ファミリーワイズエラー率とは? わかりやすく解説

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ファミリーワイズエラー率

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/10/17 03:31 UTC 版)

統計学において、ファミリーワイズエラー率(ファミリーワイズエラーりつ、: familywise error rate、略称: FWER)は、多重仮説検定を行う際に、全ての仮説の中で少なくとも1つの正しい帰無仮説が誤って棄却されてしまう(第一種過誤確率である。ファミリーは帰無仮説の集合(帰無仮説族[1])のことであり、ファミリーワイズは「帰無仮説の集合ごとの」といった意味である。したがってFWERは「帰無仮説の集合ごとの第一種の過誤の確率」を意味する。Error rateは誤り率危険率とも訳される。

ボンフェローニ補正といったFWER手順は、偽発見率 (FDR) 制御法と比較してより厳しく偽発見を制御する。FWER制御は、偽発見の予測比率ではなく、「たった1つの」偽発見の確率を減らそうと試みる。ゆえに、FDR手順は第一種過誤の確率が上昇するという代償を払ってより高い検出力を有している[2]

定義

m個の仮説検定の分類

以下のm個の帰無仮説を仮定する。

H1H2, ..., Hm

統計的検定を用い、それぞれの仮説が有意であるか有意でないかを示す。Hi に渡る検定結果を合計すると、以下の表ならびに関連する確率変数が得られる。

帰無仮説が真 対立仮説が真
有意
この節には内容がありません。加筆して下さる協力者を求めています。February 2013

閉検定手順

閉検定手順における全ての共通集合仮説が正当な局所α水準を用いて検定されるとすると、閉検定手順はファミリーワイズの第一種過誤の確率を制御する。閉検定手順は、ボンフェローニの手順やホルムのステップダウン手順を含む検定手順の柔軟な一般分類である。

その他の手順

強い水準FWER制御を保証する進んだ手順としては、最大絶対値検定がある。

また注目すべきは、ファミリーワイズエラー率を制御するための試みには多くの代替手段が存在することである。中でも注目すべきは、ベンジャミーニとホッホベルクによって1955年に考案された偽発見率であり、偽発見率はより実用的な方法で大規模推定問題の多くに対処する。

以下の3つの群を用いた新しい抗うつ薬のランダム化臨床試験を考える。

  • 既存薬
  • 新薬
  • プラセボ

こうようなデザインにおいて、研究者は新しい薬を使用した時に古い薬を使用した時よりもうつ症状が減少するか(例えばベックのうつ評価尺度よって計測される)に興味があるだろう。その上、副作用(例えば過眠症、性欲減退、ドライマウス)が観察されるかに興味があるかもしれない。こういった場合、以下の2つのファミリーが同定されうる。

  • うつ症状に対する薬の効果
  • 副作用の発生

研究者はそれぞれのファミリーに対して容認できる第一種過誤(Type Iエラー)の確率(通常0.05)を指定し、適切な多重比較手順を用いてファミリーワイズのエラーを制御する。

  • 一つ目のファミリーであるうつ症状に対する抗うつ薬の効果では、群間の一対比較がテューキーの範囲検定といった手法を用いて一緒に制御される。ここでは、検定が3つのみのため、ボンフェローニ補正でも十分である。
  • 副作用プロフィールに関しては、それぞれの副作用について3つの比較を行うため、それぞれの副作用に0.05のα水準を与えて検定すると、少くとも1つの第一種過誤を犯す確率は37%になってしまう()。計9個の仮説があるため、この場合はボンフェローニ補正は保守的過ぎ、テューキーの範囲検定ホルム=ボンフェローニ法といったより検出力の高い手法がより適切であろう。例えば、研究者はを3で割り(0.05/3 = 0.0167)、この0.0167をそれぞれの副作用の多重比較手順に割り当てることができる。したがって、テューキーの範囲検定の場合、スチューデント化された範囲検定量の臨界値qは、0.0167の値に基づくこととなる。

脚注

  1. ^ 永田 靖、吉田 道弘『統計的多重比較法の基礎』サイエンティスト社、東京都、1997年。ISBN 978-4914903466 
  2. ^ Shaffer J.P. (1995). “Multiple hypothesis testing”. Annual Review of Psychology 46: 561-584. doi:10.1146/annurev.ps.46.020195.003021. 
  3. ^ Hochberg Y, Tamhane AC (1987). Multiple comparison procedures. New York: Wiley 
  4. ^ Hochberg, Yosef (1988). “A Sharper Bonferroni Procedure for Multiple Tests of Significance”. Biometrika 75 (4): 800–802. doi:10.1093/biomet/75.4.800. http://www-stat.wharton.upenn.edu/~steele/Courses/956/Resource/MultipleComparision/Hochberg88.pdf. 

関連項目

  • 偽発見率

外部リンク




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