ドナウ汽船電気事業本工場工事部門下級官吏組合
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ドナウ汽船電気事業本工場工事部門下級官吏組合[1](ドナウきせん でんきじぎょうほんこうじょう こうじぶもん かきゅうかんりくみあい、ドイツ語: Donaudampfschiffahrtselektrizitätenhauptbetriebswerkbauunterbeamtengesellschaft 発音 ) は、ドイツ語における長大語として知られる単語。オーストリア帝国が設立したドナウ汽船会社の下部組織とされる。 アルファベット79文字からなり、「ドイツ語で最も長い単語」としてギネスブックに掲載されたことがある。
単語の構成要素
ドイツ語は、言語類型論において総合的言語に分類される言語であり、日本語と同じように複数の単語(名詞など。言語学用語では形態素という)を付け加えて新たな単語を生み出すことができるため(複合語・合成語参照)、長大語を生み出しやすい[2]。ドイツ語で79文字から成るこの組織の名称は、ドイツ語の出版物で登場した単語としては最も長いものとして、1996年版のギネスブックに掲載された。
この単語は以下の名詞から構成されている。
Donaudampfschiffahrtselektrizitätenhauptbetriebswerkbauunterbeamtengesellschaft | |||||||
Donaudampfschiffahrtselektrizitätenhauptbetriebswerk | Bauunterbeamtengesellschaft | ||||||
Donaudampfschiffahrtselektrizitäten | Hauptbetriebswerk | Bauunterbeamten | Gesellschaft | ||||
Donaudampfschiffahrt ドナウ汽船 |
s (の) |
Elektrizitäten 電気(事業部) |
Haupt 主要 |
Betriebswerk 工場 |
Bau 工事(建設) |
Unterbeamten 下級公務員 |
Gesellschaft 組合 |
Donaudampfschiffahrt もまた、 Donau(ドナウ)、dampf(蒸気)、schiff(船)、fahrt(輸送)から成り立っている。
なお1996年にドイツ語圏すべてを対象とする新正書法が施行され、Schiffahrt の綴りは Schifffahrt と f が一個増えることになるが、本組織名のような固有名詞については厳格に適用されるものではない[3]。
長大語の定番としての「ドナウ汽船会社」

ドナウ汽船会社(略称: DDSG)[注釈 1]は、1829年にオーストリア帝国政府が主導し、ドナウ川の河川舟運の活性化を目的に掲げて設立された会社である。新鋭蒸気船を導入してウィーンとブダペストを結ぶ航路を開設するなど、ドナウ川下流・黒海方面に向けてのオーストリア帝国の政策の外交政策とも結びついて発展した歴史を有する[4][5]。20世紀、DDSG は 2つの世界大戦を乗り越えたが、1990年代に分割・民営化され、旅客輸送部門の DDSG-Blue Danube Schiffahrt GmbH と、貨物輸送部門の DDSG-Cargo GmbH に分かれた。
ドナウ汽船会社(Donaudampfschiffahrtsgesellschaft)という名称は、ドイツ語の長大語をめぐる話題においてしばしば引き合いに出される語であり、「ドイツ語学者は、Donaudampfschiffahrt... で始まる目新しい単語を見ると、「また誰かがドイツ語最長の単語を作ろうとしている」と考える」、と語られる[3]。「ドナウ汽船会社」に関するミームは、ドナウ汽船会社の船長に対する呼称 Donaudampfschiffahrtsgesellschaftskapitän から派生したものと見られる[3]。ドナウ汽船公社の船長を意味する語にさらに語彙を付け加えることで
- Donaudampfschiffahrtskapitänsmütze(ドナウ汽船の船長の帽子)
- Donaudampfschiffahrtskapitänswitwe(ドナウ汽船の船長の未亡人)
- Donaudampfschiffahrtskapitänspfeife(ドナウ汽船の船長のパイプ)
ドイツ語における長大語
法律関係の用語は長大語になりやすい。2000年、メクレンブルク=フォアポンメルン州は63文字から成る法律 Rindfleischetikettierungsüberwachungsaufgabenübertragungsgesetz(牛肉缶詰ラベリング作業監視業務委託法)[注釈 2]を制定した[7]。この法律はBSE危機への対応の中で制定されたもので[7]、ドイツ語最長の単語として注目されたが[注釈 3]、BSE問題の終息により屠畜場での全頭検査を廃止したことに伴い、2013年5月に廃止された[7]。話題となった法律の廃止に際して、メクレンブルク=フォアポンメルン州農業省は、「ドイツ語最長の単語」を募集するキャンペーンを行った[7]。
「牛肉缶詰ラベリング作業監視業務委託法」の廃止を報じるイギリスのガーディアン紙は、ドイツ語辞典『ドゥーデン』出版元の広報担当者の言葉を引きつつ、ドイツ語の辞書に載っている(日常会話で使われ得る)最も長い単語は、Kraftfahrzeughaftpflichtversicherung (自動車損害保険)であるとしている[7]。
脚注
注釈
- ^ ドイツ語版ウィキペディアには、Erste Donau-Dampfschiffahrts-Gesellschaft(第一ドナウ汽船会社)の名で立項されている。
- ^ Rind-fleisch-etikettierung-s-überwachung-s-aufgaben-übertragung-s-gesetz (牛・肉・缶詰ラベリング作業・監視・業務・委託・法)
- ^ なお、この法律が「ドイツ語最長の単語」と認められる以前には、Grundstücksverkehrsgenehmigungszuständigkeitsübertragungsverordnung(土地譲渡許可に関する権限委譲を規定する規則)という67文字の法律用語があったが、2007年11月に廃止されたという[7]。
出典
- ^ 田中雅敏. “ドイツ語質問箱 最も長い語 返信-1”. 2008年3月5日閲覧。[リンク切れ]
- ^ “15 super long words in German that will knock your socks off”. Berlitz. 2025年8月20日閲覧。
- ^ a b c d “The Longest German Word”. h2g2 (2020年12月20日). 2025年8月20日閲覧。
- ^ 村上亮「書評 佐々木洋子著『ハプスブルク帝国の鉄道と汽船 ―19世紀の鉄道建設と河川・海運航行』(刀水書房、2013年)」『東欧史研究』第37号、2017年、85頁、doi:10.20680/aees.37.0_84。
- ^ 新井裕「ネストロイ『鉄道結婚』 ーあるいは「避暑地」の誕生」『オーストリア文学』第32号、2016年、1頁、doi:10.20553/austriabungaku.32.0_1。
- ^ “13 Long German Words and What They Mean”. Tandem.net. 2025年8月20日閲覧。
- ^ a b c d e f “Germany's longest compound word consigned to history”. The Gardian (2013年6月3日). 2025年8月20日閲覧。
関連項目
- ドナウ汽船電気事業本工場工事部門下級官吏組合のページへのリンク