谷山-志村定理とは? わかりやすく解説

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谷山–志村予想

(谷山-志村定理 から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/12 06:16 UTC 版)

谷山–志村予想(たにやましむらよそう、: Taniyama–Shimura conjecture)とは、「有理数体上に定義された楕円曲線はすべてモジュラーであろう」という予想である。1955年日本数学者谷山豊によって提起され、1960年代以降に数学者の志村五郎によって定式化された。


注釈

  1. ^ コンラッドとダイアモンド、テイラーの3人はワイルズの学生である。Andrew John Wiles - Mathematics Genealogy Project 参照。
  2. ^ 飯高・吉田 (1994, p. 178) にある通り、志村は一貫してかつ意識的にこの予想に言及することを避けてきたので、「志村による定式化」と言ってもおそらく出版された志村の学術論文の中で以降に述べるような定式化を見つけることはできないと思われる。しかし、Langlands (1997, p. 12) に「Shimura’s reformulation」という言葉が見えるように、以降に述べるような代数幾何学的な定式化を「志村による定式化」と呼ぶようである。また、志村 (2008) の付録三においても、この代数幾何学的な定式化を志村は「私の予想」と呼んでいる。
  3. ^ ここに挙げた参考文献では「非定数有理写像」ではなく「全射の射」が存在する、と定式化しているが、非特異かつ基礎体上固有な代数曲線についてはどちらでも同じことになる。The Stacks project, Tag 0BY1Rational map on smooth projective curveMorphism between curves constant of surjectiveを参照。
  4. ^ モジュラー方程式という2変数の多項式があり、これで定義される曲線を非特異化したものが X0(N)Q 上同型になる[8]。しかしこの多項式は特異点を持つので、「この曲線には明示的に定義が与えられ、整数係数を持つ」という記載の根拠になり得ない。こうした研究があることを考えると、X0(N) の定義方程式を見つけることは非自明な問題と思われる。したがって「この曲線には明示的に定義が与えられ、整数係数を持つ」という記載は妥当ではないと考えられる。
  5. ^ Diamond & Schurman (2005, p. 292) では、この整数を解析的導手と呼び、これが楕円曲線の導手に等しいことをモジュラー性定理の主張の一部としている[11]
  6. ^ これは「followed if need be by an isogeny.」の翻訳と思われ、翻訳元の英語版に明記はないものの Knapp (1992, p. 390) が出典になっているものと思われる。この文献では follow を「写像の合成」の意で使っているようなので follow を「従い」と訳すのは誤訳だと思われる。また、同種の合成が必要なのはモジュラー性定理を「任意の有理数体上の楕円曲線は(同種による違いを除き)モジュラー曲線から Shimura construction で得られる」といった形で定式化するときであり、ここでの定式化であれば同種を持ち出す必要はないと思われる。
  7. ^ Cremona (1997, p. 47) にあるように、「モジュラのパラメタ表示」があれば、それで楕円曲線上の正則微分形式を引き戻すことで新形式 f が得られるので、この定式化では同種の楕円曲線に取り替える必要はない。
  8. ^ 「整数をフーリエ係数に持つ」の意と思われる。
  9. ^ Cremona (1997, p. 47) によれば、「新形式の生成する写像」が「モジュラのパラメタ表示」になるのではなく、新形式の不定積分により定義される写像が「モジュラのパラメータ表示」になる。
  10. ^ 谷山は谷山・志村予想を正確な形で述べたことはない[12]ことには注意が必要。
  11. ^ 楕円曲線が同種ならその L 函数は等しく[17]、この L 函数に対応するカスプ形式は定義より唯一であることによる。
  12. ^ 飯高・吉田 (1994, p. 177) にセールとヴェイユに話したことが書かれている。
  13. ^ ラング (1995, p. 1303) では「1962年~1964年」となっている。
  14. ^ エーリッヒ・ヘッケによるほぼ同じタイトルの論文があり、掲載された雑誌も同じく Mathematische Annalen である[47]
  15. ^ ちなみに普通ヴェイユ予想といえば非特異代数多様体上の合同ゼータ関数に関する定理のことをさす。
  16. ^ 一方、ラングは70年代前半に谷山の問題が広く配布された、と言っている[45]

