優しい世界へとは? わかりやすく解説

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優しい世界へ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/02/24 09:34 UTC 版)

優しい世界へ
ダンダダン』のエピソード
話数シーズン1
第7話
監督松永浩太郎
脚本瀬古浩司
初放送日2024年11月15日 (2024-11-15)
時間23分
エピソード前次回
← 前回
「ヤベー女がきた」
次回 →
「なんかモヤモヤするじゃんよ」

優しい世界へ」(やさしいせかいへ)は、龍幸伸の同名漫画を原作とするテレビアニメ『ダンダダン』の第7話。前回のエピソードでは妖怪・アクロバティックさらさらと、綾瀬桃・高倉健・白鳥愛羅との戦いが描かれた。第7話では戦いが終わり、アクロバティックさらさらの妖怪になる前の経歴や、愛羅への愛着の理由などが描かれる。

このエピソードはサイエンスSARUによって制作され、松永浩太郎が演出瀬古浩司が脚本、牛尾憲輔が音楽、榎本柊斗が絵コンテ作画監督を担当した。アクロバティックさらさらの過去のシーンが漫画よりも大きく重視されており、スタッフは制作が難しかったと振り返った。2024年11月15日にMBSTBS系列で放送され、NetflixHuluCrunchyrollなどの動画配信サービスでも配信された。

評論家はストーリーのほか、演技や音楽なども称賛し、『ダンダダン』で最高のエピソードと評している。特に生前のアクロバティックさらさらを描いたシーンは高く評価されている。

あらすじ

第6話「ヤベー女がきた」では、白鳥愛羅が金色の玉を見つけたことで、自分は選ばれた人間だと思い込む。この玉は綾瀬桃、高倉健、妖怪・ターボババアが探し求めていたものである。愛羅はこの玉を手に入れた影響で、妖怪の姿が見えるようになる。愛羅と桃が倉庫で対立していると、そこに自分が愛羅の母親だと信じ込んでいる妖怪・アクロバティックさらさらが現れる。アクロバティックさらさらは自身に抵抗する桃、健、愛羅に激怒し3人を飲み込むが、飲み込んだ自身の髪の毛が内側から燃やされると、3人を吐き出す。

第7話では、桃と健が愛羅を奪ったとしてアクロバティックさらさらが激怒し、自身の髪の毛を使って倉庫の中で彼らを追い回す。アクロバティックさらさらは愛羅を食べて一体化しようとするが、自身の髪の毛が周囲に絡まっていることに気付く。抜け出そうとするアクロバティックさらさらを桃が抑え、最終的に健がその動きを封じる。愛羅が妖怪に飲み込まれた影響で死亡していることが判明し、桃と健が蘇生を試みていると、アクロバティックさらさらは愛羅を蘇生させるために自身のオーラを愛羅に渡すことを提案する。桃が自身の超能力を使って愛羅とアクロバティックさらさらのオーラを繋ぐと、桃と愛羅はアクロバティックさらさらの生前の記憶を見ることができるようになる。アクロバティックさらさらは元々借金を抱えた人間のシングルマザーで、自身と幼い娘の生活費を稼ぐためにセックスワークを含む複数の仕事をこなしていたことが明らかになる。借金を返済できなかったため、彼女は借金取りからの暴行で重傷を負い、娘を誘拐される。娘を取り戻すことができず自殺した彼女は、その後彷徨う霊となり、娘のことを忘れてしまう。幼少期の愛羅は霊を感知し、死亡したばかりの母親と誤解する。霊は自分が愛羅の母親だと信じ込み、愛羅を守るために妖怪へ姿を変える。

愛羅はアクロバティックさらさらのオーラを受け取って生き返る。ターボババアは、オーラを失ったアクロバティックさらさらは未練を残しているため成仏することができず、生者からも死者からも忘れられて消えてしまうと語る。体が崩れていくアクロバティックさらさらが娘に起こったことを後悔していると、愛羅はアクロバティックさらさらを抱きしめ、愛していること、宇宙で一番幸せだったことを告げ、アクロバティックさらさらと娘が優しい世界へと行けるように願う。その後、愛羅はアクロバティックさらさらを決して忘れないと誓う。

登場人物

綾瀬 桃(あやせ もも)
声 - 若山詩音[1]
高倉 健(たかくら けん)
声 - 花江夏樹[1]
ターボババア
声 - 田中真弓[1]
白鳥 愛羅(しらとり あいら)
声 - 佐倉綾音[1]
アクロバティックさらさら
声 - 井上喜久子[2]
アクさらの娘
声 - 木野日菜[3]

