トイレ法案
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トイレ法案(英語: bathroom bill)とは、ジェンダーやトランスジェンダーのアイデンティティをもとに公衆トイレへのアクセスを否定する法律や法令の通称である。トイレ法案は、出生時に割り当てられた性別、出生証明書に記載された性別、ジェンダー・アイデンティティに対応する性別など、何らかの方法で定義されたその人の性別をもとに個人に対して、性別で分けられた公共の施設へのアクセスに影響を与える[1][2]。トイレ法案は、前述の性別の定義によって、トランスジェンダーの個人を包摂する場合もあれば、排除する場合もある。
トイレ法案の賛成者たちは、プライバシー、ほとんどのシスジェンダーの人々が保持している謙虚さの保護、盗撮、暴行、虐待、レイプを防ぎ[3]、心理的安心感を守るために必要であると主張している[4][5]。擁護団体や研究者を含む法案の批判者たちは、そのような法律はシスジェンダーの人々の安全性を実際には高めず、トランスジェンダーとジェンダーノンコンフォーミングのシスジェンダーの人々のリスクを高める可能性があると主張している[6][7][8]。さらに、研究によれば、試着室での盗撮事件が1件存在しているものの[9]、トランスジェンダーの個人が公衆トイレでシスジェンダーの個人を襲うような記録された事件は特定されていない[6][10]。アメリカ医師会、アメリカ心理学会、アメリカ小児科学会などの組織は、公衆衛生と安全への影響についての懸念を挙げて、トランスジェンダーの人々を排除するトイレ法案に反対を表明している[11][12][13][14]。
さらに、Voxの調査では、「差別を禁止する法律や、トランスジェンダーの人々が自分のジェンダー・アイデンティティに基づいてトイレを使用できるようにする他の政策により、トイレやロッカールームでの性的暴行につながるという証拠は存在しないことが明らかにされて」おり、Media Mattersは「トランスジェンダーの人々を保護する政策を持つ12の州と17の学区の専門家や役人に確認を取り、政策の制定後に性犯罪が増加したという事実は存在しないことを確認している」[15]。
2016年、アメリカの司法省と教育省は、連邦政府の資金援助を受ける学校は(たとえば、トイレの利用などに関して)、生徒のジェンダー・アイデンティティを性別として扱わなければならないというガイダンスを発行した[16]。このポリシーは、2017年に第1次トランプ政権により廃止された[16]。
ニュージーランド
2024年5月10日、ポピュリスト政党のニュージーランド・ファースト党は、すべての公共建築物に明確に区別されたユニセックストイレと単一性別トイレの設置を義務付ける「Fair Access to Bathrooms Bill(公正なトイレ利用法)」と名付けられた法案を議会に提出した。この法案は、「指定された性別(sex)ではない」単一性別トイレを使用した者に罰金を科すことも提案していた。ニュージーランド労働党党首のクリス・ヒプキンスとニュージーランド緑の党のレインボーコミュニティ報道官のカフラニ・カーターは、この議員提出法案をトランスジェンダーコミュニティへの攻撃であると述べた[17]。
2025年4月中旬、ラジオ・ニュージーランドは、ニュージーランド・ファースト党が提案していたトイレ法案を撤回したことを報じた。その後の4月22日、同党の党首ウィンストン・ピーターズは、「女性(female)」という用語をニュージーランドの法律の下で「成人した生物学的女性(an adult human biological female)」と定義することを求める新たな議員提出法案を提出した[18]。
関連項目
- Florida Senate Bill 254 (2023)
- モラル・パニック
- ユニセックス更衣室
- ユニセックス公衆トイレ
- トイレにアクセスする労働者の権利
- アメリカ合衆国におけるトランスジェンダーの権利
- 経産省トランス女性職員トイレ利用制限事件
出典
- ^ 千代原, 亮一、チヨハラ, リョウイチ、Chiyohara, Ryouichi「トランスジェンダーの権利保障 ―いわゆる経産省トイレ制限訴訟を中心に―」『大阪成蹊大学紀要』第10巻、2024年2月20日、21–30頁。
- ^ Lopez, German (2016年4月7日). “Tennessee's anti-transgender bathroom bill, explained”. Vox. 2016年4月9日時点のオリジナルよりアーカイブ。2016年4月7日閲覧。
- ^ Kasperkevic (2015年3月17日). “Florida anti-transgender bathroom bill moves a step closer to passing”. The Guardian. Guardian News and Media Ltd.. 2017年8月29日時点のオリジナルよりアーカイブ。2017年7月11日閲覧。
- ^ Steinmetz, Katy (14 March 2017). "Texas Senate Approves Controversial Bathroom Bill After Five-Hour Debate". Time. 2017年6月26日時点のオリジナルよりアーカイブ。2017年6月27日閲覧。
- ^ Gelernter, Josh (2016年12月17日). “A Conservative Defense of Transgender Rights”. National Review. 2017年6月19日時点のオリジナルよりアーカイブ。2017年6月27日閲覧。
- ^ a b Bianco (2016年4月2日). “Statistics Show Exactly How Many Times Trans People Have Attacked You in Bathrooms”. 2016年12月21日時点のオリジナルよりアーカイブ。2017年1月11日閲覧。
- ^ King-Miller (2016年4月12日). “Stop Using Women's Safety to Justify Transphobia”. 2017年1月13日時点のオリジナルよりアーカイブ。2017年1月11日閲覧。
- ^ Firma (2016年4月11日). “More Republican Politicians Than Trans People Have Been Arrested For Sex Acts in Bathrooms”. 2017年1月13日時点のオリジナルよりアーカイブ。2017年1月11日閲覧。
- ^ Chokshi, Miraj (2014年7月14日). “Transgender Woman is Charged With Voyeurism at Target in Idaho”. The New York Times. オリジナルの2017年8月18日時点におけるアーカイブ。 2017年5月31日閲覧。
- ^ Broverman, Neal (2018年5月17日). “Trump Supporter Broadcasts Live as She Chases Trans Woman Out of Bathroom”. The Advocate. オリジナルの2018年5月18日時点におけるアーカイブ。 2018年5月18日閲覧。
- ^ “Access to Basic Human Services for Transgender Individuals H-65.964”. American Medical Association. 2021年6月15日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年12月8日閲覧。
- ^ “National Consensus Statement of Anti-Sexual Assault and Domestic Violence Organizations in Support of Full and Equal Access for the Transgender Community” (英語). NTF (2018年4月13日). 2021年12月8日閲覧。
- ^ “Resolution on Gender and Sexual Orientation Diversity in Children and Adolescents in Schools”. American Psychological Association. 2019年2月23日時点のオリジナルよりアーカイブ。2025年5月31日閲覧。
- ^ Korioth (2021年3月9日). “Pediatricians say state bills would harm transgender youths” (English). 2025年5月31日閲覧。
- ^ Lopez (2016年5月5日). “Anti-transgender bathroom hysteria, explained” (英語). Vox. 2024年4月30日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年4月30日閲覧。
- ^ a b “Trump Administration Rescinds Protections For Transgender Students | HuffPost”. Huffingtonpost.com (2017年2月22日). 2018年1月20日時点のオリジナルよりアーカイブ。2018年1月18日閲覧。
- ^ “NZ First tries to introduce controversial bathroom bill”. 1News. (2024年5月10日). オリジナルの2024年5月12日時点におけるアーカイブ。 2024年5月14日閲覧。
- ^ McCulloch, Craig (2025年4月22日). “What is a woman? NZ First's revolving door of member's bills”. Radio New Zealand. オリジナルの2025年4月22日時点におけるアーカイブ。 2025年4月22日閲覧。
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