二十三段
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/20 01:34 UTC 版)
むかし、田舎わたらひしける人の子ども、井のもとにいでてあそびけるを、おとなになりければ、男も女も恥ぢかはしてありけれど、男はこの女をこそ得めと思ふ。女はこの男をと思ひつつ、親のあはすれども聞かでなむありける。さて、この隣の男のもとよりかくなむ。 筒井つの 井筒にかけし まろがたけ 過ぎにけらしな 妹見ざるまに 女、返し、 くらべこし ふりわけ髪も 肩過ぎぬ 君ならずして たれかあぐべき などいひいひて、つひに本意のごとくあひにけり。 さて年ごろふるほどに、女、親なくたよりなくなるままに、もろともにいふかひなくてあらむやはとて、河内の国高安の郡に行き通ふ所いできにけり。されけれど、このもとの女、あしと思へるけしきもなくて、いだしやりければ、男、こと心ありてかかるにやあらむと思ひ疑ひて、前栽の中に隠れゐて、河内へいぬる顔にて見れば、この女、いとようけさうじて、うちながめて、 風吹けば 沖つしら浪 たつた山 よはにや君が ひとりこゆらむ とよみけるを聞きて、限りなくかなしと思ひて、河内へも行かずなりにけり。 (後略)
※この「二十三段」の解説は、「筒井筒」の解説の一部です。
「二十三段」を含む「筒井筒」の記事については、「筒井筒」の概要を参照ください。
- 二十三段のページへのリンク