制作と放送

「優しい世界へ」は『ダンダダン』の他のエピソードと同様に、龍幸伸の漫画を原作としており、サイエンスSARUがアニメーション制作を担当している[4]。このエピソードでは、松永浩太郎が演出瀬古浩司が脚本、牛尾憲輔が音楽を担当した[5][6]絵コンテは榎本柊斗が担当しており、これが榎本にとって初めて絵コンテを担当したエピソードとなった[7]。榎本はアクロバティックさらさらや愛羅を中心に作画監督も担当しており、松永と連携して作業した[7]。生前のアクロバティックさらさらを描いたシーンは、漫画では11ページにわたって描かれている一方で、アニメではシーンが追加・延長され10分間にわたって描かれた[8]。榎本は監督の山代風我の構想をもとに絵コンテを描いたが、難しい部分もあり、完成できるか不安に感じていたとインタビューで振り返っている[7]。松永はこれに同意し、特にアクロバティックさらさらが階段を降りるシーンが難しかったと述べた[7]。榎本は、アクロバティックさらさらが誘拐された娘を追いかけるシーンの絵コンテの3Dレイアウトを制作した[7]

アクロバティックさらさらとの戦いをデザインする際、榎本はアクロバティックさらさらが「自らの髪の毛に拘束されている」というイメージで描きたいと思い、どのアニメーターに任せるか考えながら、エピソード全体を通して絵コンテを描いていた[7]。愛羅がアクロバティックさらさらを抱きしめる終盤のシーンの原画は伊藤香奈が担当した[7]。榎本は、伊藤による原画は完璧で、修正する必要はなかったと述べている[7]。エピソード序盤の髪の毛を使った攻撃のシーンや髪の毛を引っ張るシーン、心臓マッサージをするシーンの原画はそれぞれじゅら、石守源太、奥谷花奈が担当した[7]。愛羅が初めてアクロバティックさらさらと出会った時、漫画ではアクロバティックさらさらは妖怪の姿で描かれているが、アニメでは人間に近い姿で描かれている[8]

アクロバティックさらさら役の声優・井上喜久子は20年前、自身の6歳の娘をプールに放置してしまい、危険だと気付き急いで戻った経験について語った。井上は、娘が溺れるかもしれないという恐怖から、戻る途中の息遣いは半泣きのようであったと回想した。井上は、娘を誘拐した者を追いかけるアクロバティックさらさらの辛さに共感し、このシーンでの呼吸の演技に当時の経験を盛り込んだと述べた[9]

「優しい世界へ」はMBSTBS系列の「スーパーアニメイズムTURBO」枠で2024年11月15日(14日深夜)に放送され[10][11]NetflixHuluCrunchyrollなどの動画配信サービスでも配信された[4]

評価

Anime News Network』によると、「優しい世界へ」のアニメ化はファンから大いに期待されていたという[7]。放送後、「優しい世界へ」は評論家から高く評価された。『電撃オンライン』のカワチは、「クオリティが想像以上で内容を知っていても泣いてしまう展開」になっているとして、このエピソードを「神回」と表現した[6]。『Anime News Network』のジェームズ・ベケットは、自身が今までに視聴したアニメの中でトップクラスの芸術性であり、このエピソードを超える可能性のある近年の作品は藤本タツキ原作のアニメ映画『ルックバック』のみであると評した[12]。『アニメ・コーナー』のジェイ・ギブスは、演出・音楽・演技・テンポといったあらゆる側面が細部に至るまで素晴らしく、今シーズンのアニメで最高のエピソードであり、これまで自身が視聴したアニメの中でも有数の印象的なエピソードであると評した[8]。『UKアニメ・ネットワーク』のダウフィッド・ケリーは、自身が今年視聴した30分のテレビ番組の中で有数の「悲痛で感動的な作品」であり、「胸をえぐられるようなクライマックス」になっていると評した[13]

