopとする麻奈美のコーヒーショップ等、以後のアスキーネットの雰囲気を特徴付けることになった掲示板が人気を博していた。この頃の通信速度は300bpsで、多くのものはカプラーを使用していた。
1985年、麻奈美のコーヒーショップが中心となり日本で最初の大規模オフ会が南青山で開かれ、二百数十人が参加した(参加者中女性は数人であった)。また、ネットを介して知り合い結婚するまでに至った日本初のカップルもやはりこのsigの常連であった。ちなみにこのカップルはわずか2週間で離婚した。
ID5ケタ時代
asc7000〜は、同じシステムを使った他のBBSシステム用に割り当てられていたため、ユーザーが1万人を超えるとIDを5桁に移行することになった。IDでユーザーの使用歴が分かってしまうシステムに問題があったため、当初のasc0000〜9999まではasc10000〜asc19999とし、新規申し込みには、asc00000〜を発行した。4桁時代のユーザーには不満を漏らすものも多かったが結果的に、その後の平和な雰囲気を生む判断だったといえよう。有料化するまでには約2万5千のIDがあり、有料化後はpcs00000〜に移行した。この頃の通信速度は300〜2400bpsで、CTERMに代表される通信ソフトの画面に表示されていくスピードは、まだ目で追えるものであった。ホストのVAX-11には、1988年の有料化までに数ギガバイト程度のデーターが溜まった。殆ど全てが文字情報であることを考えると、当時としては非常に巨大なデーターであった。
また、最初の2万までのID発行システムには重大なバグがあった。8桁のランダムな数字を割り当てるスクリプトを組んだはずであったが、実際には85634927,56349278,・・・,78563492までの8種が繰り返し現れる杜撰なデフォルトパスワードを印刷してユーザーに届けていたことが、実験開始後数年間誰にも気付かれず放置されていた。チャットで会話をしていたjunk.test常連の高校生達のグループが、受け狙いでたまたま仲間に自分のデフォルトパスワードを晒した事を発端として広まり、その後都内の高校生10数人を中心としたグループによる休眠中のIDを使ったハッキングが横行した(自分のIDでハックすればすぐにばれてinfomixのパスワード欄が*になってしまうため、「星になる。」と言われていた。また毎日IDを8つづずつインクリメント/デクリメントして、仲間には誰だかが分かる様になっていた)。2万人の登録があっても一度もログインしていないIDが殆どであったため実害は無かったが、一定期間ルート権限を奪取されており(mako-o事件)、アスキーネットのVAX-11だけでなく他のシステムへの踏み台にもなっていた。運営側は血眼になってバックドアを探したが、自分達が作ったふざけた名前のトラップが逆にバックドアに作り変えられているとは夢にも思わず、これは有料化されるまで残るに至った。1985〜1988年には、アスキーネットには常時50人〜100人の一般ユーザーがログインしていたが、常にそのうち1割程度の者がBBSシステムだけでなく公開終了したゲーム(rogue)をしたり、uucpでJUNETと繋がったBSDのシステムとして使い続けていた。また、慢性の回線不足で非常に接続しにくかったため、アスキーの社員や他のユーザーを切断して仲間をつないだり、infomixで管理されていた他のユーザーの個人情報を見る等、不正が横行した。しかしこの時代の運営側と、BBSのアクティブユーザーでもあった彼らの連夜繰り広げられる深夜の攻防により、単純なセキュリティホールは有料化までには無くなり、有料化移行は比較的安全なシステムとなった。前述のバックドアが、トラップ自体運営側にとって遊びの範疇であったことが幸いになり有料化をもってアクセスできなくなったことは、その後のアスキーネットにとって非常に幸運だったといえよう。unixといっても当時の一般のパソコンユーザーには全く馴染みが無く、攻守それぞれが互いに知り合いであった長閑な時代の象徴である。
有料化〜4ネット並立時
アスキーネットACS(Advanced Communication Service)
主にビジネスユーザーをターゲットにしたネットワーク。利用者IDの頭3文字がacsで発行された。発足直後、LANで繋がる実験システムのルート権限が奪取されていたため、最初に数千枚送付したIDとパスワードは外部に漏れてしまい、全て印刷しなおすことになり損害を出したといわれている。ACS自体は当初から実験時代のアスキーネットとは違い、VT100エスケープシーケンスを使った安全で使いやすいBBSシステムを使用、その後のスタンダードとなった。
アスキーネットMSX(ASCII NET MSX)
主にMSXユーザーをターゲットにしたネットワーク。アスキーはマイクロソフトとともにMSX規格パソコンの普及を図っていた。利用者IDの頭3文字がmsxで発行された。
アスキーネットPCS(Public Communication Service)
ホビー向けのネットワーク。実験時代のアスキーネットの名称を改め続けて運営されその後有料化された。特徴的な場所として練習用掲示板(junk.test)があった。利用者IDの頭3文字がpcsで発行され、それまでのasc00000〜のIDもpcs00000〜に移行した。
アスキーネットDPI(ASCII NET DELPHI)
米国のパソコン通信サービスDELPHIへのゲートウェイサービスを主としたネットワーク。利用者IDの頭3文字がdpiで発行された。
統合後
それまでの利用者IDであるacs,dpi,msx,pcsの4種は統合後もそのまま使用可能であった。統合後に加入した利用者のID頭3文字はnetで発行された。
パブリックステージ
統合前までのsigがパブリックステージとなった。
グループステージ
パブリックステージとは別に同好者が申請し新規にsigを作成できた。投票により利用者中からsigopが選ばれた。
- ^ “アスキーネットが8月でサービス終了”. INTERNET Watch (1997年5月2日). 2012年9月3日閲覧。
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