時空代数
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/08/24 13:30 UTC 版)
時空代数(じくうだいすう、spacetime algebra, STA)は、物理学における時空の表現にクリフォード代数 Cl1,3(R)、または幾何代数 G(M4) を応用するものである。時空代数は、特殊相対性理論、ディラック方程式、マクスウェル方程式、一般相対性理論などの相対論的物理全体を統一的かつ座標に依存しない形式で記述する枠組みを提供する。また、古典物理学、量子力学、相対論的量子力学の間にある数学的な隔たりを縮める役割も果たす[1]:ix。
時空代数はベクトル空間の拡張として、ベクトルのみならず双ベクトル(面積や回転に対応する向き付き量)やブレード(高次元体積に対応する量)を扱うことができる。これにより、回転、反射、ローレンツ変換などの操作が自然に定式化される。また、時空代数は特殊相対論におけるスピノールの親代数としても機能する[2]:333。これらの性質により、物理学の基本方程式の多くが簡潔な形で表現され、幾何学的な理解が促進される[1]:v。
ディラック代数も時空代数と同じくクリフォード代数 Cl1,3 であるが、時空代数が実スカラーを用いるのに対し、ディラック代数は複素スカラーを用いる。時空代数における時空分割は、Algebra of Physical Space (APS) またはパウリ代数と呼ばれる手法と類似しており、APSでは時空をパラベクトル(3次元ベクトル空間と1次元スカラーの結合)として表現する。[3]:225–266
構造
時空代数における任意のベクトル対 a, b に対して、以下の積が定義される:
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