『Anime News Network』のジェームズ・ベケットは、アクロバティックさらさらの心の中に我々を連れていき、妖怪へと変化するに至った恐ろしい過去を追体験させることで、感動的かつ衝撃的なエピソードになっていると評した[12]。『ザ・ファンダム・ポスト』のケストレル・スウィフトは、アクション満載の序盤から感動的で優しい物語へと移行し、これまでにないほど大きく期待を裏切るため、全く別の番組のように感じると評した[14]。スウィフトは、2つの異なるエピソードが1つにまとまっているように思えるが、いずれも傑出した完成度でお互いを補い合っていると評した[14]。『電撃オンライン』のカワチは、アニメオリジナルの要素を加えながらも、「原作から展開や演出を変えることなく、アニメに合わせて最高の答えを出してくれた」としてスタッフを称賛した[6]。『スクリーン・ラント』のザック・ザモラは、アクロバティックさらさらの過去には派手なアクションはないものの、平穏で親近感を与える演出がその後の悲劇的なストーリーをさらに引き立てていると評した[15]。アニメ評論家の藤津亮太は、2024年に放送されたテレビアニメの印象的なエピソード10選でこのエピソードを選出し、「回想シーンを台詞なしで進行し、いちばん大事な台詞の印象が深くなるよう構成したことで視聴者の胸に深く刺さる内容となった」と評した[16]

美術について、『ゲーム・ラント』のマシュー・マグヌス・ランディーンは、エピソード冒頭のアクロバティックさらさらの揺れ動く一人称視点はファウンド・フッテージを彷彿とさせており、取り乱した演技や不気味な舞台もあって、「繊細ながら印象的なオープニング」になっていると評した[17]。ランディーンは、前回のアクロバティックさらさらは恐ろしく奇怪な存在に見えたが、今回はやや人間らしく見え、さらに細部の特徴や愛羅に向かって手を伸ばす時の切望の気持ちによって、彼女を視聴者へ近づけることで、怪物的な性質が強調されていると評した[17]。『リアルサウンド』の杉本穂高は、アクロバティックさらさらに起こった悲劇をリアル調の作画で表現することで、「現実にも起こる悲劇だと伝えるかのような生々しいシーン」になっていると評した[18]。杉本は生前のアクロバティックさらさらが自殺するシーンを、同じくサイエンスSARUが制作した『きみの色』を彷彿とさせる美しい作画で描いて「彼女の魂は悪霊時の姿とは異なり美しいのだということを、映像と音楽の力で表現しきった。その美しさは、醜い悪霊になっても消えなかったのだ、という感動のエピソードに仕立ててみせた」と称賛した[18]。また、杉本はアクロバティックさらさらのオーラの色がアニメでは紫がかったピンク色で描かれることで、髪色がピンク色の愛羅との絆が表現されていると評し、「モノクロのマンガではできない表現をアニメで取り入れ、その魅力を映像として見事に立ち昇らせた」として、「サイエンスSARUの技術と演出力の高さを、発揮した見事なエピソードとして記憶されることになるだろう」と述べた[18]

演技について、『電撃オンライン』のカワチは、アクロバティックさらさらの「怪異としての怖さ」だけではなく「娘を思う母親の純粋な気持ち」も見事に表現されているとして、アクロバティックさらさら役の井上喜久子の演技を称賛した[6]。『アニメ・コーナー』のジェイ・ギブスは、アクロバティックさらさらの生前のシーンで言葉を使うことなく深い絶望を表した井上のスキルは並外れていると称賛した[8]。『メタルギア』シリーズを手掛けたゲームデザイナーの小島秀夫は井上の演技を称賛し、同じく井上が声優を担当する『メタルギアソリッド3』のザ・ボスの演技を上回ったと評した[19]

音楽について、『アニメ・コーナー』のジェイ・ギブスは、「最終的に悲劇的な結果となり、明らかに娘を失うことになる」場面において、ピアノが完璧な伴奏になっていたと称賛した[8]。また、ギブスは生前のアクロバティックさらさらが娘に抱きしめられると雨音が消え、家のドアが開いて光が差し込むと音楽が流れ出すといった細部の描写が、セックスワークを含む複数の仕事をする状態と、娘との素晴らしい時間を過ごす状態の対比を示すという大きな役割を果たしていると評した[8]。『電撃オンライン』のカワチは、生前のアクロバティックさらさらが自殺するシーンでは、綺麗な動きに牛尾憲輔の繊細な音楽が加わることで、「美しくも悲しい芸術的なシーン」になっていると評した[6]。『スクリーン・ラント』のザック・ザモラは、作中で最も悲しい瞬間において、牛尾による陰鬱なピアノの音色がシームレスに組み入れられていると評した[15]

