咳中枢とは? わかりやすく解説

Weblio 辞書 > 辞書・百科事典 > 百科事典 > 咳中枢の意味・解説 

咳中枢

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/08/19 07:53 UTC 版)

咳中枢(せきちゅうすう、: Cough center)は、咳嗽を制御するの領域である。脳幹延髄にあり、咳止め薬は咳中枢に作用する[1]

構造

咳中枢の正確な位置と機能は、いまだに明らかになっていない。1838年ヨハネス・ペーター・ミュラーは延髄が咳反射英語版を調整していることを観察したが、実験動物麻酔薬としてモルヒネアヘンなど咳を強く抑制する薬が一般的に使用されていたため、研究は遅れていた。さらに、咳中枢は呼吸中枢による呼吸リズム生成ネットワークと重複する可能性が高く[2]、そのため、咳中枢は特定の領域というよりは、脳幹の呼吸および反射ネットワーク内の機能であると考えられる。

咳受容体は孤束核英語版中継ニューロンに投射され、その中継ニューロンから呼吸ネットワークの他の部分に投射される。特に前ベッツィンガー複合体英語版は、咳反応の神経振動子として働く可能性がある。尾側延髄縫線核(暗縫線核と大縫線核)の一部は咳反応に不可欠であることが知られている。パターン生成と調節に関与する可能性のある他のシステムには、脳橋呼吸グループ、外側被蓋野、深部小脳核がある[3]。これらに基づいて、呼吸・咳・嚥下をつかさどる仕組みが構築されている[4][5]。咳は随意的な行動として起こったり抑制されたりするが、これは脳の高次システムからの制御を示唆している。自発的、抑制的、誘発的な咳の神経画像英語版によると、多くの皮質領域が関与し、非随意的な咳嗽においても重要である可能性がある。対照的に、随意的な咳は髄質系を活性化しないようである[6]

脚注

  1. ^ Bolser, D. C. (2009). “Central Mechanisms II: Pharmacology of Brainstem Pathways”. Pharmacology and Therapeutics of Cough. Handbook of Experimental Pharmacology. 187. pp. 203–217. doi:10.1007/978-3-540-79842-2_10. ISBN 978-3-540-79841-5. PMC 2928557. PMID 18825342 
  2. ^ J.G. Widdicombe, Neurophysiology of the Cough Reflex, Eur Respir J, 1995, 8, 1193–1202
  3. ^ R. Shannon, D.M. Baekey, K.F. Morris, S.C. Nuding, L.S. Segers, B.G. Lindsey. Production of reflex cough by brainstem respiratory networks, Pulmonary Pharmacology & Therapeutics 17 (2004) 369–376
  4. ^ Bolser DC, Pitts TE, Morris KF. The use of multiscale systems biology approaches to facilitate understanding of complex control systems for airway protection. Curr Opin Pharmacol. 2011 Jun;11(3):272-7. Epub 2011 Jul 1.
  5. ^ Russell O’Connor, Lauren S. Segers, Kendall F. Morris, Sarah C. Nuding, Teresa Pitts, Donald C. Bolser, Paul W. Davenport, and Bruce G. Lindsey, A Joint Computational Respiratory Neural Network-Biomechanical Model for Breathing and Airway Defensive Behaviors. Front Physiol. 2012; 3: 264. doi:10.3389/fphys.2012.00264
  6. ^ Stuart B. Mazzone, Leonie J. Cole, Ayaka Ando, Gary F. Egan, and Michael J. Farrell. Investigation of the Neural Control of Cough and Cough Suppression in Humans Using Functional Brain Imaging. The Journal of Neuroscience, 23 February 2011, 31(8): 2948-2958; doi:10.1523/JNEUROSCI.4597-10.2011



英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  
  •  咳中枢のページへのリンク

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「咳中枢」の関連用語

咳中枢のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



咳中枢のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの咳中枢 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2025 GRAS Group, Inc.RSS