ディッケ模型
ディッケ模型(ディッケもけい、英: Dicke model)とは、量子光学において光と物質の相互作用を扱う基礎的なモデルの一つ。この模型で「光」は単一の量子モードとして、「物質」は2準位系の集合として記述される。ディッケ模型によれば、光と物質の結合の強さが臨界値を超えると平均場相転移を経て超放射相が現れる。この相転移はイジングユニバーサリティクラスに属し、共振器量子電磁力学の実験によって実証されている。超放射相転移はレーザー不安定性といくつかの点で類似しているが、異なるユニバーサリティクラスに属する相転移である。
解説
ディッケ模型は単一モードの空洞共振器と N 個の2準位系(N 個の1/2スピン自由度としても同じ)の結合を記述する量子力学的なモデルである。1973年にクラウス・ヘップとエリオット・H・リーブによって最初に提案された[1]。その研究は自由空間における超放射光に関するロバート・H・ディッケの先駆的な業績に触発されていた[2]。
量子力学におけるあらゆるモデルと同様に、ディッケ模型は量子状態の集合(ヒルベルト空間)と全エネルギーに関する演算子(ハミルトニアン)を含んでいる。ディッケ模型のヒルベルト空間は共振器の状態と2準位系集団の状態(正確にはそれらのテンソル積)からなる。共振器のヒルベルト空間は光子数 n のフォック状態 ディッケ模型を用いた初期の研究は平衡状態の性質を対象にしていた[1]。それらの研究は 開放ディッケ模型における超放射相転移と関連しているが異なる現象にディッケ超放射がある。
ディッケ超放射とは自由空間に置かれた多数の2準位系がコヒーレントに光子を放出する集団的現象である[2][17]。2準位系が初期状態として励起状態にあり、2準位系間の距離が関連する光子の波長よりも十分に小さい場合に起きる。これらの条件の下では2準位系の自発的な崩壊が非常に早くなり、大振幅の短い光パルスが放出される。理想的な条件においてパルスの持続時間は2準位系の数 共振器との間に双極子相互作用がはたらく2準位原子はディッケ模型をもっとも単純に実現する。しかしこの系で超放射相転移を観測するには障害が二つ考えられる。(1) 通常、原子と共振器の結合は素のままでは弱く、式6の臨界値を得るには不十分である[18]。(2) この物理系を正確にモデル化するには
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