出典

  1. ^ Diamond & Schurman 2005, p. vii.
  2. ^ Zagier 2008, p. 46.
  3. ^ Zagier 2008, p. 47.
  4. ^ Mazur, B. (1991). “Number theory as gadfly”. American Mathematical Monthly 98 (7): 606. doi:10.2307/2324924. ISSN 0002-9890. https://doi.org/10.2307/2324924. 
  5. ^ Langlands 1997, p. 1.
  6. ^ Langlands 1997, p. 12. Except for n = 1 and n = 2,these are scarcely accessible at present. と書いてある。
  7. ^ Diamond & Schurman 2005, p. 292.
  8. ^ Milne 2006, p. 186.
  9. ^ 「modular parametrization of level N」をGoogle検索する
  10. ^ Diamond & Schurman 2005, p. 63.
  11. ^ Diamond & Schurman 2005, p. 356.
  12. ^ a b 志村 2008, 付録三.
  13. ^ a b Diamond & Schurman 2005, p. 362.
  14. ^ Diamond & Schurman 2005, p. 195.
  15. ^ Cremona 1997, pp. 24–25, 47.
  16. ^ a b c Diamond & Schurman 2005, p. 244.
  17. ^ Milne 2006, p. 196.
  18. ^ Diamond & Schurman 2005, p. 227.
  19. ^ Diamond & Schurman 2005, p. 231.
  20. ^ Diamond & Schurman 2005, p. 211.
  21. ^ Diamond & Schurman 2005, p. 215.
  22. ^ a b c d Diamond & Schurman 2005, p. 246.
  23. ^ Diamond & Schurman 2005, p. 241.
  24. ^ Diamond & Schurman 2005, p. 234.
  25. ^ Diamond & Schurman 2005, p. 359.
  26. ^ a b Diamond & Schurman 2005, p. 229.
  27. ^ 黒川ほか 2005, p. 590.
  28. ^ J.E. Cremona, Algorithms for Modular Elliptic Curves(second edition), Cambridge University Press, 1997, ISBN 978-0521598200.
  29. ^ 彌永昌吉「代数的整数論に関する国際会議について」『数学』第7巻第4号、1956年、193–193頁、doi:10.11429/sugaku1947.7.193 
  30. ^ 問題, p. 268.
  31. ^ a b 問題, p. 269.
  32. ^ 飯高・吉田 1994, p. 179.
  33. ^ a b 黒川ほか 2005, p. 589.
  34. ^ 足立 1995, p. 188.
  35. ^ 足立恒雄『フェルマーの大定理:整数論の源流』、ちくま学芸文庫、2006年、ISBN 4-480-09012-6、pp. 312–313.
  36. ^ Shimura 1989, p. 194.
  37. ^ 志村 2008, pp. 250–251.
  38. ^ a b c ラング 1995, p. 1302.
  39. ^ Shimura 1989, p. 195.
  40. ^ a b 本会議記録 1956, p. 217.
  41. ^ 飯高・吉田 1995, p. 178.
  42. ^ a b 足立 1995, p. 189.
  43. ^ Shimura 1989, p. 192.
  44. ^ a b ラング 1995, p. 1303.
  45. ^ a b c d e f ラング 1995, p. 1304.
  46. ^ Serre 2002, p. 57.
  47. ^ Hecke, E. (1936). “Über die Bestimmung Dirichletscher Reihen durch ihre Funktionalgleichung”. Mathematische Annalen 112: 664–699. https://eudml.org/doc/159847 2022年12月29日閲覧。. 
  48. ^ a b Serre 2002, p. 55.
  49. ^ a b c d e f g Serre 2002, p. 56.
  50. ^ a b Rosen 2000, p. 476.
  51. ^ Wiles 1995a, p. 443.
  52. ^ ラング 1995, p. 1306.
  53. ^ 志村 2008, 十九.
  54. ^ Shimura 1989.
  55. ^ a b ラング 1995, p. 1301.
  56. ^ ラング 1995, p. 1307.
  57. ^ Milne 2006, p. 210.
  58. ^ Rosen 2000, p. 475.
  59. ^ 足立 1995, p. 191.
  60. ^ Rosen 2000, p. 475f.
  61. ^ Lang 2001, p. 51.


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