Builder.ai
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/07/20 15:47 UTC 版)
以前の社名
|
Engineer.ai |
---|---|
業種 | ソフトウェア開発 人工知能 |
創業者 | サチン・デブ・デュガル |
解散 | 2025年5月 |
本社 | ![]() |
主要人物
|
サチン・デブ・デュガル(CEO、2016年 - 2025年) Manpreet Ratia(CEO、2025年) |
製品 | モバイルアプリ開発 ウェブ開発 |
Builder.ai(ビルダー・ドット・エーアイ、別名称: Engineer.ai Corporation[1])は、かつて存在したスマートフォン・アプリケーション開発企業である。主に英国と米国に拠点を置いていたほか、シンガポールおよびインドにも小規模な子会社が置かれていた[2]。AI(人工知能)を活用してアプリ開発のスピードを大幅に向上させていると主張しており、2023年にはカタール投資庁の資金調達ラウンドで約15億ドルの評価を受けていたが[3]、同社の保有するAI能力に対する疑惑[4]や財務状況の虚偽報告などが問題となったのち、2025年に倒産手続きを開始するに至った。
事業と破綻までの経緯
同社はAI(人工知能)を用いることによりウェブサイトやアプリの作成を「ピザを頼むのと同じくらい簡単に」できるようになると宣伝して、投資家を引き付けていた[2]。
しかし2019年、同社がマーケティング上開発の過程においてAIを用いていると広告していたこととは裏腹に、コーディング作業のほとんどがAIではなく人間のエンジニアにより行われていたことが、ウォール・ストリート・ジャーナルにより報道された[5]。
他方、2023年にはマイクロソフトやカタール投資庁などの投資家から2億5000万ドルの資金調達を受けていた[6]。当初マイクロソフトは、Builder.ai の技術を同社の Azure ソフトウェアに統合することを計画していた[7]。
2025年5月、Builder.ai がもう一つのインド企業 VerSe との間で循環取引を行っていることが、ブルームバーグ・ニュースによって告発された。VerSe 共同創設者の Umang Bedi はこの主張を否定し、Builder.ai 側はコメントを控えた。ブルームバーグによれば、両社がアプリ開発サービスとマーケティング・サービスというそれぞれのサービスに対して互いに同じ金額を支払うことで、Builder.ai の2021年から2024年までの間の収益データの水増しが慣行として行われてきたという[8]。別の報道では、同社の売上高が20パーセント以上水増しされたとしている。2025年、同社は2023年以降の財務状況を検証する監査人を雇った。同社は2024年半ばには、2024年下半期の収益予想を25パーセント引き下げていた[6]。
2025年2月27日、サチン・デブ・デュガルが同社のCEOを辞任することが発表され、Manpreet Ratia が次期CEOに指名された。デュガルの取締役としての地位と称号「チーフ・ウィザード」は維持された。加えて同年に、取締役の議席数を9席から5席に減らし、さらにデュガルに対してはもともと保有していた5議席のうち4議席を放棄することが要求された[6]。5月20日、Ratia は社内会議にて従業員に対し、会社資金が枯渇し、同社が破産手続きに入ることを通達した[9]。同社は従業員の80パーセントに当たる約1000人ほどを解雇した[7]。2025年初頭には、多額の負債と資金残高の不足に対応するため、一部の株主が7500万ドルを同社に投じていた[2]。
2025年5月、同社は倒産手続きに入ることを発表した。フィナンシャル・タイムズは、2024年10月に借り入れた5000万ドルが債権者によって差し押さえられたことがきっかけとなったとしている[10]。一方デュガルは出資者に対して会社を買い戻すことができないか交渉を模索している[2]。
脚注
- ^ Silberling, Amanda (2025年5月20日). “Once worth over $1B, Microsoft-backed Builder.ai is running out of money” (英語). TechCrunch. 2025年6月4日閲覧。
- ^ a b c d O'Murchu, Cynthia; Smith, Robert; Heal, Alexandra (2025年5月23日). “Builder.ai founder plots potential deal to buy failed company”. Financial Times. オリジナルの2025年5月30日時点におけるアーカイブ。 2025年6月4日閲覧。
- ^ “マイクロソフト出資の英AI企業、破綻前から米連邦検察の精査対象”. Bloomberg.co.jp (2025年5月27日). 2025年7月20日閲覧。
- ^ Purnell, Newley; Olson, Parmy (2019年8月14日). “AI Startup Boom Raises Questions of Exaggerated Tech Savvy” (英語). Wall Street Journal. ISSN 0099-9660. オリジナルの2025年6月3日時点におけるアーカイブ。 2025年6月4日閲覧。
- ^ “Builder.ai coded itself into a corner – now it's bankrupt”. The Register. (2025年5月21日)
- ^ a b c “Microsoft-Backed Startup Builder.ai Hires Auditors to Investigate Inflated Sales”. Bloomberg News. (2025年3月31日). オリジナルの2025年4月1日時点におけるアーカイブ。
- ^ a b “Builder.ai collapses after revelation that its "AI" was hundreds of engineers” (英語). TechSpot (2025年6月3日). 2025年6月4日閲覧。
- ^ “Builder.ai Faked Business With Indian Firm VerSe to Inflate Sales, Sources Say” (英語). Bloomberg.com. オリジナルの2025年5月30日時点におけるアーカイブ。 2025年6月4日閲覧。
- ^ Speed, Richard (2025年5月21日). “Builder.ai coded itself into a corner – now it's bankrupt”. The Register
- ^ Smith, Robert; Heal, Alexandra (2025年5月22日). “Microsoft-backed Builder.ai collapsed after finding potentially bogus sales”. Financial Times. オリジナルの2025年5月28日時点におけるアーカイブ。 2025年6月5日閲覧。
- Builder.aiのページへのリンク