多重下請け構造
多重下請け構造
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/09/14 22:20 UTC 版)
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多重下請け構造[要読み仮名]とは、発注者から委託された業務を元請け企業が、二次請け企業、さらにその下層の企業に流れていく構造のことである[1]。
建築業界では6次下請け、IT業界では7次下請けといった極端な事例も見られ、多くの問題が発生している[2][3][4]。
概要
多重下請け構造は、ITや広告、建設、製造、そして物流といった業界で広く発生している。これらの業界には中小企業が数多く存在していること、零細企業や個人事業主でもビジネスを行える点が共通している[5]。
業務が上流から下流へと移るにつれて、下流にあたる中小零細事業者ほど、価格交渉力や営業力が相対的に弱くなる傾向がある。その結果、自然と多重下請けの仕組みが構築され、加えて、2次下請けや3次下請けといった階層がさらに細分化し、複数の層にわたるため、「多重下請け構造」と呼ばれている[5]。
問題点
責任の所在が曖昧になりやすい
多重下請け構造ではトラブルが起きた際に、責任の所在が曖昧になりやすい。クライアントからクレームが入っても、元請けは「当社の責任ではない」と反論する場合が多々みられる[6]。
また、多重下請けでは元請けがほとんど開発に関わっていない場合もあり、元請けが下請けに責任転嫁するケースも多い。トラブルが起きても、開発のどのフェーズで問題が起きたのかを調べるだけでも時間がかかり、トラブルへの対応が遅くなることがある[6]。
エンジニアのスキルアップが難しい
多重下請け構造では、優秀なエンジニアが育ちにくいと言われることが多々ある。多重下請けでは、三次請けや四次請けのエンジニアが、一機能の部品単位やモジュール単位の案件など下流工程が細分化された仕事ばかり任されるため、エンジニアがスキルアップをしづらい環境となっている[6]。
また、多重下請けでは、一次請けや二次請けのエンジニアも管理業務が中心となり、開発のスキルアップがしにくい。特定の業務にしか取り組まなくなり、開発から離れた仕事ばかりこなすことになるため、エンジニアとしてのスキルの向上が見込みにくくなる[6]。
多重下請け構造が生まれる理由
雇用流動性が低い社会的背景
雇用流動性とは、人材が自由に企業を移りながら働き続けられることを指す。日本は、長らく終身雇用を前提として人材を確保してきたため、現代でも雇用流動性が低く、一時的に人員ニーズが高まっても、柔軟な雇用調整が難しい構造になっている[7]。
受けた案件を自社のリソースだけで対応できない場合、外部に業務を委託せざるを得ず、一次下請けも同様に、自社だけで対応できなければ、二次下請けに外注し、結果として多重下請け構造が発生する[7]。
人的コストを抑制したい企業の思惑
IT業界の多重下請け構造は、社会や企業のIT化進行と深く関わりがある。1980年代以降、IT化の進行とともに、元請けは多くのIT案件を受注したが、人材需要が急激に高まった元請け企業は、自社で人材を育成するのではなく、外注によって案件を遂行しようとした。そして、自社でIT人材を確保し育成する機運が高まらなかったことにより、現在のシステムエンジニアリング業界では多重下請け構造が蔓延している[7]。
脚注
- ^ “IT元請けとは?下請けとの違いや多重下請け構造について解説”. システム開発のプロが発注成功を手助けする【発注ラウンジ】 (2025年5月29日). 2025年9月6日閲覧。
- ^ 山本太郎応援ちゃんねる (2025-01-08), ⑰「ひどいピンハネ、嫌がらせで追い詰められる下請け事業者達」 #山本太郎 #れいわ新選組 #shorts 2025年9月6日閲覧。
- ^ “SIerの多重下請け構造とは?問題点やおすすめの転職先を紹介”. レバテックキャリア. 2025年9月6日閲覧。
- ^ “なぜSIerは下請会社から人をかき集めないとソフトウェア開発できないのか?|gami | エンジニア”. note(ノート) (2022年4月3日). 2025年9月6日閲覧。
- ^ a b 利康, 菅原 (2025年3月4日). “物流業界の多重下請け構造とは?背景や実態、問題点、是正に向けて荷主や元請けがすべきことなどを解説”. ハコブログ | 株式会社Hacobu - 物流の今と未来を伝える. 2025年9月5日閲覧。
- ^ a b c d “多重下請け構造は解決できる?問題の本質とエンジニアが抜け出す方法を紹介”. HiPro Tech. 2025年9月5日閲覧。
- ^ a b c “多重下請け構造はなぜ生まれるのか|概要と問題点、脱却する方法を解説”. 株式会社アイエスエフネット (2024年4月19日). 2025年9月5日閲覧。
関連項目
- 多重下請け構造のページへのリンク