トヨタ自動車のエンブレム
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/11/15 23:13 UTC 版)
トヨタ自動車のエンブレムでは、トヨタ自動車が歴史的に使用してきた商標・車両用エンブレム・コーポレートアイデンティティ(CI)・販売チャネル別エンブレムなどの体系について述べる。
トヨタの歴代エンブレムは、「企業ロゴとしてのCI」「車種や販売チャネルを示すシンボル」「動力システム(ハイブリッド)の種類を示すバッジ」など多層的な体系を持ち、特に1989年以降は「3つの楕円」CIが世界的に普及した[1]。
歴史
初期(1930年代〜1950年代)
- ロゴタイプ(TOYOTA文字)のみを装着。
- 1950年代以降、セダンや小型車の普及に伴い、T字型の簡易エンブレムが併用される。
1960〜1980年代:販売チャネル制度と専用エンブレム
1960年代に「販売チャネル制度」が制度化し、トヨタ店・トヨペット店・カローラ店に分割された。後年ネッツ店(2004年)が加わり、各チャネルごとに独自のチャンネルエンブレムが使用された[1]。
- トヨタ店:Tマーク → のち楕円CIへ
- トヨペット店:ペットマーク(緑色の葉を象った図形)
- カローラ店:Cマーク(三つ葉型の図形)
- ネッツ店(2004年〜):Nマーク(青色系のCI)
これらは2020年の「全車種併売化」まで長く併用された。
1989年のコーポレートCI(「3つの楕円」)
1989年、トヨタは新たなコーポレートシンボルとしてThree-Oval Mark(3つの楕円)を採用した。初採用車はUCF-10初代セルシオであり、以後ほぼ全世界のトヨタ車に展開された[1]。
シンボルの意味(トヨタ公式説明)
- 内側の2つの楕円:顧客とトヨタの心の結びつき
- 大外の楕円:世界に広がるトヨタの技術と未来
楕円エンブレムの変遷(1989〜2020年代)
| 時期 | 特徴 | 採用例 |
|---|---|---|
| 1989〜1990年代 | 立体メッキ、厚みのある構造 | セルシオ、クラウン、カローラ系 |
| 2000〜2010年代 | クリア層追加、立体深度が増す | アルファード、ハリアー(初代) |
| 2010年代(HV) | ブルーグラデーション(ハイブリッド識別)2025年に廃止(下記PHEVバッジバッジ欄) | プリウス全般、アクア、カムリHV |
| 2020年代 | 薄型化・小型化 | 新型クラウン、C-HR後期など |
2022年以降の新型車では、楕円CIの省略(TOYOTA文字ロゴのみ) という新潮流も見られる。
- ランドクルーザー250等の懐古デザインや、タンドラ等、逆輸入ピックアップトラックほか。
ハイブリッド関連バッジ
トヨタはハイブリッド車の普及に伴い、HVシステムの識別バッジを複数使用してきた。
Hybrid Synergy Drive(HSD)バッジ(2003〜)
- 2003年、ハイブリッドシステム「HSD」の登場とともに採用。
- 銀色ベースに青色の波線入りメタルプレート状バッジ。
- 「HYBRID」ロゴの横に大型のものも有り。(フェンダー付近等に左右対で使用)
- 当初はプリウス専用だったが、のちに全ハイブリッドカーへ拡大。
HEVバッジ(2020年代〜)
- 「HEV」文字を用いた最新世代の識別バッジ。
- ディーラー情報によると、正式呼称は「Beyond Zeroエンブレム」 と案内されている[2]。
- トヨタのゼロ・エミッション戦略「BEYOND ZERO」を象徴。
- デザインはより薄く、エッジ処理が明瞭。
PHEVバッジ(2025年〜)
トヨタはプラグインハイブリッド車(Plug-in Hybrid Electric Vehicle, PHEV)に対応する車両に対して、従来の「Prime」や「PHV」などの専用名称から、より分かりやすい「PHEV」バッジを採用している。2025年モデルの Toyota RAV4 および Toyota Prius では、「Prime」の呼称を廃止し、リアハッチ等に「PHEV」バッジを装着する仕様に変更された[3]。 このバッジ変更は、ユーザーに対してハイブリッド(HEV)車とプラグインハイブリッド(PHEV)車を識別しやすくするためのもので、トヨタとしては「電動化技術の多様な選択肢」を明確にする戦略の一環とされている[4]。 また、この変更に伴い、同時モデルよりトヨタのコーポレートエンブレム(楕円マーク)内の「ブルーグラデーション」リングが非採用となり、通常のシルバー仕上げに戻された。これによってPHEVバッジの視認性が向上しており、バッジデザインの簡素化や統一化が図られている[5]。
販売チャネル・車種別エンブレム
チャネル制度(〜2020年)では、車種は基本的に特定系列でのみ販売され、車両に対応するチャンネルエンブレムが装着されていた[1]。
系列とエンブレム
| 系列 | 主なエンブレム | 説明 |
|---|---|---|
| トヨタ店 | Tマーク → 楕円CI | 高級車中心 |
| トヨペット店 | ペットマーク(緑葉) | マークII系、ハリアー等 |
| カローラ店 | Cマーク(三つ葉状) | 小型量販 |
| ネッツ店(2004〜) | Nマーク(青) | ヴィッツ、ヴォクシー等 |
車種別一覧(主要例)
トヨタ店
- クラウン(全世代)
- ソアラ
- センチュリー
- マークX Zio
- ブレイド(併売あり)
トヨペット店
- マークII/チェイサー/クレスタ
- コロナ
- ハリアー(初代〜2代)
- プログレ/ブレビス
カローラ店
- カローラ/スプリンター系列
- パッソ
- ルミオン
- アクア
ネッツ店
- ヴィッツ
- ヴォクシー
- 86(専売期間あり)
- オーリス
- RAV4(2005–2016)
チャンネル制度の終焉とエンブレム統一(2020年〜)
2020年5月の「全国全車種併売化」により、販売チャネル制度は実質的に廃止された[6]。
以後の特徴:
- チャンネルエンブレムは全面廃止。
- フロント・リアは「楕円CI」または「TOYOTAロゴ」で統一。
- HEV・PHEV バッジは車種横断で統一規格に。
- 2022年頃からエンブレムの薄型化・小型化が急速に進行。
画像(Wikimedia Commons)
以下のカテゴリに、多数の公式/フリー画像が存在する。
脚注
- ^ a b c d “トヨタ自動車75年史:商標・エンブレム”. トヨタ自動車. 2025年2月1日閲覧。
- ^ “BEYOND ZEROバッジ紹介”. 千葉トヨタ. 2025年2月1日閲覧。
- ^ “Toyota Drops Prime Name for 2025 RAV4 and Prius Plug-In Hybrids”. Car & Driver (2024年9月26日). 2025年11月15日閲覧。
- ^ “New Names For Great Powertrains: Say Hello To The 2025 Toyota RAV4 Plug-in Hybrid And 2025 Toyota Prius Plug-in Hybrid” (英語). Toyota Media. 2025年11月15日閲覧。
- ^ “2025 Toyota Prius and RAV4 Lose Prime Badge but Keep Plug-in Power”. Autoweek (2024年9月26日). 2025年11月15日閲覧。
- ^ 「トヨタ全車種併売化が開始」『日本経済新聞』2020年5月1日。
関連項目
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