外的妥当性とは? わかりやすく解説

Weblio 辞書 > 辞書・百科事典 > 百科事典 > 外的妥当性の意味・解説 

外的妥当性

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/04/03 10:26 UTC 版)

外的妥当性(がいてきだとうせい、: External validity)とは、科学的研究の結論をその研究の文脈外に適用することの妥当性を意味する[1]。言い換えれば、研究の結果を他の状況、人、刺激、時代に一般化または移転できる範囲をいう[2][3]一般化可能性(Generalizability)とは、研究対象となった集団から得られた研究結果をより広い集団に適用できることを指し、移転可能性(Transportability)とは、得られた研究結果を全く別の対象集団に適用できることを指す[2][4]。それとは対照的に内的妥当性とは、特定の研究の文脈内で導き出された結論の妥当性を意味する。

外的妥当性の数学的分析は、異質な集団間での一般化が可能かどうかの判断と、有効な一般化を生み出す統計的・計算的手法の考案に重要である[5]

外的妥当性を確立する際、学者は研究の「範囲」を特定する傾向があり、これは研究の理論や主張の適用可能性や限界を指す[2]。これには、研究の対象と、対象が代表する広範な集団を定義することが含まれる[2]

外的妥当性に影響する要素

外的妥当性への脅威とは、特定の研究の調査結果から一般化を行う際に、どのように誤りが生じる可能性があるかを説明するものである[6]。殆どの場合、1つの要因(独立変数)の効果が他の要因に依存する場合に制限される。従って、外的妥当性に対する脅威はすべて統計的交互作用英語版として表現できる[7]。いくつかの例を挙げる。

  • 適性と治療の相互作用:サンプルは独立変数と相互作用する特定の特徴を持ち、一般化可能性を制限することがある。例えば心理療法の比較研究では、しばしば特定のサンプル(例えば、ボランティア、重度のうつ病、合併症なし 等)が採用される。これらのサンプル患者に対して心理療法が有効であることが示された場合、非ボランティアや軽度のうつ病患者、他の障害を併発している患者に対しても有効だと言えない場合は、研究の外的妥当性は制限される。
  • 状況による治療の相互作用:研究のすべての状況的特異性(治療条件、時間、場所、照明、騒音、治療投与、研究者、時期、測定の範囲と程度 等)は、一般化可能性を制限する可能性がある。
  • 事前テストと治療の相互作用:もし因果関係が事前テストを実施した場合にのみ見出されるのであれば、これも所見の一般性を制限する。これは時に「感作 (sensitization)」と呼ばれることがあるが、これは事前テストによって人々が治療操作に対してより敏感になるからである。

研究の外的妥当性は内的妥当性によって制限されることに注意が必要である。研究内で行われた因果推論が無効であれば、その推論の他の文脈への一般化も無効となる。

CookとCampbell[8]は、ある集団に一般化する(generalize to)ことと、ある背景因子の異なるレベルにより定義される部分集団全体に一般化する(generalizing across)こととの間に重要な区別をつけた。Lynchは、歴史のスナップショットとして以外には意味のある集団に一般化する(to)ことは殆ど不可能であるが、ある原因がある従属変数に及ぼす影響が 背景因子が異なる部分集団間でどの程度一般化される(across)かを検定することは可能であると主張している。その為には、調査対象の治療効果が1つ以上の背景因子との相互作用によって調整されているか否かを検証する必要がある[7][9]

妥当性の強化

妥当性を低下させる問題の多くは体系的な方法で無力化または中和され、妥当な一般化が可能となる。具体的には、ある母集団から得られた実験結果を「再処理 (re-processed)」または「再較正 (re-calibrated)」することで母集団の違いを回避し、実験が実施できない第二の母集団において有効な一般化を生み出すことができる。PearlとBareinboim[5]は一般化の問題を (1)有効な再較正が可能なもの、(2)外的妥当性が理論的に不可能なもの、の2つに分類した。グラフに基づく因果推論計算を用いて[10]、彼らは有効な一般化を可能にする問題の必要十分条件を導出し、必要な再較正が存在する場合には自動的に生成するアルゴリズムを考案した[11]。これにより外的妥当性の問題はグラフ理論の演習にまで縮小され、一部の哲学者は問題は解決されたと結論付けるに至った[12]

外的妥当性の問題の重要なバリエーションは、選択バイアス標本抽出バイアス英語版とも)を扱う。即ち、研究が意図された集団の代表的でないサンプルで実施されたときに生じるバイアスである。例えば大学生に対して実施した臨床試験の結果を、年齢、教育、収入などの属性が一般的な学生の属性と大幅に異なる集団全体に一般化できるか否かを知りたい場合がある。

BareinboimとPearlのグラフに基づく方法は、サンプル選択バイアスを回避できる条件を特定し、これらの条件が満たされると母集団全体の平均因果効果の不偏推定量を作成する。異なる集団間の一般化と サンプリングが不適切な研究からの一般化との主な違いは、集団間の差異は通常、年齢や民族などの既存の要因によって引き起こされるのに対し、選択バイアスは患者が研究から脱落したり負傷の重症度によって患者が選択されたなどの治療後の条件によって引き起こされることが多いという点にある。選択が治療後の要因により左右される場合、バイアスのない推定を確実にするために従来とは異なる再較正法が必要となり、その方法は問題のグラフから容易に得られる[13][14]

年齢が治療効果を個人ごとに変化させる主な要因であると判断された場合、サンプルの学生と一般集団の年齢差により、その集団における平均治療効果の推定値が偏る。しかしこのような偏りは、簡単な再重み付け手順で修正できる。学生の部分集団における年齢固有の効果を取り出し、一般集団における年齢分布を用いてその平均を計算する。これにより、一般集団における平均治療効果の不偏推定値が得られる。一方、研究サンプルと一般集団を区別する関連因子がそれ自体、治療によって影響される場合は、別の再重み付けスキームを使用する必要がある。この因子をZと呼び、実験標本のYに対するXのz特異的効果を再び平均し、今度はZに対するXの「因果効果」によって重み付けする。言い換えると、新しい重みは治療X=xが全集団に実施されていたらレベルZ=zを達成したユニットの割合を意味する。この介入確率は、Do微積分[15]




英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  
  •  外的妥当性のページへのリンク

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「外的妥当性」の関連用語

外的妥当性のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



外的妥当性のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの外的妥当性 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2025 GRAS Group, Inc.RSS