脚注

  1. ^ a b c d アニメ「ダンダダン」に水樹奈々・佐倉綾音・石川界人が出演、最新PVに星子らの姿”. コミックナタリー. ナターシャ (2024年6月25日). 2025年2月12日閲覧。
  2. ^ アニメ『ダンダダン』太郎(声:杉田智和)、アクロバティックさらさら(声:井上喜久子)など怪異たちを演じる声優陣が公開”. ファミ通.com (2024年9月17日). 2024年9月16日時点のオリジナルよりアーカイブ2024年10月24日閲覧。
  3. ^ Acrobatic Silky's Daughter”. Behind the Voice Actors. 2024年11月20日閲覧。
  4. ^ a b Ali, Zakaria (2024年11月11日). “Dan Da Dan Episode #7 Release Date & Time”. Screen Rant. 2024年11月20日閲覧。
  5. ^ Tan, Melvyn (2024年11月14日). “Anime Review: DAN DA DAN Episode 7”. Anime Trending. 2024年11月20日閲覧。
  6. ^ a b c d e カワチ (2024年11月15日). “【ダンダダン感想】アニメ7話で涙腺崩壊。アクさらの悲しき過去を本気の作画と芝居で彩る神回だった(ネタバレあり)”. 電撃オンライン. 2024年11月15日時点のオリジナルよりアーカイブ2024年11月20日閲覧。
  7. ^ a b c d e f g h i j Ota, Saki (2024年11月18日). “Inside DAN DA DAN Episode 7: Rising Talent Shuto Enomoto Discusses Storyboarding and Animation with Newtype”. Anime News Network. 2024年11月19日時点のオリジナルよりアーカイブ2024年11月19日閲覧。
  8. ^ a b c d e f Gibbs, Jay (2024年11月14日). “DAN DA DAN Episode 7 Review — Best of the Season”. Anime Corner. 2024年11月17日時点のオリジナルよりアーカイブ2024年11月20日閲覧。
  9. ^ 佐倉綾音; 井上喜久子 (22 November 2024). "TVアニメ『ダンダダン』ポッドキャスト ダンダ談話室#8<佐倉綾音×井上喜久子>" (Podcast). MBSアニメ&ドラマ. 該当時間: 15:50. YouTubeより2024年12月14日閲覧
  10. ^ ダンダダン:第7話「優しい世界へ」 アイラが絶命!?窮地にアクさらが驚きの提案”. MANTANWEB (2024年11月14日). 2024年11月20日閲覧。
  11. ^ <ダンダダン>神回アクさら&アイラの号泣エピソードに「心えぐられる」「ギャグアニメじゃなかったの?」”. WEBザテレビジョン (2024年11月15日). 2024年11月20日閲覧。
  12. ^ a b Beckett, James (2024年11月16日). “DAN DA DAN Episode 7”. 2024年11月17日時点のオリジナルよりアーカイブ2024年11月20日閲覧。
  13. ^ Kelly, Dawfydd (2024年11月29日). “Dan Da Dan Episodes 1-7” (英語). UK Anime Network. 2025年2月9日閲覧。
  14. ^ a b Swift, Kestrel (2024年11月15日). “Dandadan Episode #07 Anime Review” (英語). The Fandom Post. 2025年2月9日閲覧。
  15. ^ a b Zamora, Zach (2024年11月15日). “Dandadan's Anime Finally Introduces One of the Manga's Biggest Strengths, & The Result Proves Why the Series Is Such a Hit”. Screen Rant. 2024年11月20日閲覧。
  16. ^ 藤津亮太 (2024年12月29日). “藤津亮太の「2024年 年間ベストアニメTOP10」 TVシリーズのみから選んだ10の名エピソード”. リアルサウンド. 2025年2月24日閲覧。
  17. ^ a b Lundeen, Matthew Magnus (2024年11月16日). “Dandadan's New Episode Is a Masterpiece”. Game Rant. 2024年11月20日閲覧。
  18. ^ a b c 杉本穂高 (2024年11月15日). “『ダンダダン』第7話が放つ美しさと優しさ ギャグから悲劇まで、“緩急”が光る神回に”. リアルサウンド. 2024年11月20日閲覧。
  19. ^ Piña, Vanessa (2024年11月19日). “"It Surpassed The Boss": Hideo Kojima Just Gave Dandadan's Latest Episode the Best Possible Praise He Could”. Screen Rant. 2024年11月20日閲覧。



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