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パラメトロン【parametron】


パラメトロン

(parametron から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/11/27 19:10 UTC 版)

パラメトロン: parametron)はフェライトコアのヒステリシス特性による、パラメータ励振現象の分周作用を利用した論理素子である。1954年に当時東京大学大学院理学部高橋秀俊研究室の大学院生であった後藤英一が発明した。真空管やトランジスタの使用量を大幅に削減してコンピュータを構成できるとして、当時としては多数のパラメトロン式コンピュータが日本で建造された。比較対象としてリレーよりは速く機械的な接点も無いなどの利点はあったものの、その後すぐに主流となった接合型トランジスタの性能向上が圧倒的で動作周波数でパラメトロンを上回ったこと、トランジスタにはラジオをはじめとする広範囲の応用があったのに対して、パラメトロンは論理素子専用という点でも不利であったことなどにより、1960年代にはほぼトランジスタによって置き換えられ利用されなくなった[注 1]


注釈

  1. ^ 最後期の製品例としては、速度をたいして要しない卓上計算機に利用した、初のトランジスタ式電卓に1年先行している「アレフゼロ」がある。
  2. ^ 『計算機屋かく戦えり』ハードカバー版 p.38 の、後藤の言によればトランジスタは「8000円」だが、当時についての別の資料では、たとえば ETL Mark IVfour (『日本のコンピュータの歴史』p. 146)で、和田弘が電話交渉で定価3000円のところを1500円にまけさせた、とある。点接触か接合か、入手経路は、などいろいろ要素があり、正確な数字を挙げるのは難しい。
  3. ^ 最初期(点接触型Trと併存していた頃)の接合型Trは速度が遅かったため、コンピュータ用としては、不安定という要素があっても点接触型を使いたいという理由があった。なお、パラメトロンは接合型よりも遅い。
  4. ^ 高橋秀俊の自伝によれば、本格的に作る気になったのはEDSACについて知った後だという。
  5. ^ 励振の原振動についてキャンセルするために、二個が必要(互いに逆になるようにする)。
  6. ^ 詳細には、励振の原振動の周波数を f とすると、並列接続するキャパシタとで構成される共振回路の共振周波数がそれの半分の f/2 となるような回数。
  7. ^ コアの中を電流が通ればいいので、別々の電線で直流と交流を流すのでもよい。
  8. ^ この磁性に関する点はかなりクリチカルなもののようであり、現在店頭などで入手可能なコア材での実験は難しかったという話がウェブページなどに見られる。論理演算等の動作を目的とした再現実験等では、敢えて完全な再現を目指すことはせず、バリキャップ素子を利用した「Cの側を変化させるパラメトロン」が使われている。
  9. ^ 『計算機屋かく戦えり』ハードカバー版 p.40。なお、おそらく最速はPC-2(FACOM 202)の動作周波数60kHz(励振周波数6MHz)。『パラメトロン計算機』図2-16によれば試験回路において200kHzの記録がある)。

出典

  1. ^ 超伝導回路を用いてパラメトロンを実現 - 理化学研究所
  2. ^ 『計算機屋かく戦えり』ハードカバー版 p.40
  3. ^ 『日本のコンピュータの歴史』p. 114
  4. ^ 『日本のコンピュータの歴史』pp. 56-57 より「パラメータ励振現象そのものは以前から知られていたが,その位相弁別機能を2値素子として利用し,励振の断続によって増幅と多数決に基づく論理演算ができることに気づいたことに,後藤の独創があった.」
  5. ^ 『日本のコンピュータの歴史』(1985年)p. 115
  6. ^ 『パラメトロン計算機』p. 7
  7. ^ ETL Mark IV A トランジスタ式計算機-コンピュータ博物館
  8. ^ US2815488A - Non-linear capacitance or inductance switching, amplifying, and memory organs - Google Patents:米国特許2815488
  9. ^ 小山俊士、二つのパラメトロン : フォン・ノイマンと後藤英一の特許をめぐって 『哲学・科学史論叢』 2014年 16巻 p.57-81, NAID 120005367873、東京大学教養学部哲学・科学史部会
  10. ^ : quantum flux parametron、QFP
  11. ^ 『計算機屋かく戦えり』1996年版 p.44
  12. ^ http://dwave.files.wordpress.com/2010/10/20100909_d-wave_unit_cell_overview_i_richard_harris.pdf の33枚目(資料中の頁番号では28/45)
  13. ^ Reversible logic gate using adiabatic superconducting devices doi:10.1038/srep06354
  14. ^ 内山剛、牧野正義、毛利佳年雄「高温超伝導磁気マルチバイブレータによる位相記憶論理素子」『日本応用磁気学会誌 volume=16』第3号、1992年、 556-559頁、 doi:10.3379/jmsjmag.16.556
  15. ^ ナノ機械パラメトロン素子の研究, http://kaken.nii.ac.jp/en/p/20246064 
  16. ^ 超伝導回路を用いてパラメトロンを実現, http://www.riken.jp/pr/press/2014/20140725_1/digest/ 


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