井上善夫_(陶芸家)とは? わかりやすく解説

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井上善夫 (陶芸家)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/10/31 00:19 UTC 版)

井上 善夫(いのうえ よしお、1949年〈昭和24年〉5月7日 - )は日本の陶芸家。父善治郎が再興した無釉薬二本松万古焼の興隆につとめ、新たに釉薬を用いた二本松焼の復興も果たした[1]日展入選19回、日展会友[2]。現代工芸美術家協会評議員[3]

経歴

福島県二本松市生まれ。1968年〈昭和43年〉福島県立郡山商業高等学校卒業後、益子焼・塚本製陶所に入所。1969年〈昭和44〉帰郷して家業を継ぎ、1989年〈平成元〉二本松万古焼・二本松焼窯元井上窯二代目となる[4]。徳川時代の二本松藩由来の伝統を継ぐ二本松万古焼窯元を、終戦後再興した父善治郎の遺志を享けて、長女・舞とともに制作に取り組む[5]。陶芸家として、日展19回の入選を果たして日展会友となり、現代工芸美術家協会評議員。「二本松菊人形」展で役目を終えた菊花を釉薬に用いる方法を開発する[6]など、万古焼菊人形の二つの伝統を融合させて陶磁器に新しい風を吹き込むことにも積極的に挑戦している。

二本松万古焼と二本松焼

二本松萬古焼は[7]江戸時代後期の天明時代に山下惣吉によってはじめられ、その孫の春吉によって完成した[8]。 手ひねり型くずし製法[9]で作られるため、手の風合いを感じる温かな作風が特徴。 木型を用いて器を製造する方法である[10]戊辰戦争二本松藩は失職した旧藩士の就業授産のために上下力を合わせて生産に努力し、一大隆盛を見た[8]。その後太平洋戦争に向けて次第に衰退し、戦後は一時消滅した[8]。井上窯では、全国で一番多く木型を所有していて、修理や修繕を加えながら伝統を引き継いでいる[1]。製造が難しく時間もかかるため、全国でも珍しい製法であり一番大きい作品は急須の型である。希少性が高く[9]、他の窯ではなかなか目にすることは難しい。

井上窯[11]では二本松萬古焼とともに、二本松焼も作っており[12]、長女の舞とともに陶芸教室を開催している[13]。二本松焼は二本松万古焼と同じく江戸時代から製造が続けられる磁器で、日用品を中心に製造されてきた。一時廃れていたが、1979年〈昭和54年〉井上善夫の手で復活を遂げて現在に至る[1]。自由な発想で作られるユーモアあふれる作品が多く、釉を用いたカラフルな色合いが特徴で、機能性が高く使い安い器となっている[9]

受賞歴・審査員

日展

  • 1989年 改組第21回日展入選 『旅立ちⅢ』[14]
  • 2001年 改組第33回日展入選 『悠久の道』[14]
  • 2002年 改組第34回日展入選 『悠久の路』[14]
  • 2003年 改組第35回日展入選 『遙かなる悠久の大地』[14]
  • 2005年 改組第37回日展入選 『悠かなる大地』[14]
  • 2006年 改組第38回日展入選 『悠久の彼方』[14]
  • 2008年 改組第40回日展入選 『草原の彼方』[14]
  • 2009年 改組第41回日展入選 『草原の大地』[14]
  • 2010年 改組第42回日展入選 『長城の春』[14]
  • 2011年 改組第43回日展入選 『遥かなる長城>』[14]
  • 2012年 日展会友となる。
  • 2013年 改組第45回日展入選 『やすらぎ』[14]
  • 2015年 第2回日展入選 『甦る大地』[14]
  • 2016年 第3回日展入選 『大地の芽生え』[14]
  • 2018年 第5回日展入選 『住み慣れた大地』[14]
  • 2020年 第7回日展入選 『住み慣れし大地71』[14]
  • 2023年 第10回日展入選 『悠久の流れ 2023』[14] 
  • 2024年 第11回日展入選 『悠久の流れ 2024』[14] 
  • 2025年 第118回日展入選 『悠久の空』[15]

日本現代工芸美術展

  • 2003年 第42回日本現代工芸美術展 本会員賞受賞 『悠久の道03』。
  • 2005年 第44回日本現代工芸美術展 『悠久の風』。
  • 2009年 第48回日本現代工芸美術展審査員 『草原の彼方09』[16]
  • 2017年 第56回日本現代工芸美術展審査員 『豊穣の大地』[17]
  • 2018年 第57回日本現代工芸美術展 『悠々の大地』。
  • 2019年 第58回日本現代工芸美術展 『住み慣れし大地』。
  • 2021年 第59回日本現代工芸美術展 『住み慣れし大地』。
  • 2023年 第61回日本現代工芸美術展 『住み慣れし大地』。
  • 2024年 第62回日本現代工芸美術展 『悠久の流れ2024』。
  • 2025年 第63回日本現代工芸美術展審査員 『悠久の流れ2025』[18]

その他

  • 1992年 第1回河北工芸展、河北大賞を受賞 『悠久の大地』[19]
  • 2005年 東北現代工芸美術展の審査員。
  • 2009年 東北現代工芸美術展の審査員。

企画展

  • 2021年 『よみがえる二本松萬古焼の「木型」展』[20] 二本松市民交流センター。
  • 2024年 『郷土在住〜日展作家三人展〜杉内誠・井上善夫・斎藤貞雄作品展』 [21]二本松市・大山忠作美術館。

参考文献

  • 二本松市『二本松市史』二本松市〈3〉、1981年3月、599-602頁。 
  • 松宮輝明『福島のやきものと窯』歴史春秋出版、1985年3月、85-86頁。 

脚注

  1. ^ a b c 福島のやきものと窯 松宮輝明 歴史春秋出版 1985年3月 pp.85-86.
  2. ^ 日展・役員・会員・準会員・会友一覧(令和6年度)
  3. ^ 現代工芸美術家協会評議員
  4. ^ 二本松市教育委員会 IT美術館(収蔵品データベース)
  5. ^ 井上舞の部屋
  6. ^ 一般社団法人 にほんまつDMO
  7. ^ うつくしま電子辞典・伝統工芸
  8. ^ a b c 二本松市史第三巻 二本松市 1981年3月 p.599-602
  9. ^ a b c 金継くらし
  10. ^ 福島のやきものと窯 1985年3月 pp.85-86.
  11. ^ 井上窯
  12. ^ 福島のやきものと窯 & 1985年3月 pp.85-86.
  13. ^ 井上窯・陶芸教室
  14. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q 井上善夫 日展入選作品集
  15. ^ 第118回日展第4科(工芸美術)入選者名簿
  16. ^ 第48回日本現代工芸美術展審査員 『草原の彼方09』
  17. ^ 第56回日本現代工芸美術展審査員 『豊穣の大地』
  18. ^ 第63回日本現代工芸美術展審査員 『悠久の流れ2025』
  19. ^ 第1回河北工芸展、河北大賞を受賞 『悠久の大地』
  20. ^ 『よみがえる二本松萬古焼の「木型」展』 2021年8月25日〜9月12日
  21. ^ 『郷土在住〜日展作家三人展〜杉内誠・井上善夫・斎藤貞雄作品展』 平成24年3月10日〜3月